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コロナ禍で打撃を受けた宿泊業をITで救え!【株式会社FRINGE|事業紹介】

世の中にようやく「WITHコロナ」の生活様式が定着し、宿泊業界にも利用客が戻ってきているが、解決しなければいけない課題が多くある。株式会社FRINGE(以下:FRINGE)は、宿泊施設に特化したメンテナンス管理アプリ「HoteKan」を開発し、宿泊事業者のバックエンドにおけるDX化を推進し、宿泊業者の業務改善を支えている。


アフターコロナの愛媛の観光業界

2020年1月に国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されてから、3年が過ぎ、世間は「コロナ後」の世界に徐々に順応して新しい生活様式を手に入れ、初期の頃のような自粛ムードは見られなくなってきた。

愛媛県には、日本最古の温泉といわれる「道後温泉」や現存12天守・日本三大連立式平山城の「松山城」などの名所が多い松山市、日本三大水城の「今治城」や名産品・今治タオルが全国でも名高い今治市、現存12天守の「宇和島城」ほか闘牛観戦も楽しめる宇和島市など、観光を主要産業の一つとする市町村がいくつもある。国や県による旅行支援の施策や新型コロナウイルス感染症の5類感染症への引き下げにより、国内から愛媛県へ訪れる観光客は以前の水準に戻りつつある。
また、コロナ以前に盛況だったインバウンド需要も、今後一層の拡大が期待されている。2023年には、運休となっていた松山空港とソウル・釜山を結ぶ定期便が再開・新規就航となった。また、運休中の台北や上海行きの定期便の再開を目指した交渉や、台北・ベトナム行きのチャーター便が運行されるなど、外国人旅行客の数が感染拡大前の水準に戻るよう、様々な取り組みが進められている。

宿泊業における問題点

このように需要拡大が期待される観光業において大きな担い手となる宿泊業だが、利用客の数が以前の水準に戻ったとしても、苦しい状況がすぐに終わるわけではない。
まず宿泊業は、多額の初期費用(施設建設費)に加え、継続した設備投資が必要である。
さらに、宿泊業界において人材不足は他の業界よりも深刻だ。

「HoteKan」でスムーズに問題解決

ここで一つの灯明となるのが、日々のオペレーションのDX化だ。システム開発を行う株式会社FRINGEの苅谷代表取締役は、ホテル運営・ホテル清掃を行う会社の経営者としての顔も持つ。ホテル運営における問題点の痛いほどの実感が、自らが欲しい機能を搭載したアプリ「HoteKan」の開発に繋がった。

「HoteKan」は、現場で働く人々と管理者が、設備の修繕箇所・内容や備品在庫数をリアルタイムで共有するためのアプリだ。
たとえば、作業中の清掃スタッフが故障している設備を発見したり、備品の在庫の不足に気づいたりした時。従来は、電話で報告したり、対面で直接伝えたりと口頭での伝達がメインだった。しかし清掃スタッフは、前日の宿泊客のチェックアウトからその日の宿泊客のチェックインまでの時間に、膨大な数の部屋を整えていく忙しない作業の中や作業後に報告を行わなければならない。うっかり忘れたり、決裁者まで正確に伝わらなかったりと、アナログな伝達ではミスが起きる可能性もある。また、故障等は予期できるものではなく、その場その場で対処するため、アナログなやり方では過去の修繕履歴が参照できないことも多かった。修繕までに時間がかかれば、そのぶん客室の売止をしなければならず売上の損失に繋がるほか、利用客の満足度低下も招きかねない。

さらにほとんどの宿泊施設は、定期検査報告書を紙の書類で管理しており、行政への提出に手間取ったり、膨大な書類の中から参照したい内容を苦労して探し出したりしている。

それが、「HoteKan」を利用することによってミスを大幅に少なくし、修繕期間を短縮することが期待できるのだ。

【「HoteKan設備」を利用した問題報告から解決までの流れ】

1.問題を発見する

清掃等の現場スタッフが備品の故障などの問題を発見したら、+ボタンを押して新規インシデントを入力。

2.問題を入力する

問題箇所の写真や動画を撮影し、状況を入力して保存。

3.報告をアップする

未解決のインシデントとして問題が登録される。

4.現場と管理者がチャットでやりとり

インシデントごとのチャットでフロントスタッフ等と連絡。「@」をつければ相手にメンションできる。

5.通知が届く

メンションされた人宛に通知が届くのですぐに内容を確認できる。

6.現場を確認

フロントスタッフ等が問題箇所を確認する。

7.業者にチャットで相談

問題解決に最適な業者とインシデントごとのチャットでやりとり。

8.閲覧者の制限も可能

インシデントごとのチャットのため、その問題を解決できる業者のみにゲストとして閲覧許可を与えられる。

9.修繕完了後に入力

業者による修繕が完了したら、業者もしくはホテルスタッフが解決内容を登録。

過去のデータを蓄積して知見に

また、修繕データが蓄積してくれば、客室や設備別に過去の履歴を検索することが可能になる。これにより、故障・破損が発生するたびに解決方法を模索したり業者を選定したりするのではなく、過去の事例を参照しながら速やかに解決のための行動を取ることができるようになる。修繕期間が短縮されることで売止による損失を減らせるほか、過去の修繕方法を参照して自前で修繕し、コストを削減することも可能だ。
単一施設はもちろん、複数施設にまたがるデータの検索も可能であるため、いくつもの施設を運営するホテルグループ会社でも全体を一元的に管理することができる。

過去の履歴から修繕方法・業者を参照

過去の修繕を期間・部屋・設備別など細かく検索

検索結果はCSVデータとして出力可能。

「HoteKan」を活用した備品在庫管理

そして、「HoteKan備品」を利用すれば、備品在庫の管理も容易になる。

  1. 備品の取り出し

客室の備品がなくなったり壊れたりした際、倉庫にある備品を取り出し、その数をアプリに入力。

2.在庫数が残りわずかに

入力した取り出し数量によって自動的に在庫数が計算される。設定している残在庫数を切ると管理者に自動的にアラートする。

3.備品の発注・補充
在庫数が少なくなった備品を発注。補充した際にその数をアプリに入力。

4.棚卸整理が不要に

在庫状況をいつでも確認できるため、月ごとや年末の棚卸整理の手間をかけることなくCSVで抽出可能に。

現場スタッフにとっては報告がより手軽で正確にできるようになり、誤って伝わったり責任者に届くまでタイムラグが発生したりといった、ミスに繋がる要素が排除される。
フロントスタッフや管理者にとっては、自分の手隙の時にすぐに確認でき、各方面への連絡がアプリでできるため速やかに問題解決を図れる。また、外部の業者にとっても、修繕依頼や結果報告などのコミュニケーションがスムーズになり、従来よりも利便性が高いといえる。このアプリで、宿泊事業の現場に関わる清掃業者・設備修繕業者・ホテルスタッフ・決裁者の全てが繋がることによって、人手不足を補い、コストカットを実現したり売上損失を防いだりすることが可能になるのだ。

愛媛県松山市の3施設で「HoteKan」を実装

2023年度の本事業において、愛媛県松山市の宝荘・椿館ホテルグループの3施設にて「HoteKan」が実装・導入された。
●道後御湯

●道後hakuro

●ホテル椿館

もちろん、はじめは慣れたアナログのやり方と全く違うシステムに、現場スタッフには大きな戸惑いがあった。そして、運用開始から1か月経たずして、宝荘・椿館グループ全体で既に100件近くのインシデント登録があったという。道後hakuroでは、取引設備業者とも「HoteKan」でやりとりし、修繕解決まで進めるなど徐々に活用が進んでいる。

また、道後御湯では湯量測定センターを設置。これは、日々の温泉湯量を効率的に管理するためだ。

道後御湯の地下1階に設置した湯量測定センサー

道後の温泉(湯)は松山市が所有・管理している。温泉資源を長く大切に使うため、市条例および施行規則に基づいて各施設に使用許可を出しているのだ。
道後御湯の1日あたりの温泉配湯量は、松山市温泉使用条例で規定する最大量の54平方メートル。1日あたりの温泉購入量は約15,000円、温泉にかかる松山市下水道代が15,000円、合計で1日に30,000円かかっている。
適切な湯量管理と温泉資源の有効活用のため、現在は使用湯量と残量管理のシミュレーションと併せ、手作業で大まかな残量調査を行っている。そこで、高性能センサーを設置して事務所PCとLANで結び、作業の効率化と精度の向上を図り、的確な配湯休止手続きを実施することで、温泉購入料と下水道代の節減が期待できるのだ。

道後御湯事務所の湯量管理画面

実際に、道後御湯では現在購入している湯量は多すぎるということがわかってきた。さらにデータを蓄積すれば、リアルにコストを削減できそうということで、道後のホテルから注目されている。

プロジェクトに参加しての思い

■株式会社FRINGE 代表取締役 苅谷 治輝さん

私自身がホテルの経営も行なっているので、宿泊施設における悩みはリアルに感じていました。ホテル業界はものすごくアナログなところで、例えば故障を発見してから解決までが伝言ゲームのようなんです。解決までに早くて数日かかるのが普通ですが、時間は無駄にロスしますし、毎回その場その場で対応するので、せっかくの経験・知見も蓄積しません。
でも、「HoteKan」を活用することで、時間のロスは大幅になくなりますし、経験はデータとなって蓄積していきます。ITに慣れていないスタッフでも直感的に操作できるように、機能をあえて設備管理に絞って、より簡潔に操作できるようにしました。月額で利用料がかかる有料サービスですが、全国約50施設に導入していただき、今までに解約はゼロです。「もうHoteKanがないと運営できない」「支配人不在でも対応できるようになった」「いつでもどこからでも業者依頼ができて非常に楽」などの嬉しいお声をいただいています。

■株式会社リウシス取締役事業本部長 水野恒治さん

私は、苅谷代表が経営するホテル清掃会社で現場の管理をしています。宿泊業界は非常にアナログなところで、上からの指示で急にITを取り入れることになっても、現場の抵抗感が強いというのは「あるある」です。今回も、当初想定していたオンラインでの説明だけではなかなかシステムの利用が浸透していかないとのことでした。私はFRINGEのメンバーではないのですが、今回は現地で直接スタッフの方々に説明をするため、苅谷代表の依頼を受けて愛媛を訪問しました。不思議なことに、現場を知る私が実際の例を出しながら説明すると、すっと受け入れてくださるんです。
こうして愛媛に出張している間も、「HoteKan」があればいつも通りに業務の管理を行うことができます。今担当しているのは5施設ですが、複数の施設をひとりで管理することも容易です。「HoteKan」がなければもうやっていけないと思うほどに、便利なシステムですね。

■道後hakuro 取締役支配人 宮野 弘さん

今までは、報告などはだいたい口頭で受け、データを自分でExcelにまとめて管理していました。そのため、今、何がどうなっているのかは自分にしかわからない状態だったので、どうにか改善したいとは思っていました。そこに「HoteKan」の導入が決まったのですが、内容を知れば知るほど「便利そうだ」と期待が高まりました。繁忙期の直前で、システムを理解するまでに余裕があった上、忙しい時期に時短を図れたというのもいいタイミングでの導入でした。
はじめは戸惑いばかりでしたが、私と管理者はだんだんシステムに慣れてきました。現状は、スタッフから従来通りのやり方で報告を受け、管理者が確認してアプリに入力するという形で業務を進めています。そのうち現場で働く末端社員まで全員が「HoteKan」を使いこなせるようになれば、もっと効果が上がるだろうと考えています。

設備管理に関してはもちろん使い勝手がいいのですが、個人的には、マニュアルや操作方法などを画像や動画で共有できる機能も便利だと思っています。今までは何となく残っている記憶を引っ張り出して対処していたところが、データで残って正確に全員に伝わるのです。
ゆくゆくは道後全体や他地区へと「HoteKan」が広がり、施設を横断して知見を共有していくことで、愛媛県の宿泊業界の発展へとつながることを期待しています。


「HoteKan」による設備・備品管理と湯量管理、どちらも現在試行錯誤しながらデータを蓄積しているところだ。2023年度の実装結果に関しては、次回の記事でご紹介する。

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