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愛媛県愛南町の牡蠣を全国に届ける!未来を変える牡蠣のスマート養殖プロジェクトが始動【株式会社リブル|事業紹介】

愛媛県の最南端にある愛南町は、県内屈指の牡蠣養殖の産地。牡蠣養殖は、無給餌養殖だからこそ海任せになりがちで、管理がしにくいとされている。それぞれの生産者の経験や勘に依存して生育しており、生産量が不安定という課題があった。そこで、IoT技術で牡蠣養殖のスマート化を目指す株式会社リブルと地元の牡蠣養殖事業者「上甲商会」がタッグを組み、愛媛県愛南町の牡蠣を、全国に誇れる牡蠣にするためのプロジェクトがスタートした。

「上甲商会」が抱えている課題

昔から御荘湾は、リアス式海岸であり、5つの川の河口に位置しているため、山の栄養分が海に流れ、牡蠣の餌となるプランクトンが豊富に生息する地形。ここで養殖されている牡蠣は、身が大きく臭みが少ないことから、全国にもファンがいるほどの人気を誇っている。

現在、御荘湾には24の養殖事業者がおり、平均年齢は70歳と年々高齢化が進んでいる状況。愛南町で牡蠣養殖に携わってきた「上甲商会」の代表・上甲さんは、愛南町の牡蠣をもっと全国の人に食べてもらいたい、そして牡蠣養殖を次世代に継承したいと強く考えていた。

上甲商会 代表 上甲仁さん

しかし、そのためにはいくつか解決しなければならない課題がある。

■抱えている課題
1.低歩留からの収益圧迫
約3割程度とも⾔われる現状の牡蠣の育成歩留。そもそも在庫管理や歩留管理が効果的にできず、歩留向上などに結びつく改善ができない。

2.継続したデジタル化へのハードル
スマートブイを⼊れた経験はあるが、1~2事業者以外はデータ扱いができず、継続しなかった。通常外の作業が多く発⽣するとよりデジタル導⼊するハードルが上がる。

3.漁師の勘を次世代へ残す術
・愛南町だけで24事業者いる牡蠣養殖事業者も、平均年齢70歳と8割が⾼齢者であり、今後の継続が危ぶまれている。また、これまで作業記録をつけることはなく、全て培ってきた漁師の勘を頼りにしていた。そのため、若い世代に引き継ぐ術がなく、牡蠣養殖事業消滅の危機にある。

この課題解決に踏み出したのが、「株式会社リブル」だ。

牡蠣のスマート養殖化を目指す「株式会社リブル」

徳島県にある「株式会社リブル(以下:リブル)」は、養殖に必要な種苗や餌料の培養、さらに自社でも牡蠣養殖を行い、IoTスマート養殖技術を開発・提供している。リブルが取り組む事業の特徴は以下の3つ。

三倍体の人工種苗の生産

同社の養殖場では、三倍体と呼ばれる人工種苗生産に取り組んでいる。

天然の牡蠣は母方と父方の染色体が対になり、2の倍数性の染色体数を持つ二倍体である。二倍体は産卵すると身が痩せ細ってしまうため、産卵前に収穫する必要がある。そのため、収穫時期が決まっていた。それに対して、三倍体は産卵しないため、シーズン関係なくいつでも収穫することができる。リブルは、種苗を陸上で生産しており、自社で培養した植物プランクトン(浮遊性藻類)を与えながら、海へ流すまで効率的に種苗を育てている。

シングルシード式の生産方式

また、牡蠣養殖ではイカダから牡蠣を海中に吊り下げる「垂下式」の生産方式が主流だが、リブルでは、「シングルシード式」という生産方式を導入している。

「垂下式」でイカダから吊るされた牡蠣の様子

「シングルシード式」は、牡蠣をカゴに入れてそれぞれのカゴでバラバラに育てる方式で、牡蠣に必要なストレスを海の状況を見ながら調整可能。そのため、効率よく筋肉がつき、身が引き締まった牡蠣を育てることができる。また、種から購入する方が安くすみ、小さい段階からカゴで育てることにより、強くて身がしっかりとした牡蠣を高歩留で養殖することができる。

「シングルシード方式」の専用のカゴ。耐久性が高く破損の心配が少ないのも利点
一つずつ個別で設置するため、移動や回収がしやすい

IoT技術を活用したデータ蓄積・分析と牡蠣養殖支援システム「​​Oysmart」の活用

また、養殖の安定化と、技術の継承を目的として、海洋環境データと生育データを蓄積・分析し、養殖技術IoTシステムの構築に取り組んでいる。環境センシングシステムを導入し、Webシステム「​​Oysmart」に自動でデータが集約される環境を作る。水温や塩分濃度、プランクトンの量などを計測することで、事業者はデータを元に作業(行動)をすることができる。

IoTセンサーは上部にソーラーパネルを設置することで自然光で充電することができる
海中に設置された環境センシングシステムのセンサー

2024年1月から「上甲商会」の生簀にシステムを導入!データ収集がスタート

リブルは、牡蠣養殖の課題を解決するためには、環境センサーを導入し、生産管理をすることでうまくいかなかった理由を明確にし答え合わせをしていく必要があると考えた。そこで、2024年1月、これらのリブルが持つ技術を「上甲商会」の生簀に導入した。今年度は答え合わせをするフェーズとし、最終的に「高歩留な養殖」「継続したデジタル活用」「ノウハウのデジタルアーカイブ」の実現を目指していく。

実装がスタートし、上甲商会の上甲さんは、

「私は、長年ここ愛南町で牡蠣養殖に関わってきました。養殖事業者はどんどん高齢化が進んでおり、今まで通りのやり方ではいけないという危機感を抱いていました。今回リブルさんとタッグを組み、私たち上甲商会が環境や生育情報をデータとしてしっかりと残すことで、次の世代に繋げることができると考えています。御荘湾は全国にも誇れる素晴らしい漁場で、このまま衰退してしまうのは、非常に勿体無いことです。これまで御荘湾では難しいとされていた三倍体の牡蠣の養殖を成功させ、一からこの地で育てあげた牡蠣を全国へ流通させる、そしてこの技術を次世代に継承し、昔以上に養殖が盛んな地域として活気が戻ることを期待しています」

と熱い想いを話してくれた。

今後の目標として、歩留を5割以上に上げること、牡蠣の養殖管理の作業をデジタル化することによって記録やデータを取り扱う手間を削減することを目指している。

データ分析などは大学や高専の先生が協力、また環境センサーを導入し、どのような環境でどのような美味しさの牡蠣ができるのか、といった味の分析については愛媛大学が担っている。データを蓄積しながら、実際に生産者に育った牡蠣を触ってもらい、データを見ながら、どのような行動をしたら質の良い牡蠣ができるのか、そして漁場管理システムに日々の作業記録を残し、環境センサーのデータと比較することで答え合わせを行う。

株式会社リブルと上甲商会のみなさん

プロジェクトはまだスタートしたばかりだが、御荘湾では難しいと考えられていた、タネから育てる三倍体の牡蠣養殖については、現在順調に育っている状況だ。愛南町の牡蠣を次世代に繋げるための一大プロジェクトは、今後はさらに成果が期待できそうだ。

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