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ファシリテーターの準備<その3>会議の目的4象限の話

会議の目的をすり合わせるのは、思っているより難しいです。

なぜか?
会議の目的には種類があり、たいていは絡み合っているからです。

一般に会議の目的という場合「アウトプット」や「ゴール」という言葉が使われますが、ここでは「アウトプット」「アウトカム」という二つの言葉を使った説明を試みます。

アウトプット・・・成果物(計画や意思決定、文書に落としこむ作業など目に見えるもの)
アウトカム・・・結果(関係性やコミットメントなど目に見えないもの)

会議の冒頭で「今日のゴールはこれ」という確認、皆さんの経験にもあると思います。それは上記の定義でいうところの「アウトプット」です。


下記の図は
・短期/長期
・ソフト/ハード
の2軸で分けた4象限で、アウトプットとアウトカムの違いを表現しています。

ファシリテーションの目的4象限

これは、どの象限が良い悪いではなく、「真の目的は何なのか」をメンバーで確認するための図です。

例えば私は、ある同族企業のファミリー憲章づくりのお手伝いをしています。2年ほどの工程をかけ、ファミリーメンバー全員で話し合いながら作っていきます。
ファミリー憲章をつくるという目的は、左上の長期・ハード系アウトプットに位置します。
その一方で、クライアントであるオーナー社長のねらいは「子どもたちに事業オーナーとしての教育を施したい」というものがあり、これは右上の長期・ソフト系アウトカムに属します。

こうしたソフト系の状態変化を、メインテナンス系と言ったりもします。

このように、一つの会議、一つのプロジェクトに対して複数の目的(アウトプットとアウトカム)というのは、よくあることです。

アウトプットは分かりやすいですよね。表、文書、スケジュールなどで表せるもので、全員が同じ認識になります。完成した工程表をみて、ある人には納期が5月末で、ある人には6月末に見えるなんていうことは起こりません。

一方、アウトカムは、会議主催者の心の中のイメージであることが多く、「漠然とした期待」だったりします。期待を期待のまま持っていても、誰も実現化できません。メンバーに共有するために、期待を言語化するところから始めます。

アウトプットやアウトカムが具体的に表現できたら、同時に行っておきたいこと。それは、議論が混乱したり、時間がなくなったときにはどちらを優先させるか?

そこまで決めておけば、慌てなくてすみます。
こうした準備ができてはじめて、スタート地点に立ったといえます。

「この会議(このプロジェクト)が終わった時には、メンバーが〇〇な状態になっていることを、実は心の奥底で期待している」という会議主催者は、多くいます。本当は期待していることを言葉にできなくて、アウトプット(成果物)としてしか表現できない。

会議主催者の「真のねらい」を心の奥底から引き出すのも、ファシリテーターの役割です。

会議主催者やリーダー自身の期待を言葉にして、認識しないと目的へはたどり着けないからです。手戻りが生じるのも、たいていは期待のすり合わせができていないからです。ファシリテーターは、その言語化の手伝いをします。

このようにファシリテーターは、会議の場にいることだけが仕事ではありません。事前に主催者と綿密な打ち合わせをし、1回の会議で得られる最高の結果を引き出す。それがファシリテーターの役割です。


さて、ここまではご理解いただきやすい内容かと思います。

これは準備の準備、前提の確認。
次は、目的に対して「ファシリテーターが陥りがちなワナ」についてお話しします。

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