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香港デモと情報戦争(1) 香港三合会を束ねるは江沢民派の曽慶紅、無差別暴行の先にあるもの

香港のデモの様相が大きく変化するきっかけとなったのは、7月21日のことだった。

この日、香港では主催者発表で43万人が街頭などに繰り出し、香港政府への抗議デモを行った。その際、白シャツを着た集団が香港の元朗で無差別に市民やジャーナリストを襲い、暴行を働いた。その映像は多くの人に衝撃を与えた。

以下は、香港のための英国人(ブリッツ・フォー・ホンコン)という北京への圧力団体の共同創設者であるジャック・ヘイズルウッドがツイッターで投稿した映像だ。

ヘイズルウッドは反体制派の中国人たちとも繋がりのある人物だが、彼によると香港市民を無差別に襲撃した白シャツ集団は、香港暗黒街を形成する三合会のメンバーであるという。つまり、マフィアだ。このことは、サウス・チャイナ・モーニング・ポストでも報道されている。香港の治安当局者が記者にリークした情報によると、市民に暴行を働いたこの白シャツ集団は、14Kをはじめとする三合会のメンバーだ。

繰り返すが、三合会といえば香港の黒社会を形成するマフィアである。米国に拠点を置く反体制派の中国語メディアでは、香港マフィアの元締めは曽慶紅だと以前から指摘されてきた。

江沢民の片腕として権力をふるった曽慶紅は、国家副主席だった2003年、北京と香港とマカオとの関係を取り仕切る中央港墺工作協調小組組長として、三合会などの香港マフィアたちを掌握し、「総堂主」の異名をとったという。これは日本語では「ボス」あるいは「首領(ドン)」にあたるといえよう。

たとえば、以下は2014年10月9日、つまり香港で普通選挙を求める雨傘運動が起きた際に「大紀元」が掲載した記事で、江沢民派の重鎮である曽慶紅が三合会に対していかに支配力を持ってきたかを解説している(ちなみに、「大紀元」は米国に拠点を置く反体制派中国語メディアの一つだ)。

曽慶紅が元締めとして君臨してきた香港マフィア、そのメンバーが白シャツを身に纏い、この2019年7月21日、デモのさなかに香港市民やジャーナリストを無差別に襲撃したのだ。

一方で、警察による市民への暴行も実に酷いものがある。香港警察もまた、市民に対して暴行を働き、しかもその弾圧は過激化している。以下はフリーアジアが捉えた15秒の映像だが、香港警察がデモ参加者に対して行う暴力的弾圧がいかに酷いかを物語る一例だ。

しかし、香港警察の問題はこれだけではない。香港警察にはもっと根の深い問題がある。たとえば以下の映像は、何者かが建物に放火して激しく燃えているわけだが、この建物の二階に数人の警官隊がいて、この警官たちはすぐ下で放火されたにも拘わらず、のんびりと燃え盛るのを見物している始末だ。これはいったい何なのか? なぜ警官隊は放火魔を逮捕しないで悠長に火事を見物しているのか? この映像の投稿者は、香港警察が自ら火をつけたと告発している。

そして、香港警察の問題点の極めつけがこれだ。「香港警察の権限は既に中共地下党の手に落ちている」と見出しにあり、米国に拠点を置く反体制派中国語メディアの一つである「看中国」の記事だ。

中共地下党の「中共」とはもちろん中国共産党のことである。つまりこの「看中国」の記事が指摘していることは、香港警察は既に中国共産党の地下組織である中共地下党が支配しているということだ。このことは、先程の映像にあるように、香港警察が自分たちで香港の建物に放火しておいて、それを見物するがままという事態と無関係ではない。

しかし、警察が問題となるのは、何も香港警察のことだけではない。以下は、香港の駅で撮影された写真だが、この黒い服を着た人物、そのスーツケースには「武警8673部隊」と記されている。「武警」とは共産党中央軍事委員会傘下の治安部隊である「人民武装警察」の略称だ。なぜ中国本土で治安維持にあたる武警の備品を持った人物が香港にいるのか?

いまや香港の市街地ではデモのたびにあちこちで火花が散り、催涙弾による白煙がもうもうと舞い、ついには流血まで起きる事態に発展している。

香港でいったい何が起きているのか? 背後にどのような構造があるのか? 

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