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聾学校時代

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幼稚部から中学部まで13年以上通った聾学校時代のNoteをまとめています。 ※マガジン分類は今後変わることがあります
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2020年2月の記事一覧

私たちは先生に教わりながら、教えた。聞こえない子ども向けの分かりやすい話し方を。

聾学校中学部3年のときに、新任の先生が来た。Y先生といい、3月に大学を卒業したばかりだという。入学式進級式で、Y先生の最初の挨拶をみて、私は「これは厳しいぞ」と暗澹たる気持ちになった。クラスメイトも同じ気持ちだったろう。 口の動きが小さく、かつ、もごもごとしていて、読みづらいのだ。 これは授業が成立しない。話し方について鍛えなければなるまいと、私は危機感を抱いた。 聾学校の先生は、みなはきはきとした話し方をし、口が読みやすい。かといってゆっくりすぎるわけではない。文節ごと

耳の聞こえない私が、脳内の辞書を編むということ。「しゅくだい」を編み込んだ入学式の日。

私は、生まれつきの聴力障害者である。聾学校幼稚部(聾学校内にある幼稚園)に通い、卒業。そして、同校内にある小学部に進学。 小学部入学式の日。帰宅したのちに、母に聞かれた。 「****は出たの?」 手話も何もなく、口だけで言われた。家族や聾学校先生たちとは、口をはっきりあけてゆっくりと会話をしていた。しかし、このときは母に何を言われたのか分からなかった。分からないままに、あいまいにうなずいていたが、母はなおも聞いてくる。うなずくだけではスルーできない、何かを聞かれているようだ