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日野自動車と三菱ふそうの統合に関して商用車メーカーの中の人が解説してみた!

業界を驚かせた日野自動車と三菱ふそうの統合に関して商用車メーカーの中の人の目線で解説します!

先ず日野と三菱ふそうの統合に目が行ってしまうが、これはトヨタ、日野、ダイムラートラック、三菱ふそうの4社間での協業の枠組の中で決まった統合である点に先ずは御注意下さい。

協業内容はこちら

注意 : MFTBC = 三菱ふそう

↑の4社での共同記者会見でも強調していたが、商用分野でCASE やカーボンニュートラルに対応していくには莫大な投資が必要。特に台数が少ない商用車分野を1社の投資で全領域をカバーするのは不可能。トヨタとダイムラーがそれぞれ有する技術と経験を合わせ、また日野と三菱ふそうを統合する事で開発、調達、生産でスケールメリットを生かすのが目的。両社のブランドは残し各市場の課題に合わせた最適なソリューションを提供する。これを繰り返し説明していた印象。

トヨタもダイムラーもそれぞれ CASE 関連技術を有しているが、どのように互いの技術を活用していくのかはこれから検討始めるので今時点では何も決まっていない様だ。特に水素に関してはトヨタもダイムラーも長く開発を続けておりそれぞれ優れた技術を有している。ダイムラーはボルボと水素技術開発の為の合弁会社を保有しているがその技術はトヨタにも使われるのか?「例えばダイムラーの水素技術がトヨタの乗用車にも活用されるのか?」と言う記者からの問いに関しては現時点では未検討で何とも言えないとの回答もあり、今は本当に何も決めておらず、これから決めていくんだなぁと言う印象を持った。

統合のスキームは↓の図で上場を予定している新たな持ち株会社が日野と三菱ふそうの株式を100%保有する。トヨタとダイムラーは新たな持ち株会社の株式を同割合で保有する。また現在、三菱ふそうに約10%出資している三菱グループも新たな持ち株会社の株式を保有する見込みだ。コレにより日野はトヨタの連結子会社から外れる予定。そして新たな持ち株会社の本社は東京になる予定。

共同記者会見の中でトヨタの佐藤社長が「乗用車ビジネスと商用車ビジネスの違いもあり、トヨタのノウハウを生かすのが難しく、トヨタが日野を支えていく事の限界も感じていた」と正直にコメントされていたのが印象的だった。また三菱ふそうのCJPTへの参画の可能性は何も決まっていないとの事。

共同記者会見や発表資料を見ての商用車メーカーの中の人の率直な感想としては、確かにボリュームが出ない中での商用分野のCASE に対応するには投資額が莫大になり1社で対応出来ない。乗用車のトップのトヨタと商用車のトップであるダイムラーが組むのは理解出来る。だからと言って日野と三菱ふそうの統合までしなくても良いんじゃない?と言うのが感想。問題児の日野の持ち分を減らして自社への影響を軽くしたいトヨタが水素技術の提供の見返りにダイムラー (と三菱グループに) に日野を押し付けたと言う偏った見方をしてしまう。また電動化を中心に4社の協業はある程度のシナジーはあるのかも知れないがそれ以上に後述する既存ビジネスでの課題が多過ぎて日野と三菱ふそうの統合のメリットを見出すのが正直難しい。いすゞのUD買収は小型トラックが得意ないすゞと大型トラックが得意なUDと言う分かりやすい構図だった。しかし日野も三菱ふそうもどちらも小型トラックが得意で強い市場も共に東南アジアでトラック&バスの事業規模もそんなに変わらないと言うシナジーを発揮するのが難しい関係の様に見える。またいすゞはUDの株式を100%保有する明確な親会社であるが、日野と三菱ふそうは持ち株会社にぶら下がった対等な関係となる。対等な関係とは聞こえが良いが意見が割れた際には何も決める事が出来ない膠着状態に陥ってしまう可能性がある。そう言った場合は新持ち株会社が最適解を見つける事になるがトヨタとダイムラーと三菱グループの合弁会社でどうやって最適解を見つけるのか?乗用車のトヨタ、商用車のダイムラー、三菱グループの各社で思惑や狙いが異なってくるはずで前途多難な未来が見えてしまう。

ここまでは4社の協業内容、日野の三菱ふそうの統合の狙い、共同記者会見での重要コメントと中の人の率直な感想だ。狙いは何となく淡く分かった気がするけど既存のビジネスはどうするの?と言う溢れ出てくる課題の解説に関してはこちらのツイートを参照下さい!商品ラインナップや販売網の統合可能性や日野が抱える訴訟リスクなど両社が抱える課題は非常に多い。


以上です!

商用車メーカーの中の人

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