スタートアップとは3
このシリーズも最終回です。
前回の振り返り
ペットなどの動物と会話できるようになる機械を発明したあなたは、これを売るべく起業することにしました。
ところが量産するための設備にはお金がかかることから資金の調達が必要に。
調べた結果スタートアップに資金を提供するVC(ベンチャーキャピタル)という組織があることが分かり、資金の調達に成功。
今後の方針として
独立端末ではなくスマホアプリでリリースすること
アプリエンジニアとマーケティング担当を採用すること
ということが決まりました。
前回の記事はこちら↓
開発、そして広報活動
ついに本格的に動き始めました。
まず、動物と話すための論理は理解できているのですがアプリ開発をしたことがないのでアプリエンジニアを探すことにしました。
すると運良く友人の一人が副業として開発に携わってくれることになりました。
そしてもう1人重要な役割を担う人を探さなくてはなりません。マーケターです。マーケティングというのはモノをどのように売るのかを決めることで、何を、いくらで、どこで、どのように、誰に売るのかなどを決めることを言います。
ところが残念ながらマーケティングスキルを持つ人はなかなか見つからず、自分でやるしかなくなってしまいました。
このようにスタートアップの創業期は必要な人材を見つけてくることは非常に難しく、知人を通じて数人で企業することが多いです。
とにもかくにもまずは開発です。
これはあなたとエンジニアで動物と話すための論理を議論しながらどうアプリに落とし込んでいくかを決めていく作業です。
ある程度固まったら後はエンジニアがコードを書くこと(プログラミング)によってアプリが出来ていきます。
ここで初めて費用が発生します。エンジニアの人件費です。しかしながら今の所一つもキビダンゴ君は売れていないので売り上げは0になります。
その間あなたはすることがないので、キビダンゴ君をどのように広めていくかを考えることにしました。
まずはキビダンゴ君を買うのはどのような人かを考えた時、ぱっと思い浮かぶのはペットを飼っている人でしょう。
ではペットを飼う人が集まる場所は?
となるとペットショップでしょう。
そこであなたは以下のようなストーリーを考えました。
アプリの開発には半年かかるのでそれまでに事前に作っておいた端末型のキビダンゴ君をペットショップに配る
ペットショップにいる動物たちに対して調整を行ってもらう
ある程度動物たちと会話できるようになったらそれを店頭に置いてもらい、その様子をお客様に見せる、SNSにアップしてもらう
その結果キビダンゴ君が広がる
という流れです。早速10個ほど作っておいたキビダンゴ君を都心のペットショップに置いてもらうべく必死にセールスを行った結果、全てのキビダンゴ君を配置してもらえることになりました。
そしてエンジニアと開発を行いながら、キビダンゴ君を広めるべくペットショップでの機器調整を続けました。
半年後
あれから半年が経ちました。その間にも開発は続きついにアプリ版のキビダンゴ君が完成。そして値段も売りきりのタイプではなく、継続して売り上げが入るように月額制のモデルにすることになりました。
ペットショップに置いたものはどうなったかというと無事動物たちとある程度会話できるようになり、スマホに動物たちの鳴き声を入力すると日本語に変換されて画面に出るという仕様まで仕上がりました。
ペットショップに訪れた人はそれに驚き、SNSでも拡散されるようになりました。
そしてついにアプリリリースの日がやってきました。初日は50ダウンロード。その後も一定数ダウンロード数を稼ぎ1ヶ月後には月額代金が入り、ついに売り上げが出るようになりました。
ここまでの収益を追ってみよう
さて、
「いつになったら急成長の話になるんだ」
と聞こえてきそうなのでここまでのあなたの会社の収益を考えてみましょう。
今回は簡単に
売り上げ=アプリ月額代金
費用=開発費、広告費
に絞って考えるとここまでの売り上げはアプリ月額料を1000円、ダウンロード数1000とすると売り上げは100万円であることがわかります。
ところが、ここまでの開発費はエンジニアの人件費などを含めると100万を優に超えます。ここまで広告費はペットショップでの店頭展示とSNS運用のみなのでほとんどかかっていませんが、今後大きくアプリを広げるにはネット広告や例えば電車の中の広告などのオフライン広告の費用がかかるようになるでしょう。
つまり何が言いたいのかというと、今あなたの会社は赤字です。
「赤字ってやばいんじゃないの??」
答えから言うと今はやばくありません。なぜかと言うと、VCから調達した資金があるからです。
つまり会社にまだ現金は残っています。なので、まだ開発費に回すことが出来ますし、人件費も払うことが出来る状態です。
そこであなたには以下の2択の選択に迫られます。
開発費や広告費に大胆に投資し、キビダンゴ君の急拡大を狙う。
現金が無くなるのが怖いので、キビダンゴ君のアプリの質は一旦維持し、広告もSNSを、中心にする。
皆さんそろそろ分かってきたのではないでしょうか?
そうです、急成長するスタートアップは1を選択します。
例えば開発費。エンジニアの数を増やし開発速度を上げるとともにデザイナーを採用するなどしてアプリとしての質を上げていくことが出来ます。
次に広告費に関しては極端な例ではテレビCMがあります。かなりの費用となりますがアプリを広める方法としては有効な手でしょう。
このようにスタートアップは急成長するために、初めはサービスやプロダクトの洗練、拡大に多大なる投資をします。場合によってはこの段階で再度VCから資金を調達します。
この赤字の時期こそ急成長の急成長の種となるのです。
そしてここまでの収益を図にしてみましょう。
グラフの形を見てください。アルファベットのJに見えませんか??
これこそスタートアップの成長がJカーブモデルと言われる所以です。
そしてこの成長モデルだからこそ、場合によっては世界を変えるようなサービスやプロダクトが生まれるというわけです。
1年後
キビダンゴ君はその使い勝手の良さと精度の高さ、そして積極的な広告投資により100万ダウンロードを突破しました。
初めはペット向けに売ったつもりでしたが次第に獣医や動物園の管理業務等にも使用されるようになり、ビジネス向けのものもリリース予定です。
キビダンゴ君は人と動物の関係をさらに深める役割を担ったのです。
END
まとめと補足
いかがだったでしょうか。
3回に渡り「スタートアップとは」というテーマで解説してみました。
色々例を上げながら説明してきましたがとにかく覚えてほしいことは一つです。
「スタートアップは世界を変えるポテンシャルを持つ」
既存産業のイノベーションそして新産業の創出という大きな役割を果たしながら急成長する。
そんなスタートアップを今後も応援したいと思います。
※補足
今回はキビダンゴ君という誠に雑な例を用いてスタートアップの特徴について解説しました。
今回は完全に作り話の世界なので、最終的には上手く行ったことにしましたがもちろんこんなに簡単に上手く行くことはほとんどありません。
起業家の方々は会社を立ち上げサービスやプロダクトを考え出し、上手く行かなければ違う事業を考え、また新たなビジネスを始める(この転換のことをピボットと言います)というのを繰り返しながら成功への糸口を探ります。そしてその間は資金がなくなってしまう不安や組織の問題など多くの課題を乗り越える必要があるのです。そんな課題を解決しながら数年かけてようやく、今回挙げたような成長性を持ち始めるのです。
それでは、今回はこのあたりで🙇
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筆者は何者??
島内 道人(しまうち みちひと)
北海道大学大学院 情報科学研究科 修了
化合物半導体のナノ構造形成に関する研究に従事→成果論文
学位取得後、インフラ系企業に新卒で入社。大規模システム改良に従事。
その後for Startup, Inc.に入社。スタートアップ支援に尽力しています。
for Startup, Inc.について
for startupsについて 弊社for Startupsは国内有力VCと連携し、有望スタートアップへのヒトの支援(ヒューマンキャピタル)を中心に、CxO・役員クラスのハイレイヤー層を数多く輩出してきました。 また、2017年よりベンチャー投資を始めるなどヒトだけではないハイブリッドキャピタルとして国内の成長産業への支援を行っております。
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