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[翻訳] 選択バイアスを理解してポーカーの分散を正しく把握する by Patrick Howard
ポーカーにおいて「分散」は避けられない要素ですが、大きなダウンスイングに陥った時、それを分散の一部だとすんなりと受け入れられない人も多いと思います。(僕です)
また、そのダウンスイングが、分散の中でどれだけ頻繁に起こりうることなのかを計算することも可能ですが、人間自身が持つバイアスによって、計算結果を間違った形で解釈してしまうこともあるようです。
Patrick Howardはポーカーの分散に関して、多く情報発信をしていますが、今回も彼のブログを翻訳したいと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1681190352188-JtRvy2ZjQ1.png)
分散の計算における「選択バイアス」とは
Selection Bias in Variance Calculations
2019/11/22 投稿
私は、PrimeDope 分散カリキュレーター(計算機)が大好きです。実際、私の一番好きな遊びは巨大なダウンスイングに入ったら、それをこのカリキュレーターに入れて、私がどれくらいアンラッキーなのかを正確に測ることです。
しばらくの間、これは非常に勉強になる趣味でした(同時に高くつくものでもありました)。しかし、やがて「この計算の仕方は何かおかしいかもしれない」という天才的な発想を持ちました。
私が疑うようになった主な理由は、計算結果のいくつかが馬鹿げていると思えたからです。
カリキュレーターによれば極めて珍しいはずの事象が、私や私の周りのプレーヤーの経験において、あまりにも頻繁に起こっていたのです。
例えば、複数のプレイヤーが50~60バイインでダウンスイングするのを経験したことがあります(それを証明するグラフもあります)。彼らは、高いウィンレートを持つとても上手なプレイヤーでした。カリキュレーターによると、7bb/100の勝者が、50,000ハンドで50バイインのダウンスイングに陥る確率は以下の通りです。
インプット
Win rate(ウィンレート): 7 bb/100
Standard deviation(標準偏差): 100 bb/100
Observed win rate(観測したウィンレート): -10 bb/100
Number of hands to simulate(シミュレーションするハンド数): 50,000
結果
![](https://assets.st-note.com/img/1681189928163-FfjYyykueb.png?width=1200)
カリキュレーターによると、真のウィンレートが7.00 bb/100の場合、5万ハンドで観察されたウィンレート(-10.00 bb/100)を超える確率は99.9928%となります。
100% - 99.9928% = 0.0072%
つまり、およそ14,000回に1回
言い換えると、真のウィンレートが7bb/100であれば、5万ハンドでこれ以上のダウンスイングに陥る確率は14,000分の1しかないのです。私自身はこれほど大きなダウンスイングに陥ったことはありませんが、先ほど言ったように、複数のプレーヤーに起こるのを見たことがあります。
もちろん分散計算は完璧なモデルではありません。このような計算をする時、プレイヤーのウィンレートが一定であるということを重要な前提としていますが、そんなことはありえません。なぜなら、プレイヤーの対戦相手は常に変わるからです。
また、現実の世界では、人はティルトします。大金を失うとプレーは悪くなり、極端なダウンスイングが起こりやすくなるのです。
いやでも、この計算が大まかなものであったとしても…14,000分の1? おいおい、そんなはずはないだろう?
しかし結果的に、計算は正しかったのです。問題は、私の見方の問題でした。
この特別なダウンスイングの確率は本当に14,000分の1なのですが、それは5万ハンドのサンプルをぴったり1回だけプレイした場合に限られます。私が話を聞いたプレイヤーは、生涯で5万ハンドよりずっと多くプレイしているのは明らかです。ですから、このような大きなダウンスイングに陥る可能性は、単にそのような機会が多かったというだけなのです。
選択バイアスとは
私が、この前コインを投げたら、10回連続で裏が出たと言ったらどうでしょう。
あなたは、「え、10回も?」と聞くでしょう。「その確率は1,000分の1くらいですよ」と。
「そうだろ!ほんとに変だった!」と私は答えます。
そこで、あなたは「その日、コインを何回投げたの?」と聞きます。
「えーっと、4、500回くらいかな」
これだとちょっと見劣りしますね。コインを500回投げて、10回続けて裏が出る確率は1,000分の1よりずっと高いです。確かに面白いですが、1,000分の1ほどの面白さではありません。
このコインの裏表の話も選択バイアスの一例です。これは、ポーカープレイヤー(私も含めて)が分散計算をするときにいつも犯す間違いです。
要は、極めて起こりにくい事象でも、多くの機会を与えれば、起こりやすくなるということです。ポーカープレイヤーは年間何十万ものハンドをプレイします。それぞれのハンドは、新しいサンプルの始まりと見なすことができます。
訳注:
選択バイアスとは、研究の対象を選択する際に生じるバイアスのこと。今回のケースで言えば、ダウンスイングを経験した特定の期間のみを選択して分散を計算したために、滅多に起こらないほど大きな分散が起こったように見えてしまった、ということ。
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そのため、「〇〇ハンドで〇〇バイインのダウンスイングを経験する確率は?」と聞くのではなく、「私のキャリア全体でプレイしたすべてのハンドのうち、どの期間においても、〇〇バイインのダウンスイングを経験する確率は?」と聞いたほうがよいのです。
Primedopeにはダウンスイングの分散に関する追加統計が掲載されていますが、残念ながらこの質問に対する回答には使えません。そこで、私よりもずっとシミュレーションが得意な友人にを助けてもらいました。以下の分散計算の功績はすべてRob Wellsにあります。
ダウンスイング シミュレーション
シミュレーション方法:
1万人の架空のポーカープレイヤーをシミュレーションする。それぞれウィンレートと標準偏差は同じである。各プレイヤーは同じ数のハンドをプレイする。各プレイヤーがサンプル全体で陥った最大のダウンスイングを記録する。
このシミュレーションを、4つの異なるウィンレートで繰り返す。以下は、300万ハンドのサンプルサイズ、つまり1万人のプレイヤーがそれぞれ300万ハンドをプレイした場合の結果です。
(300万ハンドを選んだのは、プロのオンラインポーカープレイヤーが一生のうちにプレイするハンドの数として、妥当な推定値だと考えたため)
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平均最大ダウンスイング (Average Max. Downswing):平均して、このサイズのサンプルで予想される最悪のダウンスイングです。
90%信頼区間 (90% Confidence Interval):最大ダウンスイングがこの数値を超えないことを90%確信できる。
95%信頼区間 (95% Confidence Interval):最大ダウンスイングがこの数値を超えないことを95%確信できる。
例えば、5bb/100のプレイヤーの最大ダウンスイングの平均値は7,000bb、つまり70バイインでした。これより大きなダウンスイングを経験するプレイヤーもいれば、小さなダウンスイングを経験するプレイヤーもいますが、平均して経験した最悪のダウンスイングは70バイインとなります。
10bb/100のプレイヤーの平均最大ダウンスイングは4,300bb、つまり43バイインです。ウィンレートの高いプレイヤーは、平均してそれほど深刻なダウンスイングを経験しないはずですから、これは理にかなっています。
しかし、繰り返しますが、これはあくまでも平均的な結果であることを忘れないでください。90%および95%信頼区間は、確率の低いダウンスイングがもっとひどいものになる可能性を示しています。例えば、95%信頼区間では、10 bb/100のプレイヤーでも、最大66バイインのダウンスイングになることが予想されます。
以下は、他の3つのサンプルサイズに対するシミュレーションの結果です。
(それぞれ100万ハンド、25万ハンド、5万ハンド)
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![](https://assets.st-note.com/img/1681190078047-KLHPCNppC8.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1681190084509-XfzoR5UmdR.png?width=1200)
いくつかの異なるサンプルサイズでシミュレーションを提示するのは、こうしたダウンスイングがどれくらいの頻度で起こるべきかを直感的に理解しやすくするために有効だと思います。
例えば、あなたがキャリア全体を通して7.5bb/100勝っているとして、30バイインのダウンスイングに入ったとしましょう。25万ハンドのサンプルサイズの結果を見ると、7.5bb/100プレイヤーの平均的な最大ダウンスイングは31バイインであることがわかります。
つまり、あなたのダウンスイングは25万ハンドの期間中、平均して予想される最悪のものだということです。月に2万ハンドほどプレイするのであれば、これほど大きなダウンスイングは平均して年に1回ほど発生すると考えてよいでしょう。
もちろん、これほどひどいダウンスイングは起きないかもしれませんが、もっとひどいダウンスイングが起きる可能性もあります。信頼区間95%で、このサンプル数の最大ダウンスイングは59バイインです。これほど大きなダウンスイングが起こる可能性は低いとは言え、ありえないことではありません。
一般的に、ポーカープレイヤーは分散を非常に過小評価しています。私が話す5bb/100プレイヤーのほとんどは、40バイインのダウンスイングを予期していませんが、実際には平均して250kハンドごとにこれくらいのダウンスイングを経験することになります。
ボリュームの多いプレイヤーは、多少の差はあれど、4ヶ月に一度はこれを経験するということになります。もしこれが怖いのであれば、あなたはプレイするゲームに対して適切なバンクロールが用意できていないのでしょう。
とはいえ、この記事を恣意的なバンクロール管理のガイドラインで終わらせるつもりはありません。あなたがどれだけのリスクを負うことができるかは、あなた自身が決めなければなりません。私の目標は、何が起こりうるかだけでなく、実際に何が予期されるかをよく理解してもらうことです。
もしあなたがポーカーを仕事にするつもりなら、この険しい道のりに備えてください。
翻訳元:
Selection Bias in Variance Calculations — MOBIUS POKER
翻訳は以上です。読んで頂いてありがとうございました!
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