見出し画像

[翻訳] ソルバー戦略の簡略化 - 実戦に取り入れる3つの方法 by Patrick Howard

ソルバーの使い方や複雑なGTOソリューションの扱い方に悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
私のnoteでも度々取り上げているPatrick Howardですが、先日YouTubeチャンネルを立ち上げていて、そこで「ソルバーの効果的な使い方」について説明していた動画があったので、抜粋して翻訳しました。

特に、ソルバーのアウトプットを簡略化し、実際のプレイに取り入れやすくするための方法が3つ紹介されています。

Patrick Howard @mobiuspoker

今年始まったPatrick HowardのYouTubeチャンネルですが、今のところ高頻度で動画が投稿されているので、今後もよいものがあれば、翻訳していきたいと思います。


GTOソルバーとトレーナー

2023/03/14

本日は、ソルバーのアウトプットを簡略化し、実際のプレイに取り入れやすくするための方法が3つお話したいと思います。

方法1: 戦略を丸める

私が、GTOソリューションを見る時にいつもやることは、戦略を丸めること(切り上げ・切り捨て)です。
コンピューターは精度の高いソリューションを提示します。コンピューターなら「ある特定のコンボは13.2%の頻度でレイズし、残りはコールする…」というプレイができますが、人間には頻度を正確に再現することはできません。
ソリューションに出てくる混合戦略の頻度を、25%刻み(0%, 25%, 50%, 75%, 100%)で一番近い頻度に、切り上げ・切り捨てをすることをおすすめします。それでも難しければ、50%刻み(0%, 50%, 100%)でもよいですし、純粋戦略(0%, 100%)に簡略化しても十分機能します。

例として、SBオープンに対する、BBのディフェンスを見てみます。このスポットは極めて頻出にも関わらず、どのレベルのプレイヤーにおいても非常にミスが多いスポットです。

私がこのスポットで使っているソリューションの例をお見せしましょう。

左: GTO Wizard (500NL)、右: Patrickが使用しているもの (2000NL)

左はGTO Wizardのソリューション(500NL)、右はPatrickが使用しているソリューション(2000NL)です。GTO Wizardは500NLレーキのソリューションまでしか提供しておらず、右のほうがプレイするハンドが多くなっているのは想定しているレーキが異なるためです。

私は、すべて純粋戦略に簡略化しています(ピュアレイズ/ピュアコール/ピュアフォールド)。例えば、本来、混合戦略を取るK8o, K7o, K6oなどコンボをピュアコールにしています。一方、J7o、T7o、Q6oなどコンボをクラスタ化して、本来混合のところをピュアレイズにしています。このようなことをチャート全体で行います。これによって、チャートははるかに覚えやすくなります。
そして、全体としてはGTOと同じ頻度で各アクションを取るので、相手から透けることがありません。レイズ、コール、フォールドそれぞれ、正しいアクション頻度から誤差1%以内で行うことができます。仮に相手がこのことに気付いたとしても、実際のゲームの中でこれをエクスプロイトすることは非常に難しいです。PioなどのGTOソルバーなら、特定のコンボが抜けていることをエクスプロイトできますが、普通の人間にはできません。
もし、純粋戦略では不安で、もっと高度なものがよければ、50:50にしてみましょう。

左: 同上、右: 50:50の混合を取り入れたもの

こちらは同じレンジですが、50:50を取り入れたものです。トップレンジはピュアのままですが、いくつかのコンボが50:50の混合戦略になっています。
より複雑で覚えるのが難しくなりますが、やはりGTOと同じ全体のアクション頻度を取りますし、GTOに非常に近くなるので、更に人間のプレイヤーからはエクスプロイトされにくくなります。
※紫はオプションの3bet、黄色はオプションのコール。入れなくてもGTOと同じ頻度は保てるが、少しルースに調整したいときに入れる。

このスポットで多くのプレイヤーがよくオーバーフォールドしてしまいます。GTOソリューションに従おうとしても、オフスーテッドコネクターなどのコールレンジや、弱いオフス―テッドのポラライズされた3betレンジ等を見落としがちです。そのせいで、フォールド頻度がGTOより高くなり、レイズ頻度が低くなってしまいます。これは非常にエクスプロイトしやすく、SBはGTOよりかなりワイドにオープンすることで、スティールを多く取ることができます。
今、あなたがGTO Wizardのようなソリューションを使っているのであれば、まずは自分専用の丸めた戦略を作ることをおすすめします。
私も自分の生徒にはまず純粋戦略のプリフロップレンジチャートを提供し、ハイステークスに到達するまでそれでプレイさせています。もっと高度なものを欲しがって来たハイステークスプレイヤーには、50:50を取り入れたチャートを提供するようにしています。

方法2: ベットサイズの簡略化

2つ目は、利用するベットサイズを1スポット、1サイズに絞ることです。
大抵のGTOトレーナーは少なくとも4つのベットサイズを提示します。そのほうが精度が高くなり、得られるEVも高くなるためです。しかし、ほとんどの場合、1つのベットサイズでも、EVの99.9%を得ることができるのです。
それができないシチュエーションでも2サイズあれば十分で(それも珍しいケースですが)、2つより多くのサイズを使わなければいけないことはありません。

例として、こちらは、BvB SRP Flop Cbet (SB 3bb) のシチュエーションです。

SB 3bb open後のBvB SRP Flop Cbet

このシチュエーションにおける単一ベットサイズは、ポットの30%程度のサイズが良いでしょう。25%でも33%でも大丈夫です。
それ以外のサイズを使わなくても、ほとんどEVをロスしないということを証明してみましょう。これはPioSolverで行った実験です。

30%ベットの単一サイズを選んだ場合の平均EVロスは 0.07%

50の異なるボードで行ったシミュレーションです。まず最初に4つのサイズ(対ポット 30%, 50%, 70%, 100%)を使った場合のEVを計算しました。次に、4サイズのうち1サイズのみでベットした場合のEVをそれぞれ計算しました。
30%ベットの場合は、ほとんどEVロスがないことがわかりました(EVが上がっている部分があるのは、ただのシミュレーション精度の問題です)。
30%ベットの単一サイズを選んだ場合の平均EVロスは、0.07%のみでした。win rateで言うと、0.4bb/100のロスです。 ロスがないとは言わないが、全体から見れば十分無視できる小ささでしょう。
例えば、フロップで3つのサイズを使うと、ターンも3つの戦略を暗記しなければいけなくなり、リバーもすべてのフロップとすべてのターンのベットサイズの戦略を覚えなければいけなくなります。ゲームツリーの枝の数だけ戦略の数も拡大し、複雑になります。
私が見せたような方法でベストな1サイズを選んでもいいですが、簡単な方法として、様々なボードを見て、一番多く使われるサイズに絞ればよいでしょう。大抵の場合、それが一番多くのEVを得られるサイズです。
ソルバーが小さいサイズと大きいサイズを高頻度で使うボードもありますが、大抵、そういう場合は中間のサイズを選んでおけば、それほどEVをロスしません。

方法3: レンジベット・レンジチェックを使う

3つ目は、レンジチェック・レンジベットを活用することです。
チェック頻度が非常に高いボード(あるいはベット頻度が高いボード)では、常にチェック(常にベット)をしてもほとんど問題がありません。これによって、現在のストリートだけでなく、将来ストリートの戦略を非常に簡略化されます。
おおまかな基準として、75%ルールで考えましょう。例えば、フロップで30%ポットベットを使うとして、ソルバーが75%以上の頻度でそれを推奨していれば、全レンジで30%ベットしても、ほとんどEVロスしません。チェックも同様で、75%頻度以上でチェックするシーンでは全レンジチェックができます。
これは小さいベットサイズを用いる場合ですので、大きいサイズのベットを使用するのであれば、もう少し厳密に考える必要があります。

ブラインドヘッズアップのSBの簡易Cbet戦略で言えば、8ハイ以下のすべてのボードでレンジチェックをして、9ハイ以上のすべてのボードで30%Cbetを打つことができます。この単純な戦略を取っても、ポットの0.5%しかEVをロスしません。
これは無視できないと感じるかも知れませんが、これは方法2のベットサイズの話とは状況が違います。ベットサイズの簡略化は、相手が何もしなくてもこちらはEVをロスします。レンジベット・レンジチェック戦略はベットサイズの簡略化よりも10倍ほど大きいEVロスになりますが、しかし、こちらがロスしうるEVを実際に相手が得るためには、相手がこちらの戦略にアジャストしなければいけません。

こちらのレンジベット戦略に相手がアジャストする基本的な方法は、ほとんどのボードで「フォールドを減らし、レイズを増やすこと」になります。こちらのレンジチェック戦略に相手がアジャストする方法は、チェックレンジがGTOより強いということなので、通常「Stabを減らすこと」になります。
しかし、対抗する方法を知っているだけでなく、こちらがレンジベット・チェックしてることを認識できないと、アジャストすることはできません。同じスポットを何度もプレイしなければ、こちらの戦略を特定することはできず、実際には難しいことです。
さらには、データベースを見てみると、多くのプレイヤーは小さなサイズのCBetに対して、IPからフォールド過多、レイズ過少にプレイしています。
GTO的には25%しかフォールドできないし、15%程度レイズしなければいけないですが、これは直感に反しているため、大抵の場合できていません。
つまり、こちらの簡略化戦略にアジャストする以前に、まず自分がパッシブすぎることを正さないといけないため、こちらがエクスプロイトされる可能性は低いです。
人間のプレイヤーはソルバーのように高精度なアジャストをすることはできないため、こちらの戦略がポット0.5%分のEVロスするものであっても、相手がそれを取りこぼさないことは考えにくいのです。

Source: Solvers and Trainers (YouTube)


翻訳は以上です。読んで頂いてありがとうございました!

皆様からのリアクションがこの翻訳noteのモチベーションになっています。ぜひスキ・フォロー・拡散・投げ銭で応援して頂けると嬉しいです!


※以下の有料部分には何も書かれておりません。

ここから先は

14字 / 1画像

¥ 300

スキ・拡散・サポートで応援して頂けるととても助かります。サポートは100円でもいいです。先に言っておきますが、ありがとうございます。