見出し画像

コンピレーション・アルバム

はじめに

さて、今回は少し趣向を変えます。

普段は、自分が頭の中で考えている事や日々起こったことに対する印象など、考えを言語化しよう、というカウンセラーからの提案に基づく形でnoteを書いているのですが、今回は「音楽」について。この度、僕もレコーディングに参加したコンピレーション・アルバムがめでたく配信開始されたということで、このアルバムに収録された曲を演奏する上での「こだわり」や「考えている事」「気を付けている事」なんかを書く……つまり、「音楽」の言語化にチャレンジしてみます。つたない文章ですが、お付き合いいただければ嬉しいです。

このアルバムは、自分が所属するアルバム「アメリカ民謡研究会」に所属するバンドの曲たちによってつくられたコンピレーション・アルバムでして、僕も5曲中3曲に参加しています。

で、今回はその自分が参加している曲について書いていこうと思います。参加していない2曲のことも感想くらい書こうかと思ったんだけど、なんだか馴れ合いっぽくなるのも嫌だし、僕がわざわざ書かなくてもとても素敵な曲なのは間違いないので。あと少し気恥ずかしいので。とにかく、必ず5曲全部、聴いてください。

(※1:ちなみに、今回は自分の演奏についての技術的な話なので、解説なしに簡単な楽器用語が出てきます)
(※2:いつもあんまり多くの人に読んでもらおうと思っているわけではないので常体が多いんですが、今回は普段は読んでない人にも読んでほしいと思ったので、敬体でいきます)


2曲目「惜し風」/Onjuk


ベースで参加した曲。この曲は、タイトルに「風」が入っている通り、流れるようなバラード曲です。なので、「リズム隊」としてのベースと、曲のイメージを表現する意味でのある種の「演者」としてのベースの2つを切り替えながら、両立して表現することを目指しました。

とはいえ、基本大事なのは前者です。うちのボーカルの歌唱力やキーボーディストの表現力・センス・技術に任せておくだけで、良い曲になることは間違いない。歌が入っている部分においては、余計なことは一切していません。基本ルート音を細かく弾いているだけです。なんなら1番はサビまで出番ないし。ドラムの音が割とどっしり目なのもあって、地に足のついたビート感に歌が載る感じ。

ただ、正直弾いてて楽しいのは後者。この曲、全体で4分39秒あるんだけど、意外と歌がない部分も多いです。というか、「リズム隊のベース」と「演者のベース」のすみ分けは、「ドラムが裏で鳴っているかどうか」なので、結構後者の尺の方が長かったりするんですね。

まずは1サビ&落ちサビの後半から入ってくる高音。これも「風」を表現しています…というより、大体「風」のイメージなんですけどね。「Go Blind~」のところでスライドするこの音!ここを聴いてほしい。「ピュ~~」っていう感じの、優しい風のイメージ。台風とか吹雪とかではなく……潮風みたいな、優しいやつ。

そしてキーボードのソロ部分。ここはあくまでキーボードが主役なんだけど、ベースも結構動いてますよね。ソロは割とゆったりした、なんならスティックまで使った、情緒たっぷりの本当に素晴らしいソロだと、身内褒めながら思います。で、その裏で鳴っているベースは、どちらかと言うと中低音というか、弦もフレットもそんなに派手じゃない範囲で動きます。ここは、キーボードの優しい風と、ベースのちょっとドッシリした風という、2つの競演みたいなイメージです。ゆったりとせわしない、高いと低い……という、同じ「風」なのに相反する2つを同時に…ということです。

あと、この曲におけるベースの音色は2種類。基本のものと、サビ終わりの5拍子になるパートで使う、ほんの少し歪みがかかったもの。リハの時はもう少しとがった音になってたんだけど、録りながらさすがに目立ちすぎる…ということで、全体的にもう少しマイルドな音に変更。変更後の音も好きですが、とにかく5拍子の場面は他と違って「激しく」「強く」弾くことによって、曲中のアクセントになっています。なっているかはともかく、そういう意図です。

歌詞・アレンジ含めて、すごく素敵な曲だなと自分でも思います。夜とか夕方に合うかと思えば、早朝にも合ったりして……。ただ演奏としては、自分が大学に入ってからちゃんとベースをやるようになって初めて、細かいフレーズや動き方を考えた曲なので、結構弾くのが大変だけど面白い…という、ちょっとほかとは違う緊張感がある、特別な曲です。


3曲目「How do you feel?」/Purple Hop


3曲目はドラム参加なのですが、正規メンバーではなく、先輩のお手伝いとして。ボーカリストは、YouTubeやTHE FIRST TAKEのオーディションで注目を集めるご存知…あの人ですね。

さて、この曲におけるポイントは「パワー」。Mr.ChildrenをはじめとするJ-POPに触れて育った自分としては、「ドラムとて強弱や細かいテクニックで表現するモノ」というイメージがあるんですが、この曲に関してはそれを捨てた上で、基本パワープレイというか、強弱なく「どっしり構えてのっそり歩く」みたいな(例えばゾウのような)、そんな演奏を目指しました。具体的に言うと、「いち、にの、さん、し」と、拍を強く意識させる演奏ですね。

この曲の主役は当然歌、そしてギター。ドラムはあんまり余計なことをしても仕方がないので、ゴーストノートは最初&Aメロのハイハットとキックだけの所以外ほとんど入れてません。ビートを叩いている部分は至極シンプルに、そして強弱もなし。しいて言えば、「強強」というか、フォルテとフォルティシモというか…悪く言えばのっぺり、良く言えば迫力のある演奏ですね。

ただ、「強弱」とは別に「緩急」はつけたかもな、と今聴きながら思いました。と言うのは、ビートを担当するハイハットシンバルを、場所によってオープンの(シャン!)という音とクローズの(ツッ!)という音で使い分けています。見事なミックスの賜物でもあるんですが、この曲のドラムは全体を通してちょっとザラっとした音色になっているので、オープンハイハットだけでも結構な破壊力があります。だけど歌とかギターソロがある部分はそっちを目立たせなくてはならないので、クローズに切り替えるんですね。このクローズがいい味出してます。足とスネアがズンズン行くのを、クローズハイハットが引き締めている感じ。音の強さは確かに違いますが、意図としてはむしろ「強く出る」と「引き締める」のオンオフ・緩急をつけよう、というところの方が近いです。

そしてこの曲の特徴、これは聴いてもわからないんだけど、レコーディング方法がおそらくほかの曲と違います。僕はこの曲を録ったスタジオで過去6曲をレコーディングしたことがあります。その際は一斉に通しで鳴らした演奏を「ドラム」「ベース」「リードギター」「リズムギター」それぞれを個別に録音して、後からそれぞれのパートごとに修正していく…という録り方をするんですが、この曲はなんと一発録音、一つの部屋に全員のアンプを置いて、それぞれにマイクをセットします。当然ベースのアンプに向かっているマイクがドラムの音漏れを拾う…など、自分に向かっているマイクが他のパートの音も拾っているので、要するにパートごとの修正がきかない。誰かがミスったらそのテイクはお蔵入りです。普段のバンド練習と同じような感じ。それに加え、この時は基準となるクリックを聴いていたのが僕だけだったので、僕がズレると皆もついてくるので、当然NGテイクになる…という、捉え方によってはちょっとハードなやり方です。ただ、それはある意味「いい緊張感」でもあり、元々このバンド自体優等生っぽい録音じゃなく、セッションの空気感というか、「生の雰囲気」を大事にするバンドだったし、結果的にすごく良い音源になったと思います。刺激的なレコーディングでした。

ちなみに、冒頭に入っている掛け声は僕です。


5曲目「追憶」/makerugakachi


この曲は、初めて自分が作詞作曲した曲のレコーディングということで、これだけで1個の記事が書けてしまうレベルなのですが、(というか一回書いたんですが)あまりにも長いので、曲の意味や中身・ストーリーではなく、あくまで「演奏」という視点に絞って書きます。ただ、自分の曲なので自分の拘りたいポイントは自分が一番理解してるので、「これでいいのかな?」という不安もなく、自信を持って臨みました。結果的には、1テイク目がこれから書くような事を頭に意識しつつも、感情を一杯に載せた、結構いいテイクだったと思います。それ以降は、やっぱり修正点なんかを意識しちゃうので、どうしても客観的に自分の演奏をみながらになります。そうすると機械的な演奏になりかねないので、やっぱり初期衝動は大事だなと感じました。

本題。自作曲という事もあり、これまでの自分の経験やイメージから成り立っている曲なので、さっきの「How do you feel?」と真逆の、「表現するドラム」を全面に押し出した演奏になっています。前曲では使っていない2種類のスプラッシュシンバルや後述するスネアなど、ミックスする前の「生音」にも少しだけこだわりました。

基本的には3拍子で進んでいく曲ですが、リムショットを使ったり、フロアタムを基本とするタム回しのビートになったり…と、ビートの鳴らし方自体も色々あって、そういう意味でもさっきのとは偉い違いですね。もちろんそれぞれに強弱の微妙な違いがあるんですが、ざっくり言えば「頭から終わりにかけて大きくなる」っていう、なんともわかりやすい形。とはいえ、一旦落ちサビを挟むので、歌のメロディーも含めてそれなりに盛り上がったCメロから急速冷凍して、再度最後の大サビ&アウトロへの大爆発に持っていかなければ(あげていかなければ)ならない…という細かい変化も挟むという、まさしく「緩急」が肝になります。

で、この曲での「緩急」の変化を担当するのは、そりゃそうなんだけどシンバル類。キックやスネアも若干叩き方を変えてるんですが、あんまり伝わってこないし、何よりシンバルが一番わかりやすい。アウトロなんかは、今までそんなに前に出てきていなかったリードギターがわかりやすく爆発するので、そこにシンバルをかぶせて「どっちが大きい音出せるか勝負」みたいになっています。チャイナシンバル(僕が使っているのは、「ミニチャイナ」と呼ばれる少し小ぶりなものですが)は特に良いですね。前曲でもそうですが、乱発せず一発勝負の爆発音がいいです。最後の「歩いていこう~」のところで鳴っている「ジャジャジャジャ~!」っていうのがそれです。オープンハイハットやクラッシュシンバルとはまた違う音域なので、ボーカルのロングトーンをさらに遠くへぶっ飛ばすための起爆剤になってくれています。

アウトロで言えば、一番最後。先述した、「盛り上がった部分から急速冷凍して、また上げる」という細かい変化をここでも使います。この曲の音楽的部分(歌詞・ストーリーではなく)で言えば、ここが一番やりたかったともいえます。今回、一番最後になるギターのコード前に「リバースシンバル」という、シンバルを逆再生した「シーーーーーッ!」という音を入れました。このリバースシンバルの切れ目が全パートの着地点になるわけです。リードギターはずっと暴れていますが、ドラム・リズムギター・ベースが一回下がることによって、一旦しゃがんでもう一発…!というところをリバースシンバルでぶった切る…というアレンジ、ずっとやりたかったので叶ってよかったです。リードギターも一緒にしゃがむか相談しましたが、やっぱり一人だけずっと暴れてもらうことになりました。結果的には、アウトロの勢いを引き継ぎつつ、「しゃがむ→大ジャンプ(をぶった切る)」というオチに持っていくという意味でめちゃ良い感じになりました。

それからもう一つ。最初に「生音」の話をしましたが、この曲の中でアクセントとなっている2番のAメロのロール部分。あそこだけ、曲全体で使ったものとは違うスネアを使いました。基本、曲全体としては「くっきり、はっきり」したいわゆる「抜け」が良いスネアの音が欲しかったんですが、このロールはむしろ逆で、「サ~ッ」と流れていく感じにしたいなと思っていたので、2つのスネアを組み合わせればいいか、となりました。そして実際のレコーディングでは、通常のスネアを使って通しの音源を作った後、ロール部分を後から録ってはめ込む方法を採りました。(通しの時は、スネアは鳴らさずにここは足を刻んでるだけです。すごく変な感じでした)ロールはめちゃくちゃ練習しましたが、ミックスも相まってなんだかんだ良い感じになってくれました。

今回やった3曲の中で、一番神経を使ったのがこの曲でした。自分の曲なのもあるけど、自分の曲の中でもとりわけ思い入れが強かったので、なんとか自分の理想とするものに近づけたい!というこだわりと、時間の制約との折り合いをどうつけようかな…と思いながら臨みましたが、メンバーの見事な手際で、バンド録音からコーラス・ボーカルまで順調に進み、時間内でとってもいい作品を作れたと思います。メンバーに改めて感謝です。

終わりに

この他の2曲にも、そして今紹介した3曲にも、同じようなこだわりポイントがある……かどうかはわかりませんが、とにかく全5曲、本当に素晴らしい曲が集められた作品であることは間違いありません。
また、SoundCloudでは2019年verのコンピレーション・アルバムが配信されているので、そちらも是非聴いてみてください。
長くなりましたが、お付き合いいただきありがとうございました!