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スプリンターの初期加速にはスネの角度が大事??

どうも、阪本です。
久しぶりに論文レビューです。

先日、ツイッターにてこの論文が紹介されており
気になって読んでみたので共有します。

ちょっとその前に・・・

スプリントは、①加速期②最大速度期③減速期
に大別されます。(Meroら、1992;Volkov&Lapin、1979)

スプリントの最初のステップは
最大の前方加速が観察されるときであり
加速の大きさは連続するステップごとに漸減します。
(Nagahara et al.、2018a)

この初期加速段階において、アスリートは通常
第4ステップの終了までに最大速度の約70%に到達します。
(Nagahara et al.、2020、2021、2014)

この加速を達成するためには
①大きな地面反力
②それに付随する衝撃
が必要です。
また、加速段階におけるハイパフォーマンスの重要な要素は
外力ベクトルの効果的な方向付けとされています。
(Morinら、2011; Rabitaら、2015; Samozinoら、2016)

この「技術的能力」は一般的に力比(RF)によって定量化され
これはステップ平均した結果の
地面反力ベクトル(FR)水平方向(FH)に向く割合を表す
すなわちRF=FH/FRとなります。(Morin et al.、2011)

概要

さて、まずこの研究ですが
RFと関連する運動学的特性が初期加速のパフォーマンス全体とどのように関連するかを定量化すること
を目的としています。

その背景には
・RFがスプリント加速パフォーマンスの決定要因であるということは確立されているが(Kugler & Janshen, 2010; Morin et al., 2011; Rabita et al., 2015)立脚および全身のキネマティクスと加速中のRFの関係は不明
・加速時のパフォーマンスや水平推進力の生成に有利と考えられる運動学的特性が強調されているが(Bezodis et al., 2017, 2015; Jacobs & van Ingen Schenau, 1992; Kugler & Janshen, 2010)、これらの運動学特性とRFの関係は直接調査されていない。
・立脚の初期に全身CMの前方移動を補助する体節の配置を変更することが、パフォーマンスにとって有利である可能性を示唆したが定量化されていない(Jacobsとvan Ingen Schenau,1992)
などがあります。

そこから2つの仮説が立てられています。
仮説①:タッチダウン距離が負であるほど(すなわち、立脚足がCMより後方にある/前方にない)、最大努力スプリントの最初の4ステップで大きな力の比に関連し、特定の関節およびセグメントの角運動がこれを支えるであろうという仮説
仮説②:タッチダウン距離が負であればあるほど、初期加速性能が向上するという仮説

研究デザイン

【参加者】
・大学レベルの男子スプリンター14名
(平均±SD;年齢20±1歳、身長1.73±0.07m、体重68.6±4.9kg、100m自己ベスト11.15±0.33秒[min = 10.68 s; max = 11.67 s])
・参加者は全員、データ収集時の怪我なし
・週5日のトレーニングを行っていた
・スプリントトレーニングの経験は8.1±1.8年(範囲=5~10年)
※すべてのデータは、シーズンの競技段階である 2020 年 8 月上旬の 11 日間にわたって収集した(5 月以降、COVID-19 の大きなトレーニング制限はなく、国内競技は 7 月に再スタートしていた)

【方法】
・参加者は、各自が希望するウォームアップを行った
・参加者の好みに合わせてスターティングブロックを設置した後、屋内陸上競技場でスパイクシューズを着用し、60mまでの最大速度のスプリント競技を2回実施した。
・参加者は、短距離走の間に少なくとも10分間の休息時間を設けた
・気温31.3±0.9℃、気圧1010±2kPa、10日間、5回のセッションを行い、全データを収集した
・16台のカメラによるモーションキャプチャシステム(Kestrel 4200, Motion Analysis Corporation, California, USA)を用いて、各参加者に取り付けられた47個の再帰反射マーカーの3次元軌跡を250Hzで取得した(足首、膝、股関節など)
・カメラは4歩目終了までのデータを取得するように配置し、マーカーはSuzukiら(2014)のモデルに従って配置した
・地上反力(GRF)データは、軌道下に直列に取り付けられた52枚のフォースプレート(TF-3055、TF-32120、TF-90100、テック技研、宇治、日本)から1000Hzで収集された

結果

RFMEAN(最初の4ステップの各RFの平均)と4つのステップの正規化されたタッチダウン距離の相関係数は大きく、有意であった(r = -0.672, p < 0.01)。
その負の方向は、タッチダウン足をCMより後ろに置く(または加速段階が進行するとCMより前に置かない)ことが高いRFと関連していたことを示す。
また、平均ステップ頻度とRFMEANの間には、非常に大きな有意な相関係数が認められた(r = 0.715, p < 0.01)
初期加速段階において、足関節背屈RoMの平均値とRFMEANの間には非常に大きな有意な相関係数が見られた
タッチダウン時の足部およびスネの平均角度とRFMEANの間には、非常に大きな有意な相関係数が見られた(それぞれr = -0.724および-0.764、いずれもp < 0.01)。これらの係数は負の値であったため、RFMEANが高いほど、足部およびスネの近位端がより前方に向いていることと関連

という結果であり、研究仮説が支持される結果となりました。

結果からの考察

初期加速段階において、タッチダウン時のCMに対して立脚足をより後方に配置することは、平均RFが高くなることと有意に関連することが分かりました。練習生はタッチダウン距離の操作に集中する際に立脚下部がどのような姿勢になるかに特に注意が必要そうです。

また、タッチダウン直後、足首の背屈可動域(または、スネの前傾角度)が大きいことも、平均RFが高いことと有意に関連しています。
※主にすねの向きの変化により達成された可能性が高いことが示唆される

足首背屈が、立脚期の進行とともにCMを足から離して「拡張」させる前の初期立脚期にCMを足について前方に「回転」できる主要手段かもしれないとされています。

まとめ

今回は

こちらの論文をレビューしました。

改めて、足関節の運動の重要性に気づくことができました。
様々なスキルがあるかとは思いますが、そもそもの身体要素を
いかに整えるがが重要ですね。

こんなイメージ


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