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「世界からの押し返し」

千葉県の松尾英明先生が紹介されていた『「叱らない」が子どもを苦しめる』(薮下遊・高坂康夫 ちくまプリマ―新書)を読みました。
著者の薮下さんは,学校現場で働いているスクールカウンセラーです。
この本の中で,気になった言葉が「世界からの押し返し」という言葉です。
現在の子どもは,「世界からの押し返し」された経験が少ないというのです。
柔らかく言えば,良くないところを指摘される経験が少ないことで,不適応などの問題が起こっているのです。

子どもたちは「世界からの押し返し」が少ないために,「思い通りにならない環境」「万能的な自己イメージが毀損される状況」「自信の無さが露呈する状況」を回避するようになります。

(前掲書P94)

自分の子どもの頃を思い出すと,父親が壁的な存在でした。
「ダメなものはダメ」という壁です。
この壁を経験したことで,世の中には思い通りにならないことがあることを教えられたのです。
そして,その後で,母親がなぐさめてくれました。
つまり,壁となぐさめで子どもの頃を生きてきたのです。

現在は,壁とまでは言いませんが,自分のわがままを押し返されることが少ないのです。これを薮下先生は「世界からの押し返し」と言われていると思います。
最後に,我々教師が出来そうなことが書いてありましたので,一例を紹介します。

授業中に子どもたちが間違えた箇所について,「消しゴムで消させない」「間違えた答えを残したまま,正しい答えを書く」といったことが考えられます。(中略)間違った箇所をそのまま残すことで,きちんと「間違った自分と向き合ってもらうわけです。もちろん,「間違えるのは大切なこと」「間違いと向き合って,考えていくことが大事」という姿勢を教師がもちつつ関わることが前提になります。

(前掲書P260)

いろいろなケースも具体的に紹介されていますので,学校現場で悩んでいる先生たちに,是非読んでもらいたい1冊です。