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高齢化が進んだ団地でのコミュニティガーデン~はじまり編~

都市には、建設から既に50年を迎えている大型の団地がたくさんあります。そこでは、高齢化は半端なく進んでいる物件もあります。また、その中の賃貸物件には、立地のわりに家賃が安いことから、外国人がたくさん住んでいたりもします。「高齢化による引きこもり傾向」や「外国人居住者との言葉や文化の壁」から、居住者間の意志疎通が図りにくくなっている団地は、都市が抱える課題のひとつとなっています。

このような団地で、「居住者どうし」あるいは「賃貸オーナー兼管理者と居住者」の関係づくりのために始めたコミュニティガーデンがあります。ご紹介します。

1. 関わるきっかけ

花壇の活動は、団地の中で以前から行われていました。この団地には、自治会から「花壇スペースを貸してほしい」という要望があると、管理者と自治会の間で協定を結んで、花壇活動ができるという仕組みがあり、それを活用したものでした。

しかし、みんなで楽しく活動しようと始めても、メンバーの意識のすれ違いなどが起きて活動を続けることが難しくなる時があります。

そんなときに、コミュニティガーデン・コーディネーターとして相談を受けたのが、団地と関わるきっかけとなりました。

2.   現状把握と課題解決に向けて

まずは、現状把握のために何が花壇活動を巡って起きているのか?それだけでなく、団地全体で今何がおこっていて、団地そのものがどういう方向へ進みたいのか?などについて、各方面の方からのヒアリングを行いました。

せっかく始めた花壇活動であり、やりたい人が多い中で全部を無かったことにしてしまうのは、もったいないように感じました。みんなが納得できて、気持ちよく続ける方法もあるのではないか?と、花壇活動を止めることも選択肢のひとつに置きながら、管理者や居住者との話し合いを続けました。

その結果、今までとは違う別の場所、団地の顔となるような場所で、環境整備活動の一環としてもう一つの新たな花壇を始めることになりました。

その目的は、団地の顔である場所を美しくすること、けれどもそれが一番の目的ではなく、この取り組みを通して、①高齢者が中心で疎遠になりがちな居住者のコミュニティを育てていくこと、もう一つ、②団地に住んではいるけれど昔からの居住者とは言葉や文化の壁があってやりとりできない外国人との交流も育てて行くことになりました。(最初からコミュニティガーデンをしたい!という依頼で無く、地域の課題への相談という形から入ることも多くあります。)

3.最初の一歩

決まった新たな花壇の場所は、駅からまっすぐ団地に入って目の前にある植え込み。今までは、わずかに残った樹木とイネ科の草があるだけで、少し魅力に欠ける場所でした。だからこそ、ここを美しく変身させて、維持することは、関わる方たちの気持ちに張り合いを与えてくれるのではないかと考えました。

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日本語と中国語の2種類のチラシを作り配布。日程は、1年に1度の防災訓練と同じ日に設定し、通りがかりの人に声をかけて、1株でも植えてもらって、参加の体験を一人でも多くの方にしていただこうということになりました。

限られたメンバー内でなく、自治会から広く団地の居住者に呼びかけて行う花壇活動は初めてで、人が集まるかどうかは当日にならないとわからない状態。天気予報もいまひとつで、少しでいいから参加してくださる方がいるといいなぁと思っていました。

しかし、いい意味で予想は裏切られました!予定時間の30分前には、これまでヒアリングなどをさせていただいたりして見覚えのある、団地にお住まいの高齢の(主に)女性たちが「花、植えるんでしょ!」と続々集まってくださり、「植えていいよ」と許可が出るのを今か今かと待っている状態が出現していました。

みなさんの「やりたい!」の制御がしきれなくなり、ご挨拶もそこそこに、最初のガーデニングイベントは始まりました。20個用意していた移植ゴテは全く足りず、「これも植えていい?」を連発するお姉さまたちに、「待って」と「いいよー」を繰り返し、参加されたみなさんの「花を植えたい!」という勢いに終始圧倒されながら、イベントは終わりました。

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4.   外国人の方の参加

当日は、管理者の中国語の通訳の方も応援に駆けつけてくださいました。その方が中国人の方にも声をかけてくださって、数人がさらに何人ものお友達に声をかけてくれて、最終的には10人ほど参加してくださいました。最初は「私たちが手を出してもいいの?」という感じで躊躇されていましたが、後半はどんどん勢いがついて、日本人も中国人も関係なく、協力し合って見違えるような花壇が誕生。

一緒にお花を植えた「仲間」のような一体感が生まれたので、急遽、「お茶とお菓子をみんなでいただき、自己紹介をしあう」という時間を持ちました。日本人と中国人は全く知らない人どうしでしたが、雰囲気がよくなり、握手を交わすこともできました。

5. 花を植え終わったときの笑顔

終わった後、80代半ばくらいの普段は物静かな感じの女性は、「お花が大好きなの!今日はほんとにほんとに嬉しかった。ありがとう。ありがとう。」と何度も笑顔で言ってくださったのが印象的でした。

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イベントに先駆けてヒアリングも兼ねて何人かの方に集まっていただいた時には「ワクワクすることなんか何にも無いわ!」とお話しされていた人生の先輩のお姉さま方たち。(80代以上が多い??)花を植えているとき、植え終わった後の、それは楽しそうな笑顔とのギャップが大きく、本当にびっくりした日となりました。

この花壇活動は、1年半たった今も、月に一度のペースで続けられています。その間にどんなことが起きたのかはまた別に紹介します。

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