仮面の告白

著者:三島由紀夫
出版社:新潮
初版:昭和25年

あらすじ

女ではなく男を、それも死の友としての男に恋する私は、生まれてからずっと秘密を抱えて生きている。やがて自分も年頃の男として、女と恋仲になる。しかし上手く事は進まず、私は普通から遠ざかる。本音と建て前の中で発生する心理を描いた小説。

印象に残ったセンテンスなど

近江への恋の場面。剛胆な男への恋は、誰をも乙女のように見せる。
園子と恋仲になる場面。私の感情は冷めた普通の男子と相似だろう。

巻末の解説など

福田恆存:三島にフォーカス。小説家と小説の関係は扮装家と衣装だ。表現によってのみ正直になれるのだ。小説家の本音はフィクションの中で析出する。
中村文則:世界文学の達成の一つだ。この作品は未満の状態で存在する性を文学化した傑作であるし、他の三島作品にみられる思想が点在する。

感想

テーマとして主人公のセクシャリティがあるため、内容も恋愛・性愛がほとんどを占める。といってもおおっぴらにできる想いではないし、現代よりも自由恋愛の比重が大きくなかった時代背景もあってか世間体や建て前が恋愛感情と絡まりあって混然とした悩みになっている。学生時代の近江に対する想いなどは叶わないという前提の下で一種美しい恋愛譚のような見た目であった。

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