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小説「月の男」

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10年以上前(!)に「ジャンプ小説新人賞」で最終候補に残った作品です。 全12話、約85000字です
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【完全版】月の男 第1話

白い。どこまでも白い世界。 あたり一面白い砂で、私はその中に埋もれていく。 まるで砂時計の…

鳥里らも
1年前

【完全版】月の男 第2話

あの絵画は今朝も相変わらず、階段の踊り場に飾ってあった。黒い男は変わらずこちらに背を向け…

鳥里らも
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【完全版】月の男 第3話

「あっちゃん、大丈夫? 災難だったね…。」  私たちは武道場を出て、水飲み場で篤子の肩を…

鳥里らも
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【完全版】月の男 第4話

目が覚めると私は、白い砂の世界に横たわっていた。 ただ、今日の「月の世界」の様子は違って…

鳥里らも
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【完全版】月の男 第5話

 今日の夢の中の光景は、いつもと少し違っていた。 一面の砂に覆われた、平らな大地だったは…

鳥里らも
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【完全版】月の男 第6話

ガラッ。 私は窓を閉めて、レースで出来たカーテンも閉めた。部屋の中は薄暗くなったが、かと…

鳥里らも
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【完全版】月の男 第7話

 その後、私は、こっぴどく叱られたり、過剰なまでに心配されたり、執拗に部屋にいた理由を尋ねられたりした。徹夫も、部屋から逃げ出すところを見られていたようで、私と並んで質問攻めに遭っていた。徹夫はどうやら、逃げる拍子に、靴もカバンも置き去りにしてしまったようで、手ぶらで足には靴下のみだった。徹夫はほとんどしゃべらなかった。私は、「徹夫がいじめられて落ち込んでいたので、前に見たいと言っていたランプを見せてあげようと思ったのだ」と言い繕った。徹夫が無事だった安堵感と、巻き込んでしま

【完全版】月の男 第8話

みんなはまだ武道場にいるようで、更衣室に戻ってきている部員はいなかった。もしかすると、み…

鳥里らも
1年前

【完全版】月の男 第9話

 目が覚めるともう朝だった。私は半日近く眠っていたらしい。朝食を食べに食堂へ降りると、す…

鳥里らも
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【完全版】月の男 第10話

 会場に着くと、出場選手や各校の応援の選手たちが、すでに集まり始めていた。私はひとまず売…

鳥里らも
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【完全版】月の男 第11話

 控室のあたりには、もう選手たちの姿はほとんどなかった。みんな、開会式のために試合場に行…

鳥里らも
1年前
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【完全版】月の男 第12話(最終話)

  さらっ。  体を起こそうとかすかに腕を動かすと、その下に敷き詰められていた白い砂が袂…

鳥里らも
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