見出し画像

モノ作りの考え方 #6

長さと強度の関係

もう四半世紀前ですがバイクのクラブの仲間と、「ヨシムラ/カヤバのフロントフォークを逆輸入しようか」という話が持ち上がりました。日本製だけれど、外国為替のレートのせいで逆輸入した方が安くなる場合もあったからです。
もっと動きの良いフロントサスペンションにしたい、という願望がありました。その当時は知りませんでしたが、静電気の帯電でオイルの粘度が上がり動きが悪くなる(トヨタの特許文献より)。サスペンションが動くだけで摺動摩擦で静電気が発生します。静電気を除電しないと電圧が上昇して行って1.000V以上になるそうです。それに伴いオイルの粘度が高くなる、当然動きが悪くなるのです。これは外国製の高級サスペンションも同じです。
除電してあげるとスムーズに動く=良い走りが出来るのです。
このような事を書いているブログはまず、ありません。

その仲間は、オートバイは好きだけれど、メカニズムや部品の知識が乏しく、たまにとんちんかんな質問をして来ました。フロントフォーク インナーチューブは普通は鉄のパイプ製で、滑りが良くなるよう、また錆びにくいようにクロームメッキ処理がされています。

目で見て変化が分かったDAX125

それで、パイプの強度の話になりました。話のいきさつは忘れましたが、私が答えたのは、「同じ太さで、同じ材質で、同じ肉厚でも長さが違うと強度が違うんだよ」と説明しました。彼は、そういう知識がないので、納得するまで結構時間を割いたのを覚えています。
この強度とは、曲がりに対する強度です。木の棒に例えたら分かりやすいですが、例えば同じ木の太さ20mmでも、長さが20㎝の棒を折るのと、長さ1mの棒を折るのはどちらが折りやすいか、という事です。もちろん、短い方が折れにくい。つまり、同じ木の太さでも強度が出る訳です。
その例が、トラスフレーム構造で、スポーツタイプの自転車でも多く採用されています。トラスフレームは、一番早かったのが航空機で、理由は最短距離をパイプで繋ぐ事で、軽くて強度が出るからです。
昭和の時代、ヤマハの200ccのバイクで、そのトラスフレームだけを強調した広告で、「今はSDRとしか言えません」だったかな、そんなキャッチコピーで話題になった、2ストロークのバイクがありましたね。
逆を言えば、パイプの肉厚を薄くしても、長さが短く出来るならばより強度が出ます。その代表がトラスフレームという訳です。
余談ですが、昔、ホンダが当時の主流だった、ダブルクレドールフレーム(ステアリングステム下から左右に分けた2本のパイプにエンジンを載せる)を軽量化の為に、ダイアモンドフレームといって、”エンジン自体をフレームの一部にする”という時代がありました。1977年発売のHAWKIIからだったと思います。そうすれば、エンジンの脱着も楽、軽量化も出来ると考えたのでしょう。
除電の展示車のTL125が正しくダイアモンドフレームなのですが、実際の車体としての強度保持にエンジンを使うというのは,当時から疑問がありました。
自転車もそうですが、基本、フレームは歪まない方がいいという考えがあります。私は、少しなら歪む(振動を少し緩和する程度なら)方がメリットがあるのではないか、と考えています。
その理由は後に書くとして、当時乗っていたのは鉄フレームの750ccですから、今みたいにフレームが頑丈ではありませんでした。すごく怖い経験を3度ほどしました。
ある山の急な坂道を勢いよく(120km/h位か)登った時に、頂上に信号がありました。そこには2車線に赤信号で信号待ちの車が停まっていて、急ブレーキをかけたら、フレームが暴れたのです。今のバイクしか乗った事の無い人には分からないでしょうけれど、フロントとリアのタイヤが捻じれるような感じで、おまけに両側に車の列。危うい所で、車と車の間に入る事が出来ました。
もう一つは、ある都心の高架の下道で、かなりの急カーブ。そこに勢いよく入って行ったのですが、道路に縦溝が切ってありました。思ったより急カーブだったので、ブレーキをかけたら、フレームが捩れて暴れたのです。ホント、冷や汗が出ました。しばらくして、その同じカーブで前の経験を忘れて突っ込んで行ったら、また冷や汗です。
道に縦溝掘るのはやめて欲しいです。タイヤが細いほど、影響が大きいし、ましてカーブなんか事故を助長します。きっと、車の通行しか頭にないのではないでしょうか。”縦溝アリ、注意”の看板を立てて欲しい
昔、ホンダのNSXが発売された時にテストドライバーの間では、みんな「アルミのモノコックフレームなんて、使うもんじゃない」と言っていました。

元祖アルミモノコックフレームの初代NSX

その後、話した相手は誰かは忘れましたが、そのフレームの話になって、私も「あれはダメですよ」と言ったら、「通の人は、みんなそう言うんですよね」と返された事があります。
後で詳しく書くかも知れませんが、何でもかんでも最先端の素材にすれば良いというものではないと思います。使い分けとか、バランス、素材の特徴を上手く活用する。その結果、早くなるとか走行安定性が良くなるとか、乗り心地が良くなって、運転しやすくなるものでしょう?
昭和の終わりごろから時代は変わって、バイクはアルミフレームにエンジンを吊り下げるのが主流となり、自転車もアルミフレーム、そしてカーボンファイバーが登場しました。
ただ、予算的と静電気にカーボンファイバーはありませんね。カーボンファイバーの繊維自体は炭素だから電気を通します、ところがそれを固めている樹脂は電気を通さない。つまり電気を通さないからこそ、行き場がなくなった静電気が溜まる=帯電しているのです。
静電気が帯電するとフリースを脱ぐときのようにより無駄な力が必要になる、それが走りを悪くします。見栄えはいいですが、それを知っている人は殆どいないので、ブログで書いています。

微弱電流を流す樹脂で貼ったカーボンファイバー

仕事がら微弱電流が流れる樹脂が手に入るので、それを使って自作したオートバイのエアフィルターを除電仕様にしたものです。周りのネットは特殊な除電するネットです。静電気を取る事で空気の吸入効率が良くなり、アイドルアジャストスクリューを戻す必要がありました。
このように静電気の除電は効率を良くする事で、省エネルギーになる技術です。
除電の入口はタイヤです。いくらエンジンパワーを上げたところで、タイヤの性能が低ければ、いい走りにはなりませんね。
ホームページはこちらから。

https://tristars-tec.jimdosite.com/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?