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記憶の中の風景(8)

立川市富士見町への引っ越しは、ボクにとって生涯4回目の引っ越しだった。

結局ロフトは布団を敷いて寝る場所にした。天井でまでの距離が短いので寝ぼけて勢いよく起き上がると、頭をシコタマ打つ危険性がある。分かっていながらも慣れるまでに何度も頭をぶつけた。

真夏の太陽に灼かれた屋根の真下にあるロフト部分は灼熱地獄なのだ。朝は暑さで起こされる。昼寝なんてできたもんじゃない。夜になってもロフトの気温は下がらない。

この部屋は失敗だ。しかしまたすぐ引っ越すなんてできないので我慢するしかない。壁は薄くて隣の話し声やテレビの音が聞こえる。こんな安普請のアパートで家賃5万円とは、立川と言えどもやはり東京だ。

それに比べて熊本市黒髪町で住んでいた新築ワンルームは壁が厚くて家賃3万5千円。どう考えても熊本の方が快適だった。

冷蔵庫を持っていなかったボクは、真夏に冷たいものが飲みたくてもすぐには飲めなかった。飲みたくなったら徒歩2分のセブンイレブンに買いに行く必要がある。不便で仕方ない。

冷蔵庫がなくてもFAXはあった。会社の先輩に頼まれて、食品サンプルのモニターのアルバイトを引き受けたのだ。FAXはそのために必要ということで貸し出されたものだ。

仕事から帰ると、郵便ポストに食品サンプルが届いていて、アンケートがFAXで届いている。期限内に回答してFAXで送り返す。それだけのことだったが、なんだかとても面白かった。


つづく

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