台風
台風が近づいている。
小さい頃、台風は怖いものではなくひとつのイベントのようなものだった。
強い風が吹き、もの凄い雨が降る台風は楽しかったと記憶している。
しかしそれは巨大な台風がやってきたとき恐怖に変わった。
ボクの実家は九州北部にあり古い民家だった。
縁側の窓はまだアルミサッシではなく木枠にガラスの貧弱なものだった。
戸袋から出した雨戸ももちろん木製だった。
周囲に田んぼしかない実家の窓に強風が長時間吹き付ける。
縁側の窓は強風によりしなり今にも壊れそうになった。
母親は必死に窓を押し返した。
ボクと姉も母親にならって同じように窓を押し返した。
いつ壊れるか分からない恐怖と疲れにボクはうとうとしていた。