竜とそばかすの姫:わかりやすさとわかりにくさの間で

【はじめに】
超一流の作品は分かり易すぎてもだめだし、わかりにくくてもダメ。わかりやすさとわかりにくさのバランスは口でいうほど簡単ではない。
2週目見て気が付いたことをつらつら書いてみる

【2週目みてわかったこと】
後半の展開を理解するために必要なことは全て提示されている。ただ、全部か全部いちいち説明されているわけではない。

【わかりやすいポイント】
やっぱり仮想現実の<U>の世界だよね
近所の本屋に「竜のそばかすの姫」のガイドブックがおいてあったけど
「ベルと竜の表紙」
なんだよなー。
煽り文句は「あなたも<U>の世界で・・・・」
みたいな感じだったが、事前情報を持たずこの作品を見た後だとなんか違うんだよなー
表紙は「ベルと竜」でいいと思うけど、せめて裏表紙は「すずと忍」を書いてよ、この二人の関係性も物語の核だぞ?と

いやね、「竜とそばかすの姫」を見る前にGレコ劇場版3を4回も見たわけですよ、で、予告動画もみたわけですよ

Youtubeの動画をアップしましたが、いや、「アイーダとベルリが月の裏側まで行って、何か変な奴らがたくさん出てきて、やばいモビルスーツを使ってどんちゃん騒ぎする愉快な映画」って感じがして実際の映画もほぼその通りの展開だし、いや、最後は金星に行く船に乗り込むのか。菅野祥吾さんの「Gのレコンギスタの後半」→ドリカムの「G」の音楽の流れに合わせた映像のセンスがすごすぎる。映画の要約動画とはこのようにやるべし、という見事なお手本だと思う。冨野監督もこの広告動画、「動画をつなぎ合わせてこんな作品を作ってしまう、新時代の感覚を持つ若者が作った作品」も認めているぞ!
一方、「竜のそばかすの姫」はなんかそういう動画が「わかりやすく感動させる」ものになっていてなんか古くないですか?という感想は持った。そのあたりがなぁ、この作品に関して「反発」する層を作っているように見える。手っ取り早くVRを強調しすぎじゃね?と思わなくもない。

ちなみに、VRというか<U>の世界の映像はすごいとは思っています。2回目は物語の流れは頭に入っていたので、<U>の世界の映像をめちゃくちゃ堪能しました。ベルの歌はやっぱり最高だね!これだけで1200円払って映画館に来た価値があった。ただ、アクションシーンはGレコ劇場版3を見た後だと、ちょっとしょぼいと感じた(笑)。モブがたくさん集まってわーとわかりやすく吹っ飛ばされるのはちょっとダサいと思わなくもない。

【わかりにくいポイント】
すずとして生きている「リアルの世界」は派手な「U」の世界に比べて地味でなんか曖昧な描写が多いよう見える。位置づけがわかりにくい、だからアピールするポイントには向かない。でもねー、なんの先入観も持たないでこの作品を見た私にはすずとして生きている「リアルの世界」の描写がとても魅力的に映った。
作品の構成面を書くと
<Uの世界>→<リアルの世界>→<Uの世界>→<リアルの世界>・・・
みたいなつくりになっていて、これは閃光のハサウェイの
<アクションパート>→<会話パート>→<アクションパート>→<会話パート>
と同じ作りになっているように見える。ハサウェイのほうは<アクションパート>→<会話パート>の切り替えでハサウェイ、ケネス、ギギの関連がわかりやすく整理されるからめちゃくちゃ見やすい映画になっている、これが人気がある理由なんだろーな。

余談だがGレコ劇場版3の物語のつくりは「主人公達の移動する場所がどこか?」でわかるつくりになっている。図示すると

劇場版Gレコ3

みたいな感じ。
場所が移動するたびに勢力が増えて、しかも敵味方が変わるから状況を把握するのがすごい難しいんだよ、Gレコは! ああでも、モビルスーツ戦のテンションが高いから勢いで見れてしまうんだよなー・・・。

で、話を「竜とそばかすの姫」に戻すと
<Uの世界>→<リアルの世界>を行き来することで、「リアルの世界」のすずについて
1.母親の死によって歌えない
2.忍との関係
が徐々に変わっていくわけですよ
1.の影響が徐々に薄くなっていて、2.の影響がどんどん大きくなっていくわけですよ。
これが、ラストのすすが素顔で歌える伏線になっているなんて初見では気が付かなったぞ。あの場面、いつの間にか忍が「シーブックの母親的ポジション」にいるのがめちゃくちゃ不思議だったのだが、2回目の視聴であれこれ話がつながって納得したわ。
こんな繊細なシナリオコントロールする細田監督、本当にすごいと思いますよ。並みの監督なら物語が破綻してしまう。

【最後に】
私感で今夏に見た映画3作について「わかりにくさ」で並べると
閃光のハサウェイ<<<「竜とそばかすの姫」<=「Gのレコンギスタ劇場版3」なんだよなー。
「竜とそばかすの姫」を見たときに「この作品って賛否両論でそうだな」って感じたのは話の難度が「Gのレコンギスタ劇場版3」にだいぶ近かったからのかー。文章書いていて色々納得したな


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