杖立温泉〜別府〜小倉 2泊3日旅②
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目覚め
久々の旅行だったからか、少し体が重い。まぶたは開かないが、感覚だけがはっきりしてくる。昨日より弱い川の音…。ゆっくりと体を起こし、窓から川を覗く。水位は下がっており、川沿いの歩道がはっきりと見える。そういえば時間は?慌てて確認する。6時を少し過ぎた頃。まだ1時間以上余裕がある。ひとまず温泉に入り、頭を起こすことから始めよう。
温まって完全に目が覚めた。今日も明日も雨らしい。普段のニュースに挟まるCMが違うだけでも「自分、旅行してるなぁ」とよく思う。これも一種の旅情なのかもしれない。洗面所からぐるりと部屋を一周して忘れ物がないかを確認。旅行するとき、たいてい何か忘れてくるか、置いてくるかが多いのでここは念入りに。ひと通り確認したのち、旅館をあとにした。
出発の朝というのはいつも名残惜しくて、忘れたくない。一枚、もう一枚とシャッターを切っているとあっという間に時間になる。バス停に到着してからもう一度、杖立温泉の景色を目に焼きつけた。
日田市豆田町へ
行きは爆睡していたせいか、車窓からの景色が新鮮に思える。ずいぶんと標高の高いところまで来ていたんだ。景色に見とれていると、バスは日田駅へと到着した。
ここに来て雨が強さを増してきた。それにもかかわらず、折りたたみ傘すら持って来ていなかった。まずは傘の調達から始めよう。
雨をしのげるようになったところで日田市豆田町を目指して歩く。今日は豆田町商店街を歩き、次にバスで別府へ向かう。今日は別府で宿泊のため、別府到着後はフリーといった感じだ。
さて、ここ日田市豆田町は重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に指定されており、江戸時代の商家や土蔵が多く残っている。
歩いてみると、洋風建築もあったり、食べ歩きができるようなお店もあったりする。雨は依然として強いものの、人通りは多い。行き交う人たちを観察すると、黄色い袋を持っている。調べてみると日田醤油本店さんのものだということがわかった。早速行ってみると、醤油の他に味噌、羊羹を取り扱っている。かなりの種類の試食ができ、「醤油ってこんなに味が違うんだ」と驚きだった。どちらか言えば魚派、それも刺身が好きなので日田醤油寿司むらさきを買うことにした。とろっとしていて、しょっぱいというよりは甘さを感じる。今までに味わったことがない種類の醤油だった。
楽しい買い物を終えると少し小腹がすいてきた。目星をつけていたお店、鳥市本店さんで唐揚げ1カップを注文。想像していたよりかは確実に大きい。味がちゃんとしみていて、1つの満足感が高い。屋根のあるところで少しもぐもぐして、別府行きのバスへ向かった。
このあたりからバケツをひっくり返したような雨になり、かなり天気が悪くなってきた。遅れているとわかっていても、バスを待つ時間は長く感じる。足もとの水たまりはその大きさを広げている。バスが来たことを確認すると、安心せずにはいられなかった。
別府へ
雨に降られたのもあって、とにかく温泉に入りたかった。少し休憩もしたかったので、日帰り温泉のひょうたん温泉へ。初めて入った砂風呂がほんのり温かく、心地よかったのでかなり寝てしまった。
軽くなった足取りでチェックインを済ませ、まずは散策へ。グレーチングから、路地から、向こうの屋根から湯けむりが見える。鉄輪温泉全体がよく見える「みはらし坂」を上ると、煙の多さに驚く。立ち上った煙が曇り空を作っているような、曇天の景色だった。あとにも先にも、見たことがない光景だった。
せっかくなので、共同浴場へ行くことに。恐る恐る扉を開けると、地元の方と思しき先客の方がいたので、まずは挨拶。その後湯につかりながら、その方と少し話をしつつ温泉を楽しんだ。和やかな笑顔が特徴の、穏やかな人だった。熱さに限界を感じて先に出ると、体がひとつの層をまとったようにあたたかい。冬はもっと心地よいんだろうな…。温泉がすぐそばにある生活っていいな…。いつかは貸間に宿泊して、湯に入るだけのゆっくりとした旅もしたい。ただ、各地を見て回りたい自分にとって、それはもう少し後のことなのかもしれないけれど。
旅館に着くと今すぐにでも眠りたいということで頭がいっぱいになった。温泉で回復しているとはいえ、雨に打たれ、よく歩き、少し疲れたのかもしれない。明日訪れるのは杵築と小倉で、旅程は起きた時間次第。適当な時間にアラームをセットして、荷物をまとめたところで眠ってしまったようだった。