レガシー: 市川、《思考掃き》デルバーについて大いに語る。


《思考掃き》を投入したグリクシスデルバーをプレイし始めてかれこれ2年が経つ。

とあるカードショップで《思考掃き》と《グルマグのアンコウ》を採用したグリクシスデルバーを見たことから着想を得た私はグランプリ千葉2016、

グランプリ京都2018、

グランプリ静岡2018と、主にレガシーフォーマットのグランプリに向けてこのデッキを調整し、プレイし続けて来た。

正直なところ、《死儀礼のシャーマン》と《ギタクシア派の調査》がプレイ出来たタイミングでは通常のグリクシスデルバーと比較して、そこまでの優位性を感じなかった。

だが、《死儀礼のシャーマン》、《ギタクシア派の調査》に加えて環境を席捲していた青白奇跡の要である《師範の占い独楽》が禁止になり、他のデッキが弱体した現在、《思考掃き》デルバーは誕生以来初めての全盛期と言える。

私は自分の ある 程度の結果(本当にある程度で恐縮であるが)と、感触から実感している。

このデッキはレガシーでプレイに値するデッキであると。

私は、この《思考掃き》と《グルマグのアンコウ》をフィーチャーしたグリクシスデルバーを日本(というかニッチ過ぎるので多分世界)で一番理解している自信がある。

本稿では表題の通りレガシーでの私の相棒、《思考掃き》デルバーについて大いに語ろうと思う。


目次
■グリクシスデルバーとは、デルバーデッキの変遷
■グリクシスデルバーと《思考掃き》デルバーの違い
■《思考掃き》デルバーを選択する理由
■個別カード評価、採用が検討されたカードなど
■マッチアップ、サイドボーディングガイド
■おまけ:Tipsなど


■グリクシスデルバーとは、デルバーデッキの変遷

グリクシスデルバーとはその名の通りグリクシス(青黒赤)カラーで構成された、打消し呪文などを用いつつ相手を妨害しながら《秘密を掘り下げる者》などの軽量クリーチャーでビートダウンするクロックパーミッションである。

《秘密を掘り下げる者》が登場してからは《不毛の大地》と《もみ消し》でマナ否定戦略を絡めながらビートダウンするティムール(青赤緑)カラーのクロックパーミッションデッキ(カナディアンスレッショルド)で採用されているのが主流であったが、《死儀礼のシャーマン》の有用性が認識された辺りからそれを採用出来るカラーリングであるグリクシスカラーが台頭して来た。

同じ1マナのクリーチャーだがその差は歴然

その後も軽量クリーチャーで最大のサイズを誇った《タルモゴイフ》のお株を奪う《グルマグのアンコウ》の登場など、細かいアップデートが行われ、グリクシスデルバーはティムールデルバーを押しのけてレガシー環境最強のクロックパーミッションとして環境に坐したのである。

グリクシスデルバーと、ティムールデルバーの最も大きな違いは先ほど説明したように、ティムールデルバーは《もみ消し》を用いて相手のマナ基盤を遅らせる戦略(マナディナイアル)を取っているのに対し、グリクシスデルバーはそれを採用していないところだろう。

グリクシスデルバーは《ギタクシア派の調査》を採用し、相手の手札を確認して《渦巻く知識》や《思案》などのドローソースでの取捨選択を正確にし、綿密なゲームプランを練って、対戦相手とドッシリと相対する。

《ギタクシア派の調査》は《若き紅蓮術士》や《陰謀団式療法》との相性も素晴らしく、先手1ターン目《ギタクシア派の調査》から《陰謀団式療法》で複数枚持っている同一カードを捨ててしまうイージィウィンのパターンも存在する。

《若き紅蓮術士》から《陰謀団式療法》→《若き紅蓮術士》のトークンを生贄に捧げてフラッシュバックで《陰謀団式療法》をプレイは対コンボデッキでは必勝のシナジーで、相手のコンボパーツを根こそぎ捨てさせる事が可能だ。コンボプレイヤーの頭を大いに悩ませたことだろう。

《秘密を掘り下げる者》と《死儀礼のシャーマン》のレガシー最強の1マナクリーチャーを採用しながら、《ギタクシア派の調査》をベースにしたシナジーを持ち、リソースゲームも対コンボも上手く立ち回るグリクシスデルバーに隙は無いように見えた。

だが、それも永くは続かなった。

最初の項で説明した通り《死儀礼のシャーマン》、《ギタクシア派の調査》のレガシーでの禁止。

最強1マナクリーチャーの片棒を担っていた(というか《秘密を掘り下げる者》より強かった)《死儀礼のシャーマン》は環境から《剣を鍬に》され、デッキの中核を担っていた《ギタクシア派の調査》はみんなの記憶から《記憶殺し》されたのである。


しかし、《死儀礼のシャーマン》と《ギタクシア派の調査》を禁止されても尚グリクシスデルバーは一線級である。

《死儀礼のシャーマン》で失ったクリーチャー枠は《若き紅蓮術士》、《真の名の宿敵》、《グルマグのアンコウ》などの以前から採用されていたクリーチャーを増やし補填している。


《ギタクシア派の調査》、それとのシナジー込みで採用されていた《陰謀団式療法》のスロットは追加のドローソースである《定業》と、1マナの手札破壊である《思考囲い》か《コジレックの審問》が2~3枚程度採用されているのが基本となる。

このようにグリクシスデルバーは禁止カードの憂き目にあい、ダウングレードしつつも、環境に対応し未だにレガシーに於けるクロックパーミッションの王者として台頭しているのである。


■グリクシスデルバーと《思考掃き》デルバーの違い

このままでは「グリクシスデルバーの歴史」で記事が終わってしまうので、そろそろ《思考掃き》デルバーについての話をしよう。

最初の項でも説明したが、このデッキはそもそも某カードショップにふらりと立ち寄った筆者が、原型となるデッキをプレイしているところを目撃したことから始まる。

今でこそ赤単プリズンやエルドラージなどのフェッチランドを用いないデッキが出現したことにより採用されていないが、《もみ消し》で対戦相手の出足を挫き、《グルマグのアンコウ》を1マナで繰り出すデッキの動きはまさに私の愛したティムールデルバーを彷彿とさせた。

その軽快な動きに魅了され、今に至るのである。

従来のグリクシスデルバーとの大きな差分はやはり《思考掃き》だろう。

1マナのドローソースは定番の《渦巻く知識》と《思案》に併せて《定業》を2枚程度採用しているのが一般的であるが、それを廃し、《思考掃き》を4枚フル投入している。

これはまず《グルマグのアンコウ》をこちらも4枚フル投入しているところから起因している。

構成理念としてまず私は《若き紅蓮術士》や《真の名の宿敵》などの2マナ以降のクリーチャーを極力採用したくないのがある。

重たいクリーチャーは初手にあればあるほどそれだけで(特に対コンボ戦)リスクであり、大量の2マナ以降のクリーチャーを採用することに疑問がある。

高いマナ域のカードは《目くらまし》や《不毛の大地》との相性が悪く、デッキの動きを損なう事もある。勿論相手の《不毛の大地》によってプレイターンが遅れることもある。

「《グルマグのアンコウ》は確かに1マナで出るかも知れないけれど、1ターン目に出なければ意味がないのではないか」

と疑問に感じる読者もいるだろう、答えよう、意味はある。

デルバーデッキは、多分みなさんが思っているほどに初動、短期決戦に重きを置いたデッキではない。

ドローソースを重ね、手札の質を高めつつ《目くらまし》や《不毛の大地》などで相手を妨害する。

その過程で、3ターン目くらいにクリーチャーをプレイして、ダメージを重ね出しても遅くはないのだ。

ただ、そのクリーチャーをプレイするターンにフルタップになるのにはリスクがある。

メインボードであれば《呪文貫き》、サイドボード後であれば《紅蓮破》が手札にあるのであれば致命的な呪文に構えて動きたいだろう。

常に構えて動きたいクロックパーミッションというデッキの性質上、1マナと2マナ、3マナの差は致命的なのである。

構えて動きたい、という理念であるからしてインスタントとソーサリーの差は大きい。

《定業》は得られるリターン(占術2とドロー)に対してソーサリーというキャストタイミングの重さは釣り合わない印象だ。

その点《思考掃き》は単体で使用するとただのキャントリップであるが、インスタントという軽さが魅力で、各種1マナ呪文と合わせて構える事が出来る。その為手札に複数枚来てダブつく感覚はない。

勿論、《思考掃き》をドロー出来ていれば《グルマグのアンコウ》を早いターンにプレイすることもできる。

《思考掃き》とフェッチランドが2枚があれば、1マナのスペルと合わせて2ターン目に《グルマグのアンコウ》を1マナでプレイすることが可能だ。

1ターン目《思考掃き》、2ターン目《稲妻》で相手の脅威を排除し、《グルマグのアンコウ》とプレイしビートダウンを始める事はこのデッキ以外には適わないだろう。

■《思考掃き》デルバーを選択する理由

《思考掃き》デルバーの長所は、軽量ドローソースの豊富さから来る安定性である。

従来のリストであれば除去の6枚目(《二股の稲妻》など)、手札破壊の3枚目(《コジレックの審問》など)、《若き紅蓮術士》や《真の名の宿敵》などの2~3マナのクリーチャーなどが入っているスロットに《思考掃き》が入っているので、その時々で必要なカードを探しにいくことになる。

除去も手札破壊も、対戦相手や状況に依って敗着になることが多い。

《二股の稲妻》は対青白奇跡などのコントロールデッキやスニークショーなどのコンボデッキに弱く、《コジレックの審問》は対ミラーマッチなどのトップデッキ勝負になるゲームでは引きたくないカードと言えるだろう。

これらの除去スロット、手札破壊スロットは果たして現在何枚が適正かをプレイテストし、判断した結果必要最小限の枚数で抑え、あとはドローソースで埋めることにしたのである。

《思考掃き》は《渦まく知識》や《思案》などの他のドローソースと組み合わせる事が通常の使い方となるが、それはみなさんの想像しているより強力だと考える。

《思考掃き》を用いることによって3枚目以降のフェッチランドをプレイしなくても《渦まく知識》や《思案》で仕込んだ、或いは見た不要なライブラリートップをドローしなくて済むという事は、リソースが重要な《秘密を掘り下げる者》デッキに於いて、リソースを1枚獲得していることに等しいからである。

《死儀礼のシャーマン》の退場→2~3マナ域のクリーチャーを採用と、マナクリーチャーの不在と平均マナが上昇したことに起因して従来のグリクシスデルバーは19枚目の土地を採用する傾向にある。

デッキの構築のベクトル上やむを得ないとは思うが、《思考掃き》デルバーとは全く逆の方向にデッキが伸びていったと言っても良い。

「土地を伸ばして高いマナ域のカードをプレイする」が従来のグリクシスデルバーのベースであれば、《思考掃き》デルバーは「土地を絞り軽いカードをプレイする」がデッキの方向性である。

また、禁止になった3枚のカードも《思考掃き》デルバーにとっては追い風といえる。

《死儀礼のシャーマン》は対戦相手にプレイされ、除去出来ないと《グルマグのアンコウ》のプレイターンが遅れ、通常のデッキよりも《死儀礼のシャーマン》にイニシアティブを握られてしまっていた、

《ギタクシア派の調査》は《若き紅蓮術士》と組み合わせて出てくるトークンに《グルマグのアンコウ》は難儀していた。

《師範の占い独楽》はやや不利であった青白奇跡を大幅に弱体化し、マッチアップ相性を五分以上に改善出来たと言える。

《師範の占い独楽》の代替として採用されている《先触れ》はマッチアップガイドでも触れるが(《先触れ》だけに)、《思考掃き》の格好の対象になる。


まとめると

□豊富なドローソースによりデッキが安定している。

□禁止カード3枚により相対的に強化。

以上2点が《思考掃き》デルバーを使用する理由だ。


■個別カード評価、採用に検討されたカードなど

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