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ドゥムキー 編曲の妙

もうすぐ家族が主催するピアノ教室の発表会があります。

発表会では全てのプログラムが終わった後、講師演奏が予定されているのですが、今年の講師演奏は、ドボルザークのピアノ三重奏曲第4番 ドゥムキーの4手版、ピアノ連弾となっています。

ピアノ連弾版はあまり録音がなく、協演者との合わせ以外では、チェコのスークトリオの演奏するピアノ、ヴァイオリン、チェロの三重奏曲と合わせてさらったりしているようです。

私がドゥムキーを知ったのは最近のことで、室内楽のリサイタルへ行き、その演奏曲目になっていて、そこで初めて聴いたことがきっかけでした。

4手版については、三重奏曲の作曲者本人、ドボルザークが編曲に取り組んで出来上がった曲だということです。

楽譜(※)がどんな風に書かれているんだろうと思って見てみると、ピアノに向かって左側の奏者セコンドと、右側の奏者プリモの譜面が見開きで左右それぞれに分かれて書かれているので、セコンドの人は左側のページだけ見ていればいいので、見やすいのでした。私は演奏しないので、こういうことをあまり知らず、新鮮です。

※ヘンレ版

トリオ3人分の演奏がどんな風にデュオ2人分に分かれているのかなと思って聞いてみると、ヴァイオリンパート(高音部)がプリモ、チェロパート(低音部)がセコンド、ピアノはそれぞれにという感じかと思いきや、そういう訳でもなく、セコンドがヴァイオリンパートを演奏する箇所もあるとのことでした。

4手版の演奏がYouTubeに載っていないかな?と思い調べてみると、素敵な演奏を見つけました。

イタリアのクリスティーナ・パルマス、ルカ・パルマスの兄妹デュオの演奏です。


2009年兄妹による6楽章演奏の抜粋映像


セコンドがプリモを飛び越えて右側の鍵盤を弾いたりして、完全にクロスしていますね。

上は抜粋映像ですが、
カットなしの第6楽章の演奏をスークトリオの三重奏と、パルマスの二重奏とで並べてみます。

スーク・トリオの三重奏

パルマスの連弾



パルマスのドゥムキー全曲を通してのリンクはこちらです(↓)

三重奏と比べて全体的にきらきらしていて、美しい印象を受ける演奏になっています。テンポを落としてゆっくりと旋律を奏でる部分で印象の違いが大きくなるように感じます。弦楽器は音をどこまでも延ばして弾けるのに対して、ピアノは音を延ばし続けられないことが曲の印象の違いにつながってくるのかなと思います。

第1楽章の始まりに近い部分のところなど、ドボルザークはゆっくりした場面で、4手版のピアノの音を増やして楽器の違い、原曲の音と音の間を補完するようなことをしなかったことで、残響が長く続く静寂を感じるようなフレーズができるなど、この2曲の演奏から受ける印象が異なってくる効果につながっているように感じます。



ドゥムキーは、ウクライナの哀悼歌ドゥムカの複数形とのことで、この曲は哀愁漂う演奏がドボルザーク本来の味わいだと思われますので、スークトリオの演奏がそういった抒情にあふれていて、素晴らしいなと感じます。


発表会の方は、プログラムの数が多くて長丁場になりそうですが、ドゥムキーはパルマスのデュオとはまた違う演奏になると思われ、その演奏がもうすぐ聴けるのを楽しみにしたいと思っています。

リサイタルではないので、全楽章を弾く訳ではなく、この6楽章の中でどの楽章をいくつ組み合わせて演奏するのか、という組み合わせ方も人それぞれに好みが分かれる、悩ましい部分かなと思うので、準備段階ではそういった点のおもしろさもあります。


他にも、引っ越しで今回の発表会が最後の演奏になる生徒の方がいらしたりするので、これまでご縁のあった方の演奏も思い出として残るように楽しんで聴くことができたらいいなと思います。


スークトリオのドゥムキー全楽章へのリンクも付けておこうと思います。



よろしければお楽しみください。


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