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議決権と経済的利益の分離のための家族信託

家族信託の活用領域の中で大きな可能性を秘めている「事業承継」
今回は、家族信託×事業承継の事例の中から、
【議決権と経済的利益の分離のための家族信託】についてご紹介していきます。


お客様の前提条件

今回の事例はクライアントとなる、A社(仮)の現社長(70歳)よりご相談をいただきました。

現社長のご相談は
「議決権は次期社長(55歳)に渡したいが、配当は今後も自分やその家族が受け取っていきたい」といった内容でした。

株式については、贈与や売買も検討したそうですが、当時は株価が高い状態だったため、他に方法はないかとご相談に至りました。
現社長としては、一代で築いた会社であるため、議決権は次期社長が行使していくとしても、配当はご自身の老後のためや配偶者や子どもが将来的にも貰えるようにしたいと考えており、
一方、次期社長は、株式の所有にはこだわらず、議決権さえあれば良いと考えていました。

現社長が退任後も配当金を受け取るには

上記の前提条件を踏まえ、家族信託をご提案し以下のように取り決めを行いました。

<信託財産>現社長の保有する自社株式
<委託者 兼 受益者>現社長
<受託者>次期社長

こうすることで、現社長が受益者となるため、信託後も現社長が配当金を受け取ることができます。

現社長が亡くなった後でも配偶者や子どもが配当金を受け取るには

この場合に活用できるのが、受益者連続型スキームです。

家族信託では、
財産を預けた方(現社長)が亡くなっても、信託は終了せずに継続していく、という内容を定めることができ、当該信託の受益権を次の世代へと引き継ぐことができます。

つまり、受託者連続型スキームを活用することで、現社長が亡くなった後、現社長が持っていた受益権を家族に引き継がれるようにすることができるのです。

そうすることで、現社長が亡くなったとしても配当をもらう権利(受益権)は配偶者や子どもに承継され、次期社長が議決権を行使しながら、配当は現社長の配偶者や子どもがもらい続けることができます。

現社長が、退任後も重要な決議においては議決権を行使できるようにするには

信託契約の中で経営に重大な影響を及ぼす決議(解散や組織再編、合併、事業譲渡など)に関する議決権行使に関して現社長に「同意権」や「指図権」を付与することで、信託による事業承継後においても現社長の影響力を残すことができます。

信託をした後は原則、議決権を行使する権利は全て次期社長へと移ります。
解散や合併など、現社長の意図しない判断を次期社長がする可能性も考えられます。

こういった会社の根幹を揺るがすような決議において、議決権を行使する場合、現社長(=財産を預けているオーナー社長)に同意をもらう必要がある、と信託契約書に定めておくことができるのです。
こうすることで、次期社長の行き過ぎた判断に歯止めを掛けることができます。

ですが、現社長が認知症などにより意思能力を喪失してしまった場合、同意が得られずに会社運営が滞ってしまうことになります。
このような事態が生じることを避けるため、現社長が認知症になった場合は「同意を得る必要は消滅する」ことも併せて定めておきます。

上記のように議決権の行使についてある程度自由に定められるのが家族信託の特徴です。
ご相談者様の望みを叶えるために、どんな契約内容を組むことができるのかを押さえておきましょう!

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