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令和五年の相続法改正により新設される遺産不分割契約制度について

■令和5年相続法改正の影響 

相続登記義務化に伴う法改正によって、相続法も一部改正されます。
--<改正点>-----
①相続開始後10年経過後は、寄与分、特別受益などの主張ができなくなること
②遺産不分割契約制度が新設されること
③相続人不存在の手続きの変更がされること

今回は、『②遺産不分割契約制度が新設されること』を解説していきます。

■遺産不分割契約制度とは?

遺産不分割契約制度とは、
【相続人の合意により、
遺産分割を一定期間行わない旨の契約ができる制度】
のことです。
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民法 第908条
2 共同相続人は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。
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不分割制度に関しては、
古くから「共有物不分割制度」が存在していました。

しかし、相続の場面では、
遺言または裁判所による分割の禁止が規定されているだけで、
協議による分割の禁止は明記されていませんでした。
(解釈によりできるとされていました。)

そこで、今回の改正で協議によっても分割ができることが明記されるに至りました。
それでは、今回新設された「遺産不分割契約制度」の利用が想定されるケースを考えていきます。

①現状の共有者間での利用状態を、
 共有者の相続発生後も一定期間維持させるため

⇒遺産分割をしてしまうと、共有していた状態が変わり、
現状の利用状態が崩れかねません。
そのような資産の管理・運用上好ましくない場合に、
その利用状態を一定期間保つために「遺産不分割制度」を活用します。

特に、遺産が多く、分割方法について慎重な検討を要する場合などには、
いたずらに分割を進めてしまうことを防止することに役立ちます。

②任意での換価分割(共有物全体での売却)に全員で合意はしたが、
 売却が完了するまでに時間を要する場合

⇒共有者の一人は合意を裏切って単独で売却をしてしまうことが発生しないよう、一時的に「不分割」とすることができます。

■おまけ 令和元年に新設された「配偶者居住制度」とは?

令和元年の相続法改正により「長期の配偶者居住権」が新設されました。

配偶者居住権とは、建物の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考え、
夫婦の一方が亡くなった場合に、
亡くなった人の所有していた建物に残された配偶者が亡くなるまで、
または、一定の期間無償で居住することができる権利です。

配偶者居住権は遺言、または、遺産分割協議のいずれかで設定することができます。

ーー◎遺産分割協議で配偶者居住権を設定する場合の記載例ーーーーー
第〇条 A(配偶者)は、下記の建物の配偶者居住権を取得する。
    なお、存続期間が本日からAの死亡までとする。

   【物件の表示】
 
     ・・・・・・・


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最後までお読みいただきありがとうございました!
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