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国際相続における「準拠法」「プロベート」とは?



■準拠法とは?

国際相続において準拠法は「どこの国の法律が適用されるか」を指します。

また、準拠法を考えるうえでは、
・相続統一主義
・相続分割主義
という考え方の理解も必要となります。

◎相続統一主義

不動産や動産などの財産をそれぞれ区別せず、その国の法律に沿って相続をする考え方を【相続統一主義】と呼びます。

この主義をとる国としては日本・韓国・台湾などが挙げられます。
つまり、日本人が亡くなった場合、動産・不動産関わらず、全ての財産が【日本の相続法】が適用されるという事です。

◎相続分割主義

動産と不動産を区別して、動産がどこにあるのか、不動産がどこにあるのかによって、適用する準拠法が変わるという考え方が【相続分割主義】です。

この主義をとる国として、中国・イギリス・アメリカが挙げられます。
つまり、中国の方が亡くなった場合は、動産がある場合は動産がある国の相続法、不動産を所有している場合はその不動産がある国の相続法が適用されます。

■相続人への引き継ぎ方

国際相続では、相続人への引き継ぎ方も大きく2つの考え方に分かれます。

◎包括継承主義(日本・韓国など)

被相続人が亡くなったその段階で全ての権利/主義が相続人に属するという引き継ぎ方を【包括継承主義】と呼びます。
負債もすべて一度相続人に引き継がれ、相続放棄をすることで、相続しなかったことになります。

◎管理清算主義(アメリカ・イギリス・シンガポールなど)

被相続人が亡くなった後、遺産は一度誰の財産にも属さない「相続財団」を形成します。
この「相続財団」の清算を行い、遺産が残ったら相続人や遺言に指定された受遺者に帰属するという引き継ぎ方が【管理清算主義】です。
上記の手続きは裁判所が関与して行います。
裁判所主導のもと進むこの手続きを【プロベート】と呼びます。

■プロベートとは?

この言葉を知っていることで相談に乗りやすくなるので是非覚えてください!

先にお伝えした通り、管理清算主義では、被相続人が亡くなった後、遺産は一度誰の財産にも属さない「相続財団」を形成します。
相続財団を袋でイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
袋の中にプラス、マイナス関わらず全ての遺産を入れたうえで清算をしていくイメージです。

この清算までの作業を【プロベート】と呼びます。

ではこの袋をだれが管理していくのか。
管理するのは、「アドミニストレーター」または「人格代表者」と呼ばれる人です。
※日本でいうところの遺言執行者が近いですね。

このアドミニストレーターが負債や税金の支払いや債権の回収などを全て行います。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、アドミニストレーターの行う対応はかなり膨大であるため、長い期間を要する場合もあります。

もし、債権の回収に10年かかってしまった場合は【プロベートが10年終わらない】ことになってしまうのです。(どんなに短くても1年はかかります)

プロベートが終了したら、ようやく相続人や受遺者へ財産が引き渡されます。
つまり、管理清算主義の国では、相続人はプロベートが終わるまで自由に財産を使うことができません。

時間がかかるというのはプロベートの大きなデメリットのひとつとなっています。
そしてプロベートには他にも以下のようなデメリットが存在します。

◎プロベートのデメリット

・費用面の問題
→申し立てを行う際に弁護士に依頼する必要があるほか、アドミニストレーターや遺言執行者、会計士、不動産鑑定士など多くの人が関わるため、費用がかなり高額(平均約300万)となります。

・プライバシー問題
→裁判所が関与し、遺言の内容や財産内容、相続人情報などの個人情報が公開されるため、プライバシーは確保できません。

もちろん、プロベートを避けるための策もあります。

<対策例>
・ジョイントアカウント:二人で一つの銀行口座を保有し、片方が亡くなったらもう片方の所有者のものとなる制度
・Transfer on Death:自分が亡くなった場合の財産の名義を事前に指定しておくことができる制度 等

しかし、海外に資産を持っている日本人の方はこのような制度を知らない方が多く、対策を取っていないケースがほとんどです。

皆様のクライアント様で海外の資産をお持ちの方には上記が非常に有益な情報となるのではないのでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました!
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