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好きなものを満喫して生命を感じよう

 無花果が食べたくて仕事帰りスーパーに寄った。季節としては間違ってはいないと思うのだけど、残念ながら寄った店には置いてなかった。バナナやキウイではその代わりにはならないけれど、代わりにスーパーにあった果物を数種買って帰った。

 小学生の頃、夏休みに母方の祖母の家に何度か行った。海が近く、庭に無花果の灌木があった。だから、夏といえば日差しの下で無花果の灌木のむせかえるような独特の匂いを思い出す。

無花果の実も美味しいが、葉や幹から漂うあの匂いは植物の生命力そのもので、肺いっぱいに吸い込みたくなるほどに好きだった。

そういえばずいぶん長い間その匂いを嗅いだことはない。暑過ぎて夏の日差しの下に居ることが少なくなったからか。それとも、私の住む街には無花果を植える家は無いのか。庭を持つ家自体が少ないのは確か。

時代や風景が変わっていくことに、なんだか寂しい気持ちがする。あれほど好きだったものはもう手に入らないのかもしれない。

好きだと感じるものは思い切り満喫したほうがいい。いつか気づいたらなくなっているかもしれないのだから。

 好きな匂い、好きな景色、好きな味、ちゃんと好きを認識して生きたい。

 大丈夫、無花果はまたどこかで手に入れよう。その時にまた好きを感じよう。

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