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【映画感想】イケメン+黒コート×二丁拳銃=ハンパない

 2010年11月24日にアップしたやつ。

 ※えらいネタバレしてます。ご注意ください。

 この映画のPart2がDVDになったので、1と2を観ようと思ってレンタル屋に行ったら1が借りられていました。悔しい思いを胸に秘めつつ帰宅し、酔っ払いながらネットサーフしていたら不思議なことに翌日、Amazonから1と2のツイン・パックが届いていました。酔いというのは恐ろしいものです。

 そんな経緯で入手した「処刑人」です。伝説のカルトムービーと呼び声高い「1」は2001年、「2」は2009年の作品。監督は鬼才と称された(2001年当時)トロイ・ダフィー。主演はブラッド・ピットやジュード・ロウに続く俊英と謳われた(2001年当時)ノーマン・リーダスと、ショーン・パトリック・フラナリー。
 …とここまで書いたところで、8年経ってみて、監督も俳優もそこまでブレイクしていないことに気づかされます。やはりそこはあくまで「カルトムービー」の域を出なかったと言う事でしょうか。…と、少し醒めたことを言いつつ、レビューしていこうと思います。

 あらすじは、双子の兄弟が神様から啓示を得て悪人どもをぶっ殺しまくるよ! というものです。身も蓋もありませんが、マジでそれだけです。身も蓋もなさすぎて本国ではいくつかの州で上映禁止になったそうです。
 ですが、上映禁止になるほどのものか、と私は思います。もっと理不尽な殺され方をしている可哀想な人が出てくる映画はまだまだたくさんありますからね。1999年のコロンバイン高校の銃乱射事件の記憶がまた生々しい時代だったからかもしれません。でも結局、このあともバージニア工科大学での銃乱射事件を始め、アメリカでは一般人の銃による死亡事件が後を絶ちません。一体何のための上映禁止だったんでしょうね。
 少し話がそれましたが、多分この映画がそこまで問題視された理由は、彼ら双子(劇中では聖人-saintsと呼ばれます)が「法で裁けない悪人を」「神の名の下に」殺していくから、ではないかと思うのです。しかもそれを彼らは完全なるボランティア精神でやってしまうのです。中村主水ですらお金を貰いながらやってると言うのに。これはある意味タチが悪い。相手はどう見たって街を腐らす、死んだら地獄行き間違いなしの悪者です。でも人間が社会生活をしていくうえで、どうしても法律と言うものは守らなくてはいけなくて、それを軽々と飛び越えられては、社会を運営していく側としては困るわけですね。悪者だからって簡単に殺してたら、社会が立ち行かなくなってしまう。聖人たちのやることは正直、ありがた迷惑なわけで。
 しかも彼らは正義の拠り所を「神」においています。神の前には法の正義なんて霞んじゃうわけです。ですが、社会が法律を至上のルールとしている以上、これを映画を観た人が万が一マネしたりしたら、相当めんどくさいことになってしまう。正義と正義がぶつかりあうって言うのは、かなり面倒な事象です。ゆえに、観てはいけません! と、言う感じだったのではないかと、わたしは妄想してしまいます。ただ残虐だから、殺人を描いた娯楽映画だから、と言うだけではない、根の深い理由が、「処刑人」の上映禁止にはあるような。
 また、この映画の存在自体が社会にそう問いかけたように、映画の物語の中にも、善悪とは正義とは法とは罪とは、一体何なのだろうか、と言う深い命題が横たわっているように思います。
 聖人たちは人を殺しました。それは社会の中では間違いなく犯罪なので、それを取り締まる人たちが登場します。けれども彼らは、聖人の行いに共感してしまうのです。殺人は、法=社会に対する罪です。ですが殺した相手も、法の網をかいくぐっているけれど、悪を犯しています。
 法で裁けない悪を断罪する聖人たちに、警察は表立ってではないけれども、手を貸してしまいます。では一体、悪とは何なのでしょう? 罪を犯すというのは、どういうことなのでしょう? そんなことを思わずにはいられません。
 その答えと言うか、監督自身の意見は映画の中で語られているように思います。トロイ・ダフィーは映画の冒頭、ミサのシーンで、「一番怖いのは、無関心という一般の人の心です」と言うせりふを神父に語らせます。それと呼応するように、聖人たちが悪人を法廷で殺害したニュースについて、物語のラストで市民が語る映像が挿入されます。眉をしかめる人もいれば、快哉を叫ぶ人もいますが、「自分には関係がない」と語った人々が最も多いのでした。恐らく監督自身は、「そこで悪が行われようと善が為されようと、関心を寄せず思考を停止させることもまた、罪である」というメッセージを込めたように思います。

 ……とか何とか小難しいことを考えましたが、基本的にはバイオレンス・アクション映画なんで、その辺を楽しむのが正統、かつ誠実な楽しみ方であろうと思います。
 アクションの派手さは圧倒的に「2」の方が上です。それにくらべると「1」はおとなしく、これもまた「なんで上映禁止?」と私が思ってしまった所以であります。「2」の、聖人が二丁拳銃で悪人をぶっ殺しまくるシーンはまさにカタルシス。双子たちのおバカさでバイオレンスの毒を抜くさじ加減もお見事。
 一方、「1」の見所はエンド・クレジットで一番最初に出てくるFBI捜査官役のウィレム・デフォーの怪演、ほとんどこれ一択かと。彼の代表作「プラトーン」を彷彿とさせる(「というかこれはもうセルフパロディの域だよね」とは一緒に観た人の弁)シーンは、演出もあいまって、膝を打つほどの名場面だと思います。
 トロイ・ダフィーは脚本のそこかしこに、かつてのアクション映画の小道具やセリフ、タイトルを仕込んできます。「ああ、これって××が元ネタだね」と言うニヤリもまた、この映画を楽しめるポイントだと思います。
 そして、この映画の外せない魅力は、やはり主人公の双子のかっこよさです。俳優さんが二人とも、すごく美形なんですよね。殺伐としたストーリーの中で、彼らの明るさと仲の良さ、周りの人との関わり方、おバカなノリがすごく可愛く見えたりして。女性でこの映画を好きな人が結構いるのも大いに頷けます。
 ハンサムな双子がかっこいい黒コート着て、二丁拳銃で決め台詞とともに悪人を成敗。爽快感、はんぱない。眼福度もはんぱない。頭をからっぽにして、できればちょっとストレスなど溜まっている時に観ると、ちょうど良いんではないかと思います。

 私はどっちかと言うと、弟(ノーマン・リーダス)の方が好みのタイプです!!


 黒コート、二丁拳銃のアクション映画と言えばやっぱりこれですよねっていう。

↓2021年追記
 この後「ウォーキング・デッド」でノーマン・リーダスがバカ売れしたのを見て、自分は見る目があるなあと悦に入っていたタチの悪いオタクとは私のことです。





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