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【映画感想】BIUTIFUL 観に行きました

 2011年7月19日にアップしたやつ。


連休の中日に、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの「BIUTIFUL」を観に行きました。


スペイン、バルセロナに暮らすウスバルは、2人の愛する子どもと情緒不安定でドラッグに頼る妻を養うため、麻薬取引や移民の不法労働の手配など、違法な仕事にも手を出してきた。そんなある日、自身が末期ガンにおかされていることを知ったウスバルは、家族にその事実を隠し通そうとするが……。「バベル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作。ハビエル・バルデムが第83回米アカデミー主演男優賞にノミネートされた人間ドラマ。(映画.comより)

 イニャリトゥ監督の事は前にもこのブログの中でチラッと書きました。二層、三層に重なったストーリーを絡み合わせ、スピード感のあるストーリーで描きだす作風はよく知られています。喪失の悲しみにあえぐ人々の心情を巧みに活写し、観る側に「絶望を前に、人間はどのようにして生きていくべきなのか」を問いかけてきます。
 今回の「BIUTIFUL」では、監督の代名詞とも言える「複数の登場人物の物語を、時に時空を同一にしながらも基本はシャッフルして綴っていく」という手法を手放しています。主人公のウスバルと言う男性を徹頭徹尾描いているのです。
 ですが、人物が減った分物語のボリュームが目減りしたと言うことはありません。むしろ、このウスバルと言う男性の多面性…優しい父として、不器用な夫として、不法滞在者の違法就労斡旋を生業にする生臭い男として、霊媒として死者の声に耳を傾ける不思議な男として…が、丹念に追われています。むしろ彼の差し迫った境遇もあり、その質量は今までの作品と遜色がありません。

 ところで、イニャリトゥ監督は、今までの作品で「喪失」をテーマに作品を作ってきたのではないかと思っています。身近な人の死や、愛する人の裏切りや、通わない心など。満たされない心を抱えて生きていく人たちを主人公に据えてきました。言わば、取り残された人を描いてきたように思います。監督自身が、お子さんを亡くしたと言う経験から来ているのだと、よく指摘されています。
 本作品においても、ウスバル自身もまた両親に縁遠い生まれであり、そうした喪失感を抱えて生きている人に違いはないのですが、むしろ彼は「愛する者を取り残していく人」であり、来るべき別離の時に備えて、愛する人の未来が少しでも温かいものであるようにと奮闘する姿を通じて、今までとはまた違う別離の痛みを表現しようとしているように思いました。それは何か、痛々しいけれども、愛に満ちていて、悲しいけれども、それだけではない。そんな重層的な感情であるように思います。

 また、この映画、黒澤明の「生きる」にインスパイアされているようです。(映画.comより)
 うおー、知らなんだ。これはちょっと精査しなくてはなりますまい。


 
 連休の中日に観に行ったわけですが、初日は川崎フロンターレの試合を観に行ってました。暑い暑いと唸りながらも楽しく応援してきました。勝ったお!
 で、最終日は明け方からなでしこの試合観てました。
 今日の朝刊の一面が、なでしこのことで、新聞の一面記事が震災と直接関連が無いものになっているのを久しぶりに観た気がしました。何だか少しだけホッとしました。それと同時に、まだ大変な思いをしている人がたくさんいることを忘れてはいけないと思いました。

 そんな毎日です。

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