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さよならのためにできること。ヴァン・サントの美しい映像に陶酔。

 2014/2/10にアップしたやつ。

 ガス・ヴァン・サント監督の映画が好きです。
 登場する少年少女たちは、皆ヘビーな状況に置かれていて、けれどもあまり泣きわめいたりしないで、つとめて健気に、真っ当に、その状況を乗り越えて行こうとしています。
 ヴァン・サントはそんな彼らの隣にそっと佇み、見守り(まるで“ベルリン・天使の詩”の天使のように)、彼らの抱える重たいものを我々にそっと手渡してきます。「君ならどうする?」と問いかけながら。
 いつもその問いかけと共に、映画は終わります。そんな気がしています。
 「ドラッグストア・カウボーイ」も「マイ・プライベート・アイダホ」も、「パラノイド・パーク」も「エレファント」も「ラストデイズ」も全部好きです。
 作品自体大好きですし、ヴァン・サントの選び出す少年少女たちの、繊細な、ほとんど詩的な美しさについても、毎度驚嘆を禁じ得ません。

 そんなヴァン・サントの「永遠の僕たち」をやっと観ました。

 ヘンリー・ホッパー演じるイーノック。両親を交通事故で失い、自分も生死の境を彷徨い、臨死体験を経て戻ってきた少年。同級生への暴力で高校を退学になってからは、日々他人の告別式に参列することを趣味にしている。
 ミア・ワシコウスカ演じるアナベルは、脳腫瘍で余命3カ月と診断された少女。
 イーノックのたった一人の友人、ヒロシ(加瀬亮)。彼は太平洋戦争で命を落とした特攻隊員の幽霊で、イーノックにしか観ることが出来ない。
 アナベルと出会って恋に落ちたイーノック、彼を見守るヒロシ、アナベルとイーノックの最後の日々がこのうえなく繊細につづられていくわけです。あの、ヴァン・サント独特の、親密なカメラワークでもって。
 難病もの、美少年と美少女の恋愛もの、と言う相当陳腐なテーマを、けれどもそうでなく描いたのがこの映画の凄い所だと思います。
 イーノック少年の趣味、「葬式巡り」。お世辞にも良い趣味とは言えません。それどころか悪趣味です。彼の抱える事情を知らない間は、この少年に対して嫌悪感がわきます。けれども、彼が何故葬式巡りをするに至ったのか、その事情を考えれば考えるほど、この映画の本質に近づいていけるような気がしています。
 イーノックと両親が交通事故に遭い、両親は即死。イーノックが3ヶ月後に意識を取り戻したとき、彼らは既にお墓に葬られた後でした。つまり、イーノックは両親のお葬式に出ていないのです。
 お葬式って、死んだ人のためにする儀式だけれど、その実は、残された人が、覚悟を決めるための儀式だと思うのです。さよならの覚悟。慣れ親しんだ人の肉体が灰になってしまうことの覚悟。その声を二度と聴けない、その手に二度と触れられないことの覚悟。耐え難い、壮絶な孤独を、なんとか耐えしのぶために、何度もお経を聞いて、花を手向けて、思い出話をして、必死にさようならの準備をする。だから初七日があって、四十九日があって、1周忌、3回忌、って、たくさんたくさんお別れの機会があるんだと思うんです。そのくらい何度も何度もお別れの儀式をしないと、乗り越えられないんだと思うんです。
 お葬式に出られなかったとイーノックは、お父さんとお母さんにお別れをしそこなってしまったんだと思うんです。だからどうしても、痛みを我慢できない。さよならと言えない。やり方がわからない。だから、他の人のを見て真似するしかない。みんな、あの、体を引き裂くような辛い気持を、どうやって乗り越えているんだろう。それを知りたくて、イーノックは今日も他人の告別式に参列しているのではないかな。なんて思ったり、いや、全然違うかな、なんて思ったり。
まだ完全に考えがまとまったわけではないですが、そんなことを思ってます。

 この映画でもう一つ印象的なのは、主人公たちが生活する小さな町の、ささやかな景色の、圧倒的な美しさです。冬枯れの木立でさえずる小鳥、赤紫色に染まる夕焼けの空、ハロウィンの夜の子供たちの足音、朝の凛とした空気──。
 きっとこの眺めは、アナベルが死んでしまっても変わらないんだろう。ヒロシが生きていた頃から変わらないんだろう。イーノックが年老いて死んでからも、変わらないんだろう。それが世界と言うものであり、生と死は誰にでも平等に訪れ、それは世界が終るまで続くのだ。だから、「運命」みたいなものが自分の命を刈り取りに来るまでは、我々は生きていかなければいけない。何かそんなメッセージが込められているようでした。

ここ2~3週間で観た他の映画。

長かったしロリータはかわいくないしハンバート・ハンバートは気持ち悪いしなんかイマイチだった。

クリストファー・ノーランが小遣い稼ぎで作ったみたいな映画だった。

こう言う映画だと思ってなかったから不意をつかれて号泣した。こう言う映画に最近弱い。

 わりと面白かったけどこの頃ですらジュリア・ロバーツが女学生役と言うのにはだいぶムリがあるような気がした。

 これは面白かった。オリバー・ストーンの映画に外れなし! しかもこれが20年以上前の作品とか信じられない。すごい先見性なのか、それとも、人間は同じ問題を20年以上解決できてないのか。

 裏窓とかのほうが面白かった。

 我ながら新しい映画を全く観てなくて、それでいて今更観るのかよみたいなのも多くて、映画のブログ書くときは自分の浅薄さがさらされるようで少し恥ずかしいです。

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