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「マイ・タイムライン」講座で留意したい、台風進路と想定

先月相次ぎ上陸した台風におきまして被害に遭われた皆様に、まずは心よりお見舞い申し上げます。9月から10月にかけての台風シーズンは…と書き出し準備をしていましたが、各地の被害を知るにつけ筆をすすめるのに躊躇ためらう思いありつつ、コラムをお送りさせていただきます。

10月は二十四節気で寒露、霜降と寒さに向かって秋の深まっていく季節。澄んだ青空に映える赤々と色づいたリンゴに食欲もそそられます。「1日1個のりんごで医者いらず」といわれるほど栄養価の高いリンゴは身近な果物のひとつで、世界中で約15,000種、国内でも約2,000種が栽培されています。セイヨウリンゴが日本に入ってきたのは1875年(明治8)、青森県の旧弘前ひろさき藩士が栽培を始めたことで一般に普及していき、長野県や東北各県などで栽培されていますが、日本一の生産量を誇るのも青森県です。

リンゴがたわわに実る秋は台風襲来の季節でもあります。リンゴは風に弱い作物なので、強風によりぶつかりあって枝に擦れ、傷つき落果してしまいます。被害規模で平成最悪といわれる1991年(平成3)9月に長崎県佐世保から中心気圧940hPaで上陸した台風19号は、日本海側を北上しながら各地に暴風被害をもたらし、青森に最接近した時点で最大瞬間風速53.9m/sという猛烈さでした。一夜にして収穫前の大量のリンゴが落ち、倒木、枝折れ等で長期的にも大きな被害となりました。このことから「りんご台風」とも呼ばれる典型的な「風台風」として知られています。

「風台風」「雨台風」は雨被害と風被害のどちらが結果的に大きかったかによる分け方で、半世紀前にはすでに報道表現として定着したようですが、明確な定義はありません。事前の台風の進路から想定できることの一つとしては、台風の進路右側は左に比べ風雨が強くなるということ。もちろん一概にはいえませんが、台風が日本海側を進むと被害が大きくなる可能性が高まるといわれています。

また、台風接近時すでに前線が停滞している一帯では、上陸前から大雨になることも想定されます。日本防災士会主催のスキルアップ講座でもご存知の「マイ・タイムライン」を一般にお伝えするにあたって、台風が一番わかりやすい事象ではありますが、ワークショップ開催時にはこういった想定を盛り込みつつ進めることも必要な視点となります。

Writing / 鈴木里美


参考資料|草木花歳時記・秋(朝日新聞社刊 1999年)|「青森県庁りんご果樹課」サイト|「りんご大学」サイト|台風についてわかっていることいないこと(筆保弘徳編著 ベレ出版 2018年)|新・いのちを守る気象情報(斉田季実治著 NHK出版 2021年)|激甚気象はなぜ起こる (坪木和久著 新潮社 2020年)|雨台風と風台風(関口武・福岡義隆 1964)


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