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地熱と火山がもたらす自然の恵み

冬の香りを代表するユズは、熱を加えても独特の爽やかな香りが消えないため日本料理の香辛料・酸味づけなどに用いられます。中国原産で、朝鮮半島を経由し日本に入ったのは奈良時代頃。四国3県での生産が国内シェア8割を占めています。種子をまいてから実がなるまでに年月がかかるものとされ「桃栗3年柿8年、枇杷は9年でなりかかり、柚の大馬鹿18年」とも。

果実に薬効が期待されるほか、冬至の日「柚子湯」に浸かれば一年風邪をひかないともいわれます。この習慣は江戸時代に銭湯が客寄せのため冬至にユズを入れたのが始まりとのことですが、現在ではユズの様々な効能も明らかになっています。柑橘類の中でもトップクラスのビタミンCは肌の保水性を高め、抗酸化作用を有することから乾燥肌の予防や老化予防、肌を守るバリア機能などの効果が期待でき、精油にリラックス効果もあることから、家庭で手軽に入れる「薬湯」といってもいいのかもしれません。

薬湯といえば草津に代表される温泉こそ、いまの時節にじっくりと浸かりたいもの。日本は3000カ所を超える温泉地がある世界随一の温泉天国。そのうち火山由来の温泉は日本列島を南北に伸びる火山フロント上に点在しているのですが、大まかにいえば降った雨が時間をかけ地中にしみ込み、高圧高温の地下にあるマグマ溜まりに近づくなどの条件下で熱水となり、さまざまなイオンを含有しながら地上に上がってきたものを温泉と呼びます。源泉の多さとともに、泉質の豊富さも日本列島の成り立ちの複雑な地質に求められるかもしれません。四季折々の風情、豊かな水資源とともにある滋味深い食文化など「あたりまえにある」自然の恵みに改めて感謝したいものです。

防災を語るとき、「災害列島」「災害大国」と冠することも多いと思いますが、日本列島に人が住み始めた頃から、破局的大噴火や大津波などの大災害に遭いながらも綿々と日本人のアイデンティティーを繋いでこれたのは、災害というマイナスの反面として享受してきた「自然の恵み」の豊かさにあるのではないかと思えるのです。

 Writing / 鈴木里美


参考資料|草木花歳時記・冬(朝日新聞社刊 1999年)|知っておきたい100の木―日本の暮らしを支える樹木たち (田中 潔 主婦の友社刊 2011年)|柚子湯の効能 - 高知県立大学サイト|知られざる温泉の秘密(齋藤勝裕 C&R研究所刊 2022年)|温泉のはなし(白水晴雄 技報堂出版 1994年)|温泉と地球科学(日本温泉学会 ナカニシヤ出版刊 2016年)


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