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現代に残るメスメリズム

みなさんは催眠術と聞くとどういったイメージをお持ちでしょうか?

もしかすると以下のような現象をイメージするかも知れません

・被験者の言語、聴覚、視覚を奪う
・術者が許可しない限り、被験者は「椅子から立ち上がるor 座れない」などの自発的な行動ができなくなる
・自分や友人の名前を忘れる
・術者の指定した部分の感覚が変化する(痛くなったり)
・杖が蛇に見える、水の味が変わるなどの幻覚が起こる...

メスメリズムのパフォーマンス

上述の現象は全て18世紀〜19世紀にかけて行われていたパフォーマンスから一部を箇条書きにしたものです。つまり、「催眠術」という概念ができる前から存在するパフォーマンスであり、元々はメスメリズムのパフォーマンスだったと言われています(名称としての「催眠」が生まれたのは1843年なので、19世紀半ば)。

メスメリズムと名前が付く前からも存在しており、単に超常現象や霊能力、奇跡として行われていた歴史もあります。メスメルはガスナー神父が行っていたデモンストレーションを見て動物磁気説を提唱していますし、催眠或いは催眠類似現象はずっと以前から存在していると考えるのが妥当です。(記録上によれば紀元前から催眠や催眠類似現象を使った治療法が存在する)

成り立ちを考えると実にメンタリズム的ですね!

-メスメリズムの名残

名残も何も現代で行われている催眠術パフォーマンスは2世紀以上前から変わっていないわけですが…

マグネティック・ハンド、マグネティック・フィンガー等「マグネティック」と付くのは動物磁気(メスメリズム)の影響かなと思ったりしています。

非催眠現象(メスメリズム的アプローチ)と催眠現象(ヒプノシス的アプローチ)の区別が付いていない催眠術師もいるくらいで…例えば、被暗示性テストで行われる、マグネティック・フィンガーとペンデュラムは観念運動ですし、ブック&バルーン・テストは一部が生理現象、後ろに倒れるのは反射が利用されています。だからこそ、被暗示性テストで反応が良いからと言って、必ずしもその人が催眠誘導されやすいとは限らないと言ったことが起こるわけです。

(更に言うと、催眠感受性と催眠反応性の違いもありますが、長くなるので別の機会に…)

メスメリズムとステージ催眠

近頃ステージ催眠についての資料を読んでおり、ステージ催眠術師のバイブルととも呼ばれる"The New Encyclopedia of Stage Hypnotism"を斜め読みしていていくつかの点がはっきりしました。

-ステージ催眠の起源

既にお察しの通りだと思います。メスメリズムのパフォーマンスが起源だと考えられています。

-ステージ催眠と催眠は違う?

催眠の定義から考えると、ステージ催眠で行われる現象は催眠と呼べないものが多くあります。

この辺も詳しくは過去の投稿を見て頂くとして…

-現代のステージ催眠

"The New Encyclopedia of Stage Hypnotism"によると、現代のステージ催眠は2つの要素があると言われています。

・催眠術(純粋な暗示による誘導)
・メスメリズム(トリックとそれによる誘導)

まぁ当たり前ですね…

ただ、海外で最も著名なステージ催眠の本などではこの考え方されているものの、日本で手に入る催眠術の教材ではここの所が説明されているものが知る限りはありません。この辺は日本に伝わる際にメスメリズムと催眠がごっちゃになったという経緯があるそうなので、その影響が今の日本の状況を作り出しているのかもしれません。

-ステージ催眠とトリック

マジシャンとしても知られるクレスキンは、自身の催眠ショーで行われていた現象は舞台装置などで再現したもので、当時の催眠術ショーの多くがそういう物だと内部告発をしています。

2000年以降でも、英国で最も成功したと言われる催眠術ショーを行ったキース・バリー氏もインタビューで「催眠術は出来ない」と答えていたり、ステージ催眠の世界はトリックとサクラ(やらせ)で演出されていることが少なくないようです。

メスメリズムのパフォーマンスはほとんどトリックではなく、純粋に生理・心理現象、暗示によるもの本物の催眠で構成されていると言われてはいますが、実際の所どうだったのかは分かりません。

また、集団を相手をする際には、社会的影響(同調圧力や忖度)を利用した手法も存在し、結果として催眠状態になる場合があります。それらを生み出すために観客の中にサクラを紛れ込ませるのは海外の催眠ショーでは割と一般的に使われる手法です。(国内の催眠ショーを見たことがありませんが…)

日本のテレビでも催眠術師と名乗る人が、メスメリズム的な非催眠現象を多く使っています。被験者の適正が高く、結果的に催眠誘導が行えているケースが多くありますが、これもまたステージ催眠的な側面が強いと言えます。(メディアに出演する方は、番組を盛り上げる意思があるため、一般の方よりも催眠反応が起こりやすい)。

--ヤラセ

舞台装置を使ったもので催眠風の現象は起きているものの、それが本物の催眠現象とは言えません。この辺は、「心理学です」と言い張るメンタリストに近いですし、催眠術師の多くはメンタリスト的な要素があると私は思っています。

サクラを使ったものは完全にヤラセなわけですが、それを観た一般観客がつられて催眠状態になる場合もあるため、ステージ催眠を完全なヤラセであるとも言えません。

テレビの場合、被験者は「番組のため」と掛かったフリをしていたら結果的に本当に掛かってしまうケースもあると思いますし、そのへんは当事者ではないのでなんとも言えないところです(掛かったフリをさせて始める誘導方法もあるにはある)。

まとめ

メスメリズムは現代にも残っています。

メスメリズム的手法は「催眠」の概念が提案される前から存在するため、手法そのものは使えても理論については完全に時代遅れの代物です。

おまけ!

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