ぼくの生まれた理由

血が
手当をしないと
ドミニスリヤは
静かに首を振った
少年はすべてを悟った
そして賢者は話を続けた
正確には
マグマドグマのなかにある短剣と
合わせてはじめて
ひとつの完全なるものとなるのじゃ
大妖精は
どうしてぼくに
夢を見させたんだろう
世界の均衡が
破られつつあると悟ったのじゃろう
不思議とぼくは
夢の内容が思い出せなくなっていたんだ
今ですら
どんな内容だったかも
でも夢から醒めた時
泣いていたことだけは覚えている
きっと悲しい涙ではないはずだ
そう信じたい
それにぼくのなかに
短剣があるのはどうしてなのだろう
お主はあの儀式のなかで
生まれたんじゃよ
ワタヌキのお母さんの儀式
そうじゃ
短剣は完全に支配の短剣と
なるはずじゃったが
アオイの行動で
悪しき部分と
善なる部分に
別れたのじゃよ
それがぼくとマグマドグマなの
それじゃあぼくに
火花の力を分けたのも
黒いぼくになったのも
マグマドグマが自分のなかに
ぼくを取り込んで
完全なる支配の短剣を
作ろうとしていたからなんだね
その通りじゃよ
でもどうして博士
いやドミニスリヤは
この街にマグマドグマが
来るということが分かったの
それはな
ドミニスリヤは
痛みに耐えながらも
過去の話をし始めた

◆ 戦利品 ─【歯車の噛み合う音】

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