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今年もよろしくお願いします。

『彼女の変化』

大人しい、というのが彼女の印象だ。
この格闘技塾においても特に自己主張があるわけでもなく
ただ黙々と、自分のやるべきことをこなしている。

という、そんな印象だった。
クラスにいたとしたら、目立たないがその顔立ちの良さで実は隠れて人気がある。ようなタイプかもしれない。

「こんにちはー。」
彼女は静かな、でも落ち着くような可愛い声で挨拶をしながらジムに入ってくる。今日は、新しい子も入ってくるし、なんだか全体的に新鮮な感じだ。
緊張した感じ、とも言えるかもしれない。
新しい子は中学三年生の男の子で、まだ見た目にも幼い。
彼女は高校3年だから、まあ、慎重さはそれほどないにしても内面的にもその顔立ちにしても大人と子供という感じで、僕としてはまあうまくやるでしょ。という感じで心配もしていなかった。

彼女の変化を感じるとすればその日が最初だったのかもしれない。

少しだけ彼を見る目つきが違ったというか。


その次の週になると、それはもっと顕著だった。
彼女は彼のことを意識しているというか
これはいい意味ではなく悪い意味で、品定めをしているような目線で見ていることに僕は気づいていた。ジムの長として、まあ咎めるじゃないけれどどこかで注意しなくては変な軋轢が会員さんの中で生まれるのは、よくない。

それでも彼女も大事な会員さんだから、僕は出来る限り波風立てないように振る舞おうとしていた。

ことが起こったのは、そのさらに次の週だった。
彼はようやくスパーリングに参加できるようになった、というところで
それでもまだ初心者ではあるので無茶しないように、とお達しを入れてまず彼とやりたがったのは彼女だった。

まあ、彼女はそれでも面倒見のいいお姉ちゃんなんだろうし、
きっといろいろ彼に教えようとしてくれるのだろう。
僕のその考えは大いに間違っていたけど、その時点ではわかるはずもない。

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