天使の館。

その夜ぼくは、高校生の兄とその友達2人とぼくと同じ小学校に通うぼくの友達1人の計5人で「天使の館」と呼ばれるお屋敷に忍び込んだ。

そこは古い洋館風の建物で前まで来てみるとすっごく不気味だった。

兄のユウスケ、友達のタカシ、ケン、そしてぼくとぼくの友達のマサルはこの「天使の館」の噂を確かめに来た。
それは天使の館に夜12時を回った頃に入り、部屋を探して光り輝く天使に出会ってその天使に抱きしめてもらえたら天国に行ける、というものだった。
噂どおりにぼくたちは夜中、ケン君の家に泊まりに行くと親に言って抜け出してきた。時間はちょうど12時だ。

懐中電灯で真っ暗な夜を照らして、洋館の入り口に手を掛ける。

ギイイと古い音がして扉は開いた。いかにも不気味で怖い。本当に天使なんかいるのか。ぼくはとても疑わしく思っていた。

天使の館は広く、まず玄関を入ると広間があって正面に大きくうねった階段がある。壁にそって幾つも部屋があり、なんだか気味の悪いオブジェや剥製なんかがそこここに飾られている。心細い懐中電灯に照らされて浮かび上がるそれらはじっとこっちを見つめているようでとても嫌だ。

兄たちも口々に気味悪いな、とかおっかねえな、とか言っている。ぼくもぼくの友達のマサルと目を見合わせて洋館が醸し出す不気味さを共有していた。

ま、ここでビビッてても仕方ないし、さっさと天使を探し出してハグしてもらって幸せになろうぜ。と兄がみんなに向かって言った。みんなもそうだな、とぞろぞろ屋敷に入っていった。

懐中電灯が屋敷の中を何往復もしてみんなが正面にある階段へ向かったとき、あきらかに今さっきまでいなかった人影がそこに現れたのをぼくは見た。

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