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HERO〜序

 佐々木彩は荒廃した街の中に佇んでいた。
彼方に見える空は暗闇、地表から煙立つ赤い炎に照らされて
まるで夕暮れ時のノスタルジーに荒れ果てた気分を混ぜたような、
よすがの無い孤独感をその胸いっぱいに感じていた。

「あれ・・・。。なんだっけ・・・。これ・・・。」

心細さから独り言が口から出る。
自分の怯えて震えた声でさえ、この得体の知れない轟音と
時折鳴り響く爆音が取り巻く世界の中では安堵の種になる。
彩は呼吸するのを忘れないように、そして震える体が恐怖に飲み込まれてしまわないようにきゅっと唇を固く結んで目をあげた。

オレンジ色に染まる彼方には、小さな影が無数に飛び回っていた。
ヒュンヒュンと自在に飛行するその影は人間の形をしているようだった。

「こんなの・・・夢・・・だよね・・・。」

彩はまたそう独り言を言って、

携帯のアラームが枕元でけたたましくなっていることに気がついた。
「♪〜〜〜」

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