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トライアルを支える食のプロフェッショナル集団・明治屋(後編)

トライアルグループの”食”の柱である株式会社明治屋について、前編では事業の全体像について紹介した。後編では消費者の方に最もなじみ深い「惣菜」の開発や製造にまつわる裏側を紐解いていく。

ヒット商品が生み出される特設ラボ
惣菜開発においては専用のテストキッチンを設けており、ほぼ毎日職人が新メニューの開発や既存メニューの改良などの施策を⾏っている。そのテストキッチンを構えるスペースというのが、多くの来客が行きかうトライアル本社のロビーフロアにあるため、足を運んだことがある方はその熱気あふれる光景を目にしたこともあるのではないだろうか。

明治屋のテストキッチン風景

トライアルの惣菜の中には、店内に設置されているキッチンスぺ―スで調理され店頭に並ぶものもあるため、テストキッチンも店舗と同様のスペースや間取りで設計されているのが特徴だ。“店内調理”はトライアルの惣菜部門における肝であり、いわゆるセントラルキッチンでの調理のみではなかなか味わえない出来立ての美味しさに直結する。
味はもちろんのこと、どのようにしたら円滑なオペレーションに繋がるかも工夫を重ねるポイントであり、異なる店舗でも安定した味と提供体制を保つため専門家が考案したレシピといえど決して複雑なわけではない。

「職人」と「食卓」を繋ぐこだわり
メニュー開発にはいくつかのポイントがある。

① 市場トレンドを調査し、消費者が「本当に求めるもの」を追及
スーパーマーケットで買い求められる惣菜は、ただ安くて美味しければ良いというものではない。トライアルでは「⾷卓での出現率が⾼く、調理が簡単・使う材料が少ないもの」「⾷卓での出現率が⾼いが、作るのに時間がかかる・使う材料が多いもの」という2つの観点から市場トレンドを調査しメニュー開発に活かしている。

左から唐揚げ、ベーコンエッグおにぎり、メンチカツ

特に後者について、例えばカレーは家庭でよく作られるメニューで調理が簡単であり、材料も少ないためスーパーで購入する惣菜としてはあまり向いていない。一方で唐揚げやとんかつ、コロッケといった揚げ物類は食卓に並ぶ頻度は高いものの、調理工程や後片付けに手間がかかるため、家庭で作るには少々ハードルが上がってしまう。明治屋ではそういったインサイトも踏まえて、消費者が本当に欲しいものは何か?というのを常に分析している。

② 誰でも再現ができる「プロのレシピ」
前述の通り、トライアルの惣菜は各店のキッチンスペースで最終の仕上げまでが行われる。レシピ自体はプロの職人が開発したものだが店舗で調理する従業員が再現できなければならない。それも全国すべての店舗で、同じクオリティを保ち続ける必要がある。

明治屋での惣菜開発プロセスは大きく2段階に分かれており、まずは職人がレシピを考案し、社長や他社員の意見も取り入れつつ納得いく味や見た目のレベルに仕上げる。その上で各店舗で再現するためにはどのような改良が必要か?を調整していくのだ。
このプロセスは非常に重要視している。オペレーション最適化のための知見をもった人材を専門で迎え入れたり、メニューによっては調理機器を開発することもある。その代表格が惣菜部門人気No.1の「三元豚ロースかつ重」だ。

三元豚ロースかつ重

かつ重は豚かつを割り下や玉ねぎと煮込み、卵でとじるシンプルな料理だが、その分火加減や割り下の味付けなどで大きく仕上がりが変わってくる。トライアルでは職人ならではの絶妙なバランスを各店で再現するために、彼らの技術をデータ化し調理機器に組み込んだのだ。これまでは扱いやすいホットプレートでの調理だったが、火を通す時間や温度など細かな管理・調整をできる専用マシンが生まれたことで、プロが使う手鍋での 安定的な調理工程を実現できた。

調理工程はもちろん、「三元豚ロースかつ重」の割り下には枕崎産の鰹節から引いた一番出汁を使用しているほか、豚肉もやわらかさと弾力のバランスがとれた良質な肉を厳選している。また東と西で、地方に合わせ味つけを変えているのもこだわりだ。

工程を徹底的に効率化・均質化できたことで、「三元豚ロースかつ重」は税込み299円の価格が実現した。”家庭で楽しめるプロの味”は、これからもトライアルグループの大きな武器となる。