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「スマートショッピングカート 」開発秘話 #2―鍵は”誰もが使いやすいUI・UX”

導入
トライアルグループが掲げる“リテールDX“の実現にあたり、社内で最も力を入れているプロジェクトが「スマートショッピングカート」の開発・研究である。今回はトライアルグループのテクノロジー開発を一手に担うプロフェッショナル集団・株式会社Retail AIの経営陣に、その開発の軌跡や今後の展望を語ってもらう。

語り手
田中 晃弘 :RetailShift 代表取締役社長
増岡 学 :RetailShift 常務取締役

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「スマートショッピングカート」開発秘話 #1 ―セルフレジ機能が搭載されたお買い物カートとは

―前回はスマートショッピングカート(以下、SSC)がどんなものか、またUI・UXの考え方についてお話いただきました。その他、設計においてこだわっている点があれば教えてください。

増岡

「SSC導入において、ロスの低減についても非常にこだわっているポイントです。ここでいうロスとは、お客様のスキャン忘れや、システムの仕組みを悪用した万引きによる店舗側の損失を指します。SSCを含むセルフレジ機能付きカートシステムやセルフレジといった店舗スタッフの介在がより少ない形での会計方式を実現した場合、買い物客の利便性の飛躍的向上、店舗オペレーションの省力化等、お客様と小売業の双方にとって大きなメリットがあります。一方でこういった方式をとると先に挙げたようなロスが増加することが分かっています。このようなロスは高くない利益率で事業を運営する小売業にとっての損益インパクトが非常に大きく、看過できない問題です。SSCにおいても導入後、実際にロスの増加が確認されましたが、会計時のスキャン忘れチェックの強化等、店舗オペレーションを中心とした対策により一定の改善効果が確認できています。」

増岡

「ロス抑止については、より抑止率が高い形で、また店舗スタッフに負荷をかけない形で実現できるよう、SSCの改善において継続的に取り組んでいる課題の一つです。
具体的には、最新型ハードウェアにおいては買い物中のスキャン忘れをデバイス上でお客様に通知する機能を実装しています。スキャンされていない商品がカート内に入った際に、お客様にスキャン忘れをお知らせします。


実際にスキャン忘れをされる方の大半は「うっかり」スキャンを忘れてしまうことが多くありますので、一部のお客様からは好意的なフィードバックをいただいています。」

増岡

「このようなビッグデータとAIを使い、AIによるスキャンチェックの実行も開始しています。この取り組みは大手テック企業よりヘッドハンティングしたデータサイエンティストや、中国にて元々運営していた拠点の高い技術力を持つエンジニアに加え、店舗で働いた経験があるスタッフも企画チーム内に編成して進めています。現場における細かな業務課題とビッグデータの蓄積を掛け合わせた、弊社グループだからこそ実現できた組み合わせであるともいえます。つまりAI ×ビッグデータ×現場ノウハウが結集されたもの=AIによるロス低減機能、であるといえます。現状ではSSCを導入した場合のロスを増やさないことを意図していますが、近い将来は逆にSSCを導入したほうが従来の有人レジと比べてもロスが低くなるという状態を目指していきたいと考えています。」