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「スマートショッピングカート」開発秘話 #1―セルフレジ機能が搭載されたお買い物カートとは

トライアルグループが掲げる“リテールDX“の実現にあたり、社内で最も力を入れているプロジェクトが「スマートショッピングカート」の開発・研究だ。今回はトライアルグループのテクノロジー開発を一手に担うプロフェッショナル集団・株式会社Retail AIの経営陣に、その開発の軌跡や今後の展望を語ってもらう。
 
語り手
田中 晃弘 :RetailShift 代表取締役社長
増岡 学 :RetailShift 常務取締役

語り手

―改めて「スマートショッピングカート(以下、SSC)」について教えてください。
 

田中

「セルフレジ機能を備えた、Retail AIオリジナルのショッピングカートです。お買い物において「レジ待ち」の時間はお客様にとって最も大きなストレスの一つとなりますが、SSCを利用すればレジ待ちなしでスムーズに会計が終了するので、その点が非常に大きな支持を得ていると考えています。またSSCにはカートごとにタブレットが搭載されており、お買い物状況の確認に加え、店舗からお客様一人一人の購買・行動データに基づいたクーポンを配信するなどのコミュニケーションも可能です。店内でリアルタイムでのマーケティングコミュニケーションができるということで、大手メーカーを含めたマーケターの皆様からも大きな注目を集めています。SSCはお客様に新たなお買い物体験を提供するだけでなく、小売業やメーカーで取り入れられている従来のオペレーションに大きな変革をもたらす可能性を秘めたIoTデバイスです。」
 

―SSCの開発・改善を進める中で、特にこだわっているポイントは?

増岡

「UI・UXの向上に特に力を入れており、”お客様にも店舗スタッフにもとにかく使いやすく”という部分にこだわっています。

スマートショッピングカートの機能

お客様向けには、まずはタブレット画面のUIを非常にシンプルで使いやすい形にすることを意識しています。実際にSSCが導入されているお店に行けば驚かれることもあるのですが、かなりお歳を召したお客様がご自身でSSCを利用されていたり、休日に来店されるご家族の中には小さなお客様が率先してSSCを手にとっているのをよく目にします。」

増岡

「実際にSSCの利用データを見ても、50代以上のお客様の利用が半数以上を占めており、年齢を問わずお使いいただけているという結果が出ています。昨年リリースした最新のタブレットはSSC専用に設計し見やすさなどによりこだわりました。カート自体も従来機種に比べてより収納容量を増やしたり、商品スキャンのしやすささや軽くて取り回しがしやすい点にこだわるなど、お客様のUXに非常に重点をおいて開発を行っています。」

―たしかにとてもシンプルで使いやすいカートですよね。では、店舗スタッフ側にはどのような配慮を行っているのでしょうか?

増岡

「店舗観点での設計も非常に重要です。現場のスタッフに使いにくいシステムであったとすると、そもそも店舗側が導入をためらってしまいますので、利用台数の拡大や他店舗への導入などの広がりが難しくなっていきます。
 
SSCにおいては、グループ内の小売部門であるスーパーマーケット「トライアル」への本格導入からすでに4年が経過しました。現在100店舗以上でお使いいただいています。
その中で上がってきた様々な要望についてこまめに反映を行っており、例えばスタッフの方が会計チェックの際に使うシステムのボタンの位置など、細かい改善が重ねられています。改善に伴い機能を増やしすぎると逆に複雑なUIになってしまうこともあるので、必要な機能をシンプルな形で提供することを常に意識しています。
 
増岡「ハードウェア面においても店舗から見た場合の運用のし易さは非常に重要な観点です。例えばSSCは一定時間ごとに充電が必要になるのですが、導入当初、毎日の1台1台の充電作業は店舗スタッフにとって大きな負荷となっていました。
そのような状況を踏まえ、最新ハードウェアにおいては最大15台までの連結充電を可能とし、運用負荷を大幅に低減することに成功しています。
 
小売業がSSCを導入するにあたって期待することの一つは店舗オペレーションの省力化(人員・時間の削減)なので、このような運用負荷低減に関する分析・研究は日夜行っています。」