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しまじろうのわお!事件

 こんにちは。

 「しまじろう」でおなじみのこどもちゃれんじですが、お父さんの名前が「しまたろう」と知って、「じゃあ親子で太郎次郎?」と一瞬考えましたが、長男の「炭治郎」と同じか!?とひらめいた松下です。

 さて、今日は「しまじろうのわお!事件」(知財高判平成28年12月8日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントは、「しまじろうのわお!」で、ダンス曲(タイトル「バシッとキメたいそう」)として使用する楽曲の募集メールを複数の作曲家に送信して、コンペが行われました。
 その結果、ミネチャン(Mine-Chang)の楽曲が採用され、テレビCM用の音楽の作曲家である原告の楽曲は不採用になりました。

 その後、原告は「バシッと!キメたいそう」を見て「私が応募した作品とそっくりだ。著作権を侵害している!」と主張して、ミネチャンらを相手に2億2000万円の損害賠償を求めて訴えたのです。

争われた楽譜についてはこちら⇩

2 原告の主張

 旋律、テンポ、リズムが共通しており、実質的に私の曲と同一である。また私がミネチャンの曲に依拠することは不可能であるが、コンペの主催者なら私の曲に依拠して、ミネチャンと意思を通じて作曲することが可能であったはずだ。

3 ミネチャン側の主張

 原告の楽曲とは多くの部分で異なっています。また曲全体の長さが89秒で歌詞も指定されていたので、テンポやリズムは類似せざるを得ません。また、原告の楽曲の完成したこととダウンロード先を示した電子メールが主催者側に送信されたのは1月18日11時32分であり、私が同様の電子メールを送信したのは11時10分なので、原告の楽曲に依拠して作曲することは不可能です。

4 知的財産高等裁判所の判決

 楽曲についての複製、翻案の判断に当たっては、楽曲を構成する諸要素のうち、まずは旋律の同一性・類似性を中心に考慮し、必要に応じてリズム、テンポ等の他の要素の同一性・類似性をも総合的に考慮して判断すべきものといえるから、原告の楽曲とミネチャンの楽曲のテンポがほぼ同じであるからといって、直ちに両楽曲の同一性が根拠づけられるものではない。また両楽曲は、旋律において多くの相違も認められる。よって、原告の請求を棄却する。

5 コンペの応募作品で複製?

 楽曲の著作権侵害の判断については、①両楽曲が同一または類似していること(同一性・類似性)と②もとの作品に依拠していたこと(依拠性)が必要となっています。

 一般的に、コンペに応募した作品が、似たようなものになることが通常は考えられません。今回のケースは、募集した側で、当選曲の中に落選曲の良い所を取り入れて改変したことが問題となっていたと考えられます。

 不要な争いを避ける上でも、事前に応募作品について、権利の扱いについて確認しておく必要がありそうですね。

では、今日はこの辺で、また。


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