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反町夫妻ドーベルマン事件
こんにちは。
俳優の反町隆史さんと言えば、「ビーチボーイズ」、「GTO」を思い出すのですが、一番好きなのはNHK大河ドラマ「利家とまつ」の織田信長役「で、あるか」ですね。
さて今日は、反町隆史さん・松嶋菜々子さん夫妻の飼い犬カイザーをめぐって起きた事件(東京高判平成25年10月10日判例時報2205号50頁)について解説したいと思います。
1 どんな事件だったのか
反町夫妻は、渋谷区内で家賃月額175万円のマンションに住んでいました。マンションの規約では大型ペットを飼うことが禁止されていましたが、反町夫妻はカイザーと言う名前の大型犬ドーベルマンを飼っていました。
ある日、反町夫妻の娘さんがカイザーを散歩するためにマンションの共有スペースに出ると、突然、カイザーはアートディレクターの佐藤可士和夫妻とその子どもに向かって走り出しました。佐藤さんの妻は、とっさに子どもを守ろうと覆いかぶさると、カイザーは妻の太ももに噛みつき、全治11日のケガを負わせました。
反町夫妻は、佐藤夫妻に対して、動物占有者の責任を理由に治療費と慰謝料を合わせて約31万円を支払いました。
【民法718条】
① 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
② 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
しかし、事件でショックを受けた佐藤夫妻がそのマンションを引っ越すことになったため、マンション管理会社が「こんな事件さえなければ、契約期間分の賃料収入約5220万円を得られたはずだ」と主張して、不法行為を理由に反町夫妻に対して損害賠償を求めたのです。
2 マンション管理会社の主張
マンションの規約では大型犬を飼うこと自体が禁止されていた。これを破っただけでなく、危険犬種に指定される大型犬に犬用のくつわをつけずに事故を起こしたので、損害賠償責任を負うべきだ。とくに佐藤夫妻の契約期間は、まだ27カ月も残っていたのだ。佐藤夫妻が転居してから、その部屋について入居者の募集を続けているが、空室のままである。本来は得られたであろう、この期間の家賃等を反町夫妻は支払うべきだ。
3 反町夫妻の主張
私たちは、マンション管理会社に直接損害を加えていません。確かに佐藤夫妻に対しては過失がありましたが、マンション管理会社に対して過失があったわけではないからです。故意にマンション管理会社に損害を加えようと思っていたわけでもありません。つまり、犬が噛みついたことによる佐藤夫妻に発生する損害については予想できますが、その被害者がマンションの賃貸借契約を解除することまでは予想できたとは言えないと思いますので、私たちは、マンション管理会社に対して損害賠償責任は負わないはずです。
4 東京高等裁判所の判決
反町夫妻は、大型犬の飼育禁止の規定に違反して本件犬を室内で飼育した以上、犬がマンションの居住者その他の関係者の生命、身体、財産に危害を加えないように配慮すべき注意義務を負っていたというべきである。
マンション管理会社は、今回の事故により佐藤夫妻との間で賃貸借契約の合意解除に応じた上、解約違約金の支払債務を免除せざるを得ず、その後も賃料収入を得ることができなかったのであるから、反町夫妻に対して実際に喪失した賃料収入相当額を上限とし、今回の事故と相当因果関係が認められる範囲で賃料相当額の損害賠償を請求することができるというべきである。
よって、反町夫妻はマンション管理会社に約1725万円を支払え。
5 間接損害の賠償が認められるのか
民法709条の不法行為の問題においては、直接的な被害者が加害者に対して損害賠償を求めるのが一般的です。ところが、今回のケースでは、直接的な被害者ではない第三者が、間接的に被った損害について、加害者に対して請求できるのかどうかが争われたことで注目されました。裁判所は、適切に飼い犬を管理しなかった飼主に対して、家賃相当額という間接損害についても責任を課しています。ペットを飼う際には、十分に注意する必要があるでしょうね。
では、今日はこの辺で、また。
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