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こんにちは。

 ウーロン茶と言えば、スーパーで150円ぐらい払えば、2リットル分買えることもあるのですが、居酒屋で「何か飲む?」と聞かれて、「じゃあ、ウーロン茶」と注文する場合、なんと600円ぐらい取られることがあるのにビックリしますね。

 さて今日は、サントリーの黒烏龍茶と比較して自社の商品を宣伝したことで裁判に発展した「黒烏龍茶事件」(東京地判平成20年12月26日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 株式会社オールライフサービスは、「黒烏龍(ブラックウーロン)茶」などを販売していました。ところが、オールライフサービスはそのウェブサイト上で、サントリーの黒烏龍茶の画像を掲載して「1包のティーパックで2リットルのペットボトル1本を作ることができます。烏龍茶ポリフェノール含有量2070mg 約70倍 サントリーなんかまだうすい!」と表示していたことから、サントリーは商品名やパッケージデザインが自社のものと類似しているとして、約3919万円の損害賠償と製造販売の停止などを求めて提訴しました。

2 サントリーの主張

 オールライフは、そのウェブサイト上で、我々の商品の品質を誤認させ、虚偽の事実を告知する内容の比較広告を掲載し、その際に「サントリー(SUNTORY)」の登録商標を使用し、かつパッケージデザインを複製している。これは不正競争防止法2条1項14号に違反する。さらに、商標権と著作権も侵害しているので、比較広告の抹消、損害賠償及び謝罪広告を求める。

3 オールライフサービスらの主張

 我々の商品には「サントリー」という商標を付していないので、サントリーとの類似性はない。過去に比較広告をしていたが、現在は削除されています。その広告の業務を担当したのは入社して8ヵ月程度の従業員であり、成分に関する特別の知識のないまま表示しただけで、我々が意図的に消費者を欺き、サントリーの商品を中傷して不当な利益を得ようとしたわけではありません。また、比較広告においては、相手方商品ないし相手方商標をそのままの引用することが必要とされており、そのような引用が商標的な使用態様ではないからこそ、必要な引用が許されるのである。さらにパッケージデザインを構成する要素が、ウーロン茶を始めとする中国茶飲料業界において慣用されてきた要素の寄せ集めであり、何ら新規な創作性もなく、著作権法が保護する思想又は感情の表現と言えるものではないと思います。

4 東京地方裁判所の判決

 オールライフサービスによる各比較広告のウェブサイトへの掲載は、同じ烏龍茶の販売を行なっており、競争関係にあると認められるサントリーの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知、流布する行為であると認められる。比較広告を掲載する者は、比較広告を掲載するに当たり、内容が虚偽の事実に基づかないようにその真実性を十分調査すべき義務があることは当然であって、オールライフサービスにおいても、サントリーの商品と自己の商品を比較する内容の各比較広告をインターネット上に掲載するに当たり、虚偽の事実によって原告の営業上の信用を害することがないよう、広告の内容の真実性を十分調査してから掲載すべき注意義務を負っていたものと認められる。それにもかかわらず、その注意義務に反して、不正競争防止法2条1項14号に該当する各比較広告を掲載したのであるから、少なくとも、オールライフサービスは、同号違反についての過失を有するものと認めることができる。
 しかし、オールライフサービスによる各登録商標の使用は、比較の対象であるサントリーの商品を示し、その宣伝内容を説明するための記述的表示であって、自他商品の識別機能を果たす態様で使用されたものではないというべきであり、商標として使用されたものとは認められない。
 またデザインは、いわゆる応用美術の領域に属するものであって、かつ、純粋美術と同視し得るとまでは認められないから、その点において、著作物性を認めることができない。
 よって、オールライフサービスは、サントリーに対して約600万円を支払え。

5 営業誹謗行為

 今回のケースで裁判所は、サントリーの黒烏龍茶のペットボトル容器とオールライフサービスの商品のデザインが類似していることと、比較広告での虚偽の事実が告知されていたことを理由に、オールライフサービスに対して損害賠償を命じました。
 特に、自社の商品と他社の商品を比較する際には、内容について誤認を生じさせたり、虚偽の事実を告知したりしないように、十分に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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