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ヤミ金元本返済不要事件

こんにちは。

 利息が10日で5割の闇金ウシジマくんの話の中で、ウシジマ事務所に警察の捜査が入り、事務所崩壊の危機が訪れたというものがあります。

 契約自由の原則がありますが、お金の貸し借りの利息については、利息制限法や出資法の規制があります。さらにヤミ金をめぐる法律問題を考える上で、今日は「ヤミ金元本返済不要事件」(最判平成20年6月10日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 愛媛県で、指定暴力団が関係するヤミ金業者からお金を借りた人たちが、トイチ(10日で1割)、トサン(10日で3割)、トナナ(10日で7割)といった暴利により、借金の返済に困っていました。その後、ヤミ金業者のトップだった「ヤミ金の帝王」が出資法の疑いで逮捕されたことから、ヤミ金の被害者たち11人が「ヤミ金の帝王」らに対して、高金利で損害を被ったとして不法行為を理由に約3500万円の支払を求めました。

2 被害者の主張

 出資法で規定された利率をはるかに上回る利率の契約をさせられた上、これに基づいて利息を回収したり、強引にその支払を要求することは、不法行為であり、ヤミ金業者の統括者である「ヤミ金の帝王」も使用者責任を負うはずです。
 また、ヤミ金業者が暴利でお金を貸す行為自体が公序良俗に反する違法なものであり、不法原因給付でもあるので、ヤミ金業者は貸したお金の返還を求めることはできないはずだ。

3 ヤミ金の帝王側の主張

 不法原因給付というのであれば、お金の借主は元金を返済しているので、改めてその返済した元金の返還を求めることはできないはずだ。また消費貸借契約自体が公序良俗に反し、違法なものであったとしても、被害者が支払った元金については、損益相殺によって、損害額から控除されるべきだ。

4 最高裁判所の判決

 民法708条は、不法原因給付、すなわち、社会の倫理、道徳に反する醜悪な行為に係る給付については不当利得返還請求を許さないことを定め、これによって反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が、これによって損害を被るとともに、反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には、その利益については、加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく、被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも、民法708条の趣旨に反する。
 よって、被害者がヤミ金の帝王に支払った全額について損害賠償を認め、ヤミ金の帝王から被害者への貸付金額を損害額から控除することは許されない。

5 暴利については元本の返済も不要

 今回のケースで裁判所は、暴利での消費貸借契約にあたるヤミ金について、ヤミ金業者は貸付元本自体も返済を求めることができないとしました。この判決を受けて警察庁も、ヤミ金融事案の被害者対応マニュアルに、「『借りたものは返すべきだ、せめて元本くらいは返した方がよい』などの対応はしてはいけない」という記述を書き加えています。また、出資法5条には貸金業者が年20%を超える利息の貸金契約をしたときは、5年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金に処すると規定されています。
 暴利行為について裁判所も厳しい姿勢で臨むことが明示されていますが、そもそもヤミ金に手を出さないことが重要でしょう。

では、今日はこの辺で、また。


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