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 こんにちは。

 少年時代に、THE BOOMというバンドが好きだったのですが、バンド名の由来が「常に流行に左右されず自分たちの音楽を貫いていけるように」という逆説的な意味だったことを最近知って驚いた松下です。

 さて今日は、そのTHE BOOM事件(東京地判平成19年1月19日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 THE BOOMは、その所属する株式会社ムーブメント(音楽事務所)から原盤製作費を出してもらってCDの音源を製作しました。その後、ムーブメントはCDアルバムの原盤に関して、株式会社ソニーミュージックレコーズとの間で、この原盤に関する一切の権利をソニーミュージックレコーズに譲渡するという内容の契約(共同制作原盤譲渡契約)を締結しました。

 その後、平成9年の著作権法改正で、著作隣接権としてレコード製作者の送信可能化権が新設されたことにより、ソニーミュージックレコーズはインターネットを通じた音声配信や携帯電話(i-mode)向けの音楽配信を開始しました。

<著作権法96条の2>
レコード製作者は、そのレコードを送信可能化する権利を専有する。

 ソニーミュージックレコーズは、CDの印税と同様の計算方法で、音源配信の印税約143万円をムーブメント側に支払いました(販売価格の20%)。ところが、この金額に不満をもったムーブメントが、ソニーミュージックレコーズを相手に裁判を起こしたのです。

2 ムーブメント側の主張

 平成9年の著作権法改正により、送信可能化権が新設された。すると、法律改正以前に締結された共同制作原盤譲渡契約には、送信可能化権が含まれていないはずだ。よって、存在していなかった送信可能化権がソニーミュージックレコーズ側に譲渡されることはなく、その権利はムーブメントにあるはずだ。

3 ソニーミュージックレコーズ側の主張

 平成9年の著作権法改正により、有線送信権を従前の有線放送権に戻すとともに、その代替として、送信可能化権が創設された。そうすると、有線送信権の中に送信可能化権が含まれていたと考えられるので、契約締結時にすでに送信可能化権が存在していたと考えられる。

4 判決内容

 これらをうけて、東京地方裁判所の裁判長は、「共同制作原盤譲渡契約の当事者意思解釈、文理解釈、業界慣行などを勘案の上、契約締結当時はまだ法定化されていなかった送信可能化権も含めて本件各契約によって原盤に関する音楽事務所の有する一切の権利が何らの制約もなくレコード製作会社に譲渡されている」と判断しました。

5 音楽配信の時代に

 日本レコード協会によると、2020年の音楽配信の売上高は783億円、CDなどの音楽ソフトの売り上げは1944億円となっています。世界では音楽配信が全体の5割を超えているようなので、今後は日本でも音楽配信の割合が増えていくでしょう。

 送信可能化権に関しては、当事者間で納得のいく形で印税の支払いについて取り決めをしておく必要がありそうですね。

THE BOOMは解散しましたが

「日本一幸せなロックバンドでした」という言葉が今でも心に残っています。

では、今日はこの辺で。また。


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