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オービスの手前に速度警告板があるのはなぜか?

こんにちは。

 高速道路を走っているとオービスの手前で「速度取締機設置路線」という看板を見かけます。スピード違反を取り締まりたいのなら、こっそりと測定すればよいものを、わざわざ知らせてくれるのはなぜなのでしょうか。

 東京簡易裁判所は昭和55年1月14日の判決(判例時報955号21頁)で、警告板を置くことについて次のように説明しています。

 警告板は、運転者に対して捜査機関からの警告にとどまるものなので、必要不可欠なものではない。しかし、オービスによる速度違反取締りが自動車運転者の速度違反の抑止効果を最大の目的としている以上、おとり捜査と類似であるとの非難を回避するためにも、走行中の運転者から一目瞭然なものにすることは捜査機関に課せられた責務である。

 つまり、おとり捜査ではありませんよとの非難をかわすために警告板の設置が必要とのことでした。この警告板が設置されているにもかかわらず、スピード違反でオービスに撮影された人が、国家に対してプライバシー侵害だと主張して争った事件がありました。

1 最判昭和61年2月14日(刑集40巻1号48頁)

【事件の概要】

 深夜に車を運転していた被告人Yは、最高速度が時速60kmと指定されている道路を時速123kmで走行していたので、助手席の女性とともにオービス(自動速度取締機)によって写真撮影されました。後日、Xは検察官により起訴され、刑事責任を問われることなりました。

2 被告人Yの主張

 被告人Yは、自分の承諾なしに自身と同乗者の容ぼうを撮影することは憲法13条の肖像権、プライバシー権を侵害しているので、その写真を有罪認定の証拠とすることはできないと主張しました。

3 判旨

 速度違反車両の自動撮影を行う自動車速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、現に罪が行われている場合になされ、犯罪の性質、態様からいって緊急に証拠保全をする必要性があり、その方法も一般的に許容される限度を超えない相当なものであるから、憲法13条に違反せず、また、写真撮影の際に、運転者の近くにいるため除外できない状況にある同乗者の容ぼうを撮影することになっても、憲法13条に違反しない。

 つまり最高裁は、オービスによる写真撮影は、肖像権やプライバシー権を侵害しないと判断したのでした。

4 移動式オービスには警告板がない?

 移動式オービスでは、事前の警告の看板を設置していない場合があります。警告板はあくまで注意喚起のために設置するもので、設置義務はないという解釈なのでしょう。

日頃からスピードの出し過ぎを控えることが大事なのでしょう。

では、今日はこの辺で。また。


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