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ブブカスペシャル事件

こんにちは。

 モーニング娘。がなぜあんなにも人気があったのかと調べてみると、オリジナルメンバーがオーディション合格者ではなく、落選組5人を集めてCDを5日間で5万枚の手売りするミッションを課されたというストーリー性と、フォーメーションダンスが当時では衝撃的だったと知って納得しましたね。

 さて今日は、モーニング娘。などのアイドルが裁判の原告となった「ブブカスペシャル事件」(東京高判平成18年4月26日判例タイムズ1214号91頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 株式会社コアマガジンが発行している「ブブカスペシャル7」という、いわゆるお宝写真投稿雑誌に、「モーニング娘。や佐藤江梨子、藤原紀香、深田恭子、優香などの顔写真が掲載されていました。そのため、芸能人たちが出版社に対して、プライバシー権やパブリシティ権の侵害を理由に、損害賠償を求めて提訴しました。

2 芸能人らの主張

 私らが芸能人になる前の写真や通学中の写真、実家の所在地の写真が勝手に雑誌に掲載されていて、これは私たちにとって公開されたくないものなので、明らかにプライバシー権の侵害です。また、雑誌に掲載された写真によって、私たちのパブリシティの価値が、無断で商業的に利用されていて、これはパブリシティ権の侵害にあたるはずです。

3 コアマガジンの主張

 公共の場所で撮影する行為は、肖像権侵害にあたらず、あくまで表現の自由の範囲内なので、違法性はない。また、「著名人の法理」、すなわち公衆に自己を曝す職業を選択した者は、プライバシー権を一部放棄したという法理が提唱されている。さらに、パブリシティ権は、俳優の肖像を広告や商品に使用した事例で認められたことがあるが、芸能人に関して出版された書籍や雑誌に関してパブリシティ権が認められたことはない。

4 東京高等裁判所の判決

 コアマガジンが女性芸能人の写真及び記述を雑誌に掲載し、それを出版、販売した行為は、彼女らのプライバシー権の侵害に該当する。芸能人は、その芸能の卓越し、秀でることを目指し、その芸能を高めることを追求しようとする職業人であって、日常的な稽古、練習、レッスン等によりその芸能を磨き、磨いた芸能を観客、聴衆、視聴者などに披露し、その拍手喝采あるいは逆の不評、不人気を受けていずれの評価をもこれを糧として更なる披露の機会を目指す者であり、その固有の名声、社会的評価、知名度等が世の中に知れ渡る著名な芸能人になるためには、天賦の才能等に加え、相当の精神的、肉体的な修練とその修練を積み重ねるにつき必要不可欠な出費に耐える労苦とを要することが明らかであり、芸能人がそのような著名な芸能人として知れ渡った暁には、その芸能人がその固有の名声、社会的評価、知名度等を表現する機能がある肖像等が具有する顧客吸引力に係る経済的価値を独占的に享受することは、その芸能人が努力した修練、労苦等のもたらす当然の帰結であるからである。
 ところが、芸能人の顧客吸引力を利用することに伴う多大な経済的効果に眼を奪われて芸能人の肖像等を無断で利用する者が現れるのであって、このような無断の商業的利用の場合においては、芸能人の固有の名声、社会的評価、知名度等を意識的無意識的に歪曲ないし軽視し、これを損わせ、汚すこととなり、ファンなどが離れ、芸能人の肖像等のイメージが悪くなり、これが飽きられるなどの不人気の弊害すら招きかねないのである。今回の芸能人らの写真の雑誌への掲載は、芸能人のパブリシティ権を侵害するものと認められる。
 よって、コアマガジンは芸能人らに合計848万円を支払え。

5 無名時代の写真とパブリシティ権

 今回のケースで裁判所は、芸能人の写真や実家の所在地などの写真をお宝写真投稿雑誌に掲載する行為が、肖像権やプライバシー権、パブリシティ権の侵害に当たるとして、出版社に損害賠償の支払いを命じました。
 ただし、著名になった後の写真ではなく、芸能人となる前の肖像についてもパブリシティ権が成立することについては、議論の余地がありそうですね。
 では、今日はこの辺で、また。


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