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ソニー燃ゆ事件

こんにちは。

 ソニーと聞くと、ウォークマンやプレイステーションを思い浮かべる人が多いと思いますが、PSXやPSPgoの大失敗を乗り越えて今に至っていることは意外と知られていませんね。

 さて今日は、ソニーの創業者について記述した記事の著作権が問題となった「ソニー燃ゆ事件」(東京高判平成14年9月19日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 城島明彦氏は、ソニーの創業者の井深氏の葬儀に参列し、その様子を夕刊フジの連載記事「デジタル・ドリーム・キッズ ソニー燃ゆ」の第65回「天才を送った日」に執筆し、後日「ソニー燃ゆ」という著書を発行していました。ところが、講談社から出版された立石泰則作『ソニーの「出井」革命』が、城島氏の著作権を侵害しているとして、その販売の差止めと損害賠償を求めて提訴しました。

2 城島明彦氏の主張

 立石泰則氏の著書には、私の書いた記事と完全に同一の部分があり、私の記事を複製、盗用したものであることは明らかである。立石氏の書籍の発行部数が2万部であり、純利益から計算して損害賠償は約11万円と推定でき、さらに慰謝料などを合わせて約231万円を払ってもらいたい。

3 立石泰則氏の主張

 私は、城島氏の記事に接する機会はなく、ソニーの全面的な協力の下に独自に取材をして記述しました。城島氏の記事も、私の著書もノンフィクションの分野に属するものである以上、事実の記述については共通にならざるを得ないと思います。

4 東京高等裁判所の判決

 城島氏の著作物と立石氏の書籍について、各記述部分の対比においても、表現上の創作性のある部分において同一性があるものとは認めることはできず、表現上の創作性の認められない部分において同一性を有するにすぎないのであって、立石氏の書籍の表現から城島氏の著作物の内容及び形式を覚知することはできない。そして、城島氏の種々主張するところを考慮しても、この認定を覆すに足りない。 よって、依拠性の点について判断するまでもなく、また、立石氏の書籍の表現のうち、城島氏の著作物にない記述について、創作性がないか否かについて判断するまでもなく、複製権侵害をいう城島氏の主張は、採用することができない。
 よって、城島氏の控訴を棄却する。

5 慣用的表現

 今回のケースで裁判所は、ソニーの創業者の葬式などに関する類似の記述について、いかなる者が記述しても同様な表現にならざるを得ないような慣用的表現やありふれた表現に関しては創作性がないとして、著作権侵害はないとしました。
 自身の書籍で著作権侵害の訴えを起こされないようにするためには、しっかりとした引用などをしておくことも重要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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