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こんにちは。

 20年程前に、マジックコンピュータと呼ばれる日本のゲームソフトを違法にダウンロードできる機器がアジアで販売されていました。特に、バイオハザード3が正式に発売される前に、香港でコピー商品が出回っていたなど、深刻な問題だったようです。

 そこで今日は、ゲーム業界を震撼させていたマジコンの流通を阻止しようとゲームメーカーが提起した「マジコン事件」(東京地判平成21年2月27日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 マジックコンピュータ、略してマジコンは、テレビゲームのゲームソフトをコピーしたり、そのコピーをゲーム機で起動させることができる機器で、ゲームメーカーは開発費を投じて製作したゲームプログラムを簡単にコピーされることに悩まされていました。そこでニンテンドーDSなどを製造、販売する任天堂は、Revolution for DS、通称マジックコンピュータを輸入して販売している複数の業者に対して、マジックコンピュータの輸入、販売の差止めと、在庫品の廃棄を求めて提訴しました。

2 任天堂側の主張

 不正競争防止法2条1項10号は、デジタル・コンテンツの法的保護を図るために、技術的制限手段の効果を妨げることによりプログラムの実行等を可能とする機能のみを有する装置の販売等を不正競争行為として制限している。
 マジコンの大部分は、インターネット上のサイトにアップロードされている吸い出しプログラムをダウンロードしてDS本体で実行するために使用されている。そうすると、技術的制限手段により制限されているプログラムの実行を可能とする機能しか有していないことになるので、不正競争行為であることは明らかだ。また、吸い出しプログラムがインターネット上のサイトにアップロードされ、累計1億回以上ダウンロードされているので、その逸失利益は天文学的数字に上っている。

3 マジコン輸入販売業者の主張

 我々は、自主製作ソフトを使用する目的で、DSカードを販売しているのであって、新作ゲームソフトの吸い出しプログラムを実行可能にするために販売しているのではない。つまり、CDで例えるなら、違法なCDを売っている奴が悪いのであって、CDプレーヤーを売っている奴は悪くないのではないでしょうか。

4 東京地方裁判所の判決

 数多くのインターネット上のサイトに極めて多数の吸い出しプログラムがアップロードされており、だれでも容易にダウンロードすることができること、マジコンの大部分が、そして大部分の場合に、吸い出しプログラムを使用するために用いられていることが認められ、マジコンが専ら自主制作ソフト等の実行を機能とするが、偶然「妨げる機能」を有しているにすぎないと認めることは到底できないものである。任天堂は、DSカードの製造販売業者として、本来販売できたはずのDSカードが販売できなくなり、現実に営業上の利益を侵害されているものと認められる。
 よって、マジコン輸入販売業者は、マジコンの輸入販売をしてはならず、在庫品を廃棄せよ。

5 平成23年の不正競争防止法改正

 今回のケースで裁判所は、不正競争防止法違反を理由にマジコンの輸入販売業者に対して、マジコンを輸入販売することを禁止し、在庫の廃棄を命じました。

 その後に、違法なマジコン販売に対して刑事罰を盛り込んだ改正不正競争防止法により、任天堂Wiiの改造を代行していた者が福岡県警察本部生活経済課サイバー犯罪対策室に摘発されたり、インターネットでマジコンを販売していた者が愛知県警察サイバー犯罪対策課に摘発されたり、大阪ではマジコンの店頭販売業者が摘発されたりしました。マジコン以外の不正な機器を扱わないように、十分に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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