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統一教会違法勧誘事件

こんにちは。

 学生時代に、赤いシャツに黄色いパンツというドナルドスタイルで他大学の校内をうろついていると、インカレサークルを装った宗教の勧誘を受けまくっていたのですが、自分の大学に帰ると全くと言っていいほど勧誘を受けなかったということは、ゴールデンぼっちとしてオーラが出過ぎで、誰も寄せ付けなかったのではないかと思っていますね。

 さて今日は、宗教の勧誘が違法かどうかが争われた「統一教会違法勧誘事件」(新潟地判平成14年10月28日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 統一教会の元信者らは、統一教会からいわゆるマインドコントロールなどの違法な勧誘により、統一教会に入会させられ、その後長期間にわたって違法な献金勧誘システムにより献金を強要されたり、違法な商品販売活動に従事させられるなど過酷な生活をさせられたことから、青春を奪われたこと、信教の自由を侵害されこと、献金や合同結婚式への参加を強要されて財産権及び婚姻の自由を侵害されたことについて、不法行為を理由に約7000万円の損害賠償を求めて提訴しました。

2 元信者らの主張

 私は、昭和55年に専門学校に進学し、学校の近くにアパートを借りて生活していると、統一教会の信者からアンケートを求められ、その後も教会に来るように執拗に勧誘され、仕方なく入教し献身させられました。統一教会の教義内容は現実世界をサタンの支配する世界として敵視するなど、それまでの価値観とは全く乖離し対立するものであり、かつそれを絶対的世界観とするものでした。また、生活面でも統一教会の指示に無条件で従うことを義務づけられてこれに従い、以前の住居を出てホームでの集団生活に入り、24時間統一教会の指示に従い、極めて過酷な経済活動や伝道活動に奔走する生活を送っていました。家族との関係も断ち、男女関係や知人・友人との交流も厳しく制限されていました。このことによって、貴重な青春期を統一教会の利益のために不毛に消費され、人生の歯車を狂わされるという重大な結果が生じました。また、統一教会の一方的な指示により、会ったこともなく、意思疎通すらできない外国人の異性、あるいは好きにもなれない異性との合同結婚式に参加させられていました。これについては、優越的地位の濫用として独立した不法行為が成立するので、その損害額は合計約7000万円です。

3 統一協会側の主張

 我々と信者組織である「全国しあわせサークル連絡協議会」ないし信徒会とは、法律上別個の法主体であり、活動も別々である。我々は、いわゆる霊感商法と呼ばれる壺などの販売行為はもとより、献金勧誘行為や借入金名目による資金借受などの行為を一切行っていません。
 ビデオセンターでは、ビデオを学んでその内容に共鳴した人に統一運動に参加してもらうことを目的としており、勧誘方法は宗教団体一般が採用するものにすぎないので、何ら違法性はない。

4 新潟地方裁判所の判決

 統一教会の献身者は、伝道活動や経済活動に当たり、アベルと称する信仰上の上司から過酷なノルマを常に課され、ほとんど無償に近い報酬で統一教会の教義とは直接関係がない珍味販売等の商品販売活動に奔走させられたり、マニュアルに従って姓名判断や家系図に基づく因縁話をして印鑑、壺、多宝塔等を販売するよう指示されていた。そして、伝道の対象者からは、実践メンバーとしてやっていけない者、身体の不自由な者や病人、時間のない者を排除するよう指導されていた。そうすると、元信者らに対する統一教会の伝道活動は、統一教会の教義を広めることを目的としたものではあるが、結局は、勧誘された者を統一教会の教義から離脱することを困難にしつつ、信仰が深まった者に、献身という名の統一教会の実践活動家になるよう勧誘し、献身後は献金及び無償での物品販売活動等の経済活動を文字どおり献身的に行わせ、さらには、献身者による伝道活動によってそのような経済活動及び伝道活動をする献身者を拡大再生産し、経済的利益を上げるという宗教の本来の目的から大きく逸脱した極めて不当な目的を持つものであるといわざるを得ない。そして、この不当な目的による被告の勧誘・教化によって、元信者らは献身者として、相当長期間にわたって、 はなはだ過酷な無償労働に専従させられ、婚姻の実態はなく、婚姻の届出の手続もとってはいないものの、自らの意思で選択した者ではない相手との結婚式を挙げさせられ、両親ら家族との接触も断つという重大な結果が生じているということができる。
 以上によれば、元信者らに対する統一教会による勧誘・教化行為は、極めて不当な目的に基づく著しく社会的相当性を逸脱した方法であり、結果として元信者らの自由意思を阻害したものといわざるを得ず、元信者らの信教の自由や婚姻の自由を侵害する違法な行為というべきである。また、献金や印鑑等の購入についても、個別的に見れば、いわゆる因縁トークといわれるものが行われていないものもあるが、いずれの献金等や購入についても、統一教会による違法な勧誘・教化行為が大前提となっているのであるから、統一教会が当該違法行為によって、元信者らの財産権を侵害したと評価することができる。
 よって、統一教会は元信者に対して約1537万円を支払え。

5 最高裁でも違法認定

 今回のケースで裁判所は、統一教会による勧誘行為が違法なものであるとして元信者等への損害賠償を認めましたが、これ以外にも合同結婚式への参加を強要された元信者らが損害賠償を求めた「青春を返せ事件」(最決平成13年2月9日)でも、最高裁は「婚姻の自由を侵害し違法」と指摘し損害賠償を命じています。
 大学のキャンパス内でも、宗教の勧誘であることを隠して、アンケートの実施やイベントサークルの案内目的で近づいてきて、危険な団体に勧誘される事例が数多くありますので、きっぱりと強い意志で断る、誰かに相談する、しつこい勧誘の場合には警察に連絡するなどの対処が必要でしょう。

では、今日はこの辺で、また。


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