総合格闘技UFC動画アップロード事件
こんにちは。
UFC(Ultimate Fighting Championship)は、世界最高峰のアメリカの総合格闘技団体です。吉田秀彦さんを含む12名の日本人ファイターをマットに沈めたヴァンダレイ・シウバがランページ・ジャクソンに負けた試合が衝撃的でしたね。
歴史をさかのぼると、古代ローマ時代でも、人は格闘技に熱狂してきたという事実もありますね。
「格闘技を見たい!」という気持ちはよくわかるのですが、過去にUFCの試合を動画サイトにアップロードしたことが問題となった「UFC動画アップロード事件」(東京地判平成25年5月17日判例タイムズ1395号319頁)があります。この著作権法違反の驚くべき結末について考えてみたいと思います。
1 どのような事件だったのか
UFCの大会で行われた試合の様子を撮影・編集した映像作品が、ウェブサイト「ニコニコ動画」に84回にわたってアップロードされていました。そこで、著作権者のズッファLLCは、公衆送信権が侵害されたとして、不法行為を理由に1000万円の支払を求めました。
2 ズッファLLCの主張
複数のカメラで撮影した映像をつなぎ、試合に関する情報を写真やテロップで追加し、さらに音声で解説を加えたことで、思想または感情を創作的に表現したものとなっており、作品は著作物にあたるはずだ。被告は、この映像が我々の著作物であることを知りながら、故意にニコニコ動画にアップロードすることで著作権侵害を行っていることは明らかである。
我々は、TVバンク株式会社との間で、UFCの映像作品をインターネット配信する権利を許諾する契約を締結し、TVバンクが配信することで収入の60%が我々に支払われることになっており、その損害額は作品の販売価格×60%×再生回数によって算定され、少なくとも1000万円を下らない。
3 被告の主張
UFCの映像作品を視聴する層のうち、有料で視聴する層は限定されている。また、ニコニコ動画においては、動画を開くと同時に再生回数が1回とカウントされるため、動画を視聴していないにもかかわらず再生回数としてカウントされることがあり得る。従って、再生数に販売価格を掛けることにより損害額を算出するのは相当ではない。
4 東京地方裁判所の判決
被告が「ニコニコ動画」の運営のために設置管理されているサーバーコンピュータ内の記録媒体にこれらの動画データを記録・保存し、インターネットを利用する不特定多数の者に対し自動公衆送信し得るようにしたことは、これらの作品を送信可能化するものであり、ズッファLLCの公衆送信権を侵害するものにあたる。UFCの試合映像は、試合種別に応じて500円、350円又は200円でインターネット配信されており、その作品が再生される毎に、許諾料相当額の損害が生じたものと認められるので、1000万円を損害とみるのが相当である。
5 著作権侵害と刑事罰
今回のケースで裁判所は、被告がプロバイダから発信者情報開示請求書の写しの送付を受けていながら、新たなアカウントを用いるなどして、その後1年以上にわたって違法にアップロードし続けたという事情もあったことなどから、動画作品を動画サイトにアップロードする行為について、1000万円という多額の損害賠償を認めました。
また違法アップロードは刑事罰の対象にもなりますが、さらに違法ダウンロード、つまり違法にアップロードされている著作物であることを知りながら、継続的にまたは反復してダウンロードをした場合には2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処せられますので、十分に注意しましょう。
【著作権法119条3項】
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者
二 第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、著作物であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているものの著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製を、自ら有償著作物特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者
では、今日はこの辺で、また。
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